メンバーシップ型雇用とは|メリット・デメリットとジョブ型との違いを解説

2022.10.21
d’s JOURNAL編集部
メンバーシップ型雇用とは
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用のメリット
メンバーシップ型雇用のデメリット
時代の変化によるメンバーシップ型の評価
メンバーシップ型雇用の課題
日本でジョブ型雇用が導入されてこなかった理由
メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用にするべきか
まとめ

終身雇用を前提とし、業務内容や勤務地などを限定せずに雇用契約を結ぶ「メンバーシップ型雇用」。

「ジョブ型雇用とは、どのように違うのか」「メンバーシップ型雇用には、どういったメリット・デメリットがあるのか」といったことを知りたい人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。

この記事では、メンバーシップ型雇用について、ジョブ型雇用との違いやメリット・デメリット、時代の変化によるメンバーシップ型雇用の評価などについて、ご紹介します。

メンバーシップ型雇用とは

「メンバーシップ型雇用」とは、職務や勤務地などを限定せずに雇用契約を結ぶ雇用システムのこと。総合職として雇用し、転勤や異動、ジョブローテーションを繰り返しながら、長期的に人材を育成するのが特徴です。人間性やポテンシャルを重視する新卒一括採用を行う企業では、メンバーシップ型雇用が一般的とされています。

メンバーシップ型雇用は、正社員として採用した従業員を定年まで雇用し続ける「終身雇用」や、年齢・勤続年数に応じて、役職・賃金を上げる「年功序列」を前提とした制度です。日本独特のシステムであり、多くの日本企業が採用していることから、「日本型雇用」とも呼ばれます。

欧米諸国で一般的な「ジョブ型雇用」とは相対する雇用形態とも言えるでしょう。また、「仕事に人を合わせる」のではなく、「人に仕事を合わせる」働き方であることも、メンバーシップ型雇用の特徴の一つです。

(参考:『終身雇用は崩壊?実は約半数の企業が終身雇用。その是非と次の時代への打ち手とは』『年功序列とは?1分でサクッとわかる、制度の仕組みとメリット・デメリット』)

メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の違い

「ジョブ型雇用」とは、特定の職務内容に対して、その仕事の遂行能力を持つ人材を雇用する制度のこと。欧米で広く取り入れられている雇用システムですが、メンバーシップ型雇用とはどのような違いがあるのでしょうか。2つの雇用システムの違いを表にまとめました。

メンバーシップ型雇用 ジョブ型雇用
特徴 人に合わせて職務(ポジション)を当てはめる 職務に合わせて雇用
職務やスキルの幅 総合的 限定的・専門的
求められる人材像 幅広く業務を担うことができるゼネラリスト 高い専門性を持つスペシャリスト
転勤の有無 あり なし
ジョブローテーション あり なし
報酬 年齢や継続年数に依存 スキルや成果に依存
採用 新卒一括採用が一般的 中途採用が一般的
育成 会社による育成 自己研さん

(参考:『ジョブ型雇用とは|制度のメリット・デメリットや導入事例を解説』)

メンバーシップ型雇用は「人に合わせて仕事を当てはめる」制度であるため、就職後に配置転換や勤務地の変更、昇給など、勤務環境が大きく変わる可能性があるのが特徴です。高い専門性を持つスペシャリストを雇用するジョブ型雇用と異なり、幅広く業務を担えるゼネラリストが求められます。

メンバーシップ型雇用のメリット

日本企業の多くが採用し、日本の経済成長を長く支えてきたメンバーシップ型雇用には、どのようなメリットがあるのでしょうか。メンバーシップ型雇用のメリットを以下の3点にまとめました。

帰属意識のある人材を育成できる

帰属意識とは、「会社の一員である」という意識のこと。メンバーシップ型雇用では、長期にわたり人材を育成できるため、従業員は帰属意識を持ちやすくなります。従業員の帰属意識が高まれば、「この会社で働き続けたい」と考える従業員が増え、離職率の低下・定着率の向上につながるでしょう。

また、従業員同士の関係性も時間をかけて構築されるため、チームワークがよくなります。互いに助け合いながら業務に取り組めるようになることで、業務効率化や生産性向上も期待できるでしょう。

(参考:『帰属意識、自社は低い?高い?すぐ実践できる「帰属意識を高める15の施策」-計測シート付-』)

転勤や部署移動など配置転換ができる

メンバーシップ型雇用には、従業員を長期雇用する代わりに、会社の経営方針や育成の観点から、従業員の部署や勤務地を異動させることができます。また、特定の業務に対して人材を採用しているわけではないため、欠員が出た部署・地域に対しても、従業員を速やかに異動することが可能です。

この他、終身雇用を前提に採用しているため、さまざまな業務経験を通じて、各方面に精通したバランスのよいゼネラリスト人材を育成できる点もメリットとして挙げられるでしょう。

なお、メンバーシップ型雇用は、ジョブ型雇用のように業務がなくなると同時に雇用契約が終了になることがないため、会社都合で解雇される可能性が低いことから、従業員にとってもメリットのあるシステムと言えます。

新卒採用で採用コストを抑えられる

メンバーシップ型雇用は、春に学生を一括採用する新卒一括採用が基本となるため、短期集中で採用コストを抑えられる点がメリットです。卒業を控えた学生を中心に母集団を形成することで、コストを抑えながら若くて優秀な人材を効率的に確保できます。

最近では、新卒だけでなく留学生や海外大学生など、多様な人材を対象にアプローチができる「通年採用」を導入する企業も増えてきていますが、採用コストや育成コストは高くなりやすい傾向にあります。

こうした背景もあり、学生の新卒採用に関しては依然として、通年採用ではなく、新卒一括採用によるメンバーシップ型雇用が主流です。
(参考:『通年採用は2022年卒より本格化?経団連の動きと企業がとるべき対応とは?』)

メンバーシップ型雇用のデメリット

メンバーシップ型雇用には、メリットがある一方で、注意したいデメリットもあります。メンバーシップ型雇用の主なデメリットを、3つご紹介します。

専門職の人材が不足してしまう

メンバーシップ型雇用の場合、ゼネラリスト人材を育成するために定期的に配置転換を行い、従業員にさまざまな分野の業務を担当してもらいます。一方で、特定の業務を長期間行うことが少なく、専門的な知識や技術を身に付けることが困難であるため、「専門職の人材が不足してしまう」というデメリットがあります。

また、従業員はさまざまな業務を経験する必要があるため、自分の得意な業務のみに集中することができません。その結果、生産性の低下につながる可能性もあるでしょう。

海外人材の採用が難しい

海外ではジョブ型雇用が一般的なため、メンバーシップ型雇用での人事評価や業務を受け入れられない人も多いと言われています。そのため、外国人や外国に留学している日本人学生といったグローバル人材を確保したい企業にとって、メンバーシップ型雇用の採用は、グローバル人材を獲得する上でのディスアドバンテージとなります。

また、海外の卒業シーズンは日本と異なるという点からも、新卒一括採用を基本とするメンバーシップ型雇用は、優秀なグローバル人材の採用機会を逃す可能性がある雇用システムと言えるでしょう。

年功序列により人件費がかさむ

人件費がかさむことも、メンバーシップ型雇用のデメリットの一つです。メンバーシップ型雇用の場合、年功序列制度を前提としているため、定期的に人材を採用し、勤続年数の長い従業員が増えれば増えるほど、人件費が上昇し企業の負担となってしまいます。

また、終身雇用制を前提としているため、経営が一時的に悪化したとしても簡単に従業員を解雇できません。企業にとって人件費の負担が大きく感じられるようになる可能性があることも、理解しておきましょう。

時代の変化によるメンバーシップ型の評価

戦後の日本において、経済を立て直して高度成長を支えるためには、長期的な労働力を大量に確保する必要がありました。一括で大量の人材を採用し長期的に育成するメンバーシップ型雇用は、高度成長期の日本にマッチしていた雇用システムだったと言えるでしょう。しかし、グローバル化の推進や働き方改革によるテレワークの普及といった時代の変化により、メンバーシップ型雇用の運用に、困難さを感じる企業も多いようです。

近年では、ジョブ型雇用の広がりにより、従業員に求められる仕事の専門性が高まり、一人一人の業務範囲はより限定的になっていくと考えられています。また、日本の生産年齢人口が減少の一途をたどっている状況を踏まえると、メンバーシップ型雇用での新卒一括採用は、人材を効率よく確保できる採用方法とはい言えず、企業としての生産性向上も難しいと考えられます。

こうした時代の変化により、メンバーシップ型雇用は現代の日本にマッチしない雇用システムになりつつあるとも言われています。

メンバーシップ型雇用の課題

先述した通り、現代の日本ではメンバーシップ型雇用を継続して運用することが困難となっています。メンバーシップ型雇用の抱える課題について具体的に解説します。

高度な専門性を有する人材の獲得

昨今、技術革新の進展により、高度な専門技術を持つITエンジニアやデータサイエンティストなどの専門職が不足しています。一方で、高い専門スキル持つ人材の多くは、そのスキルに見合うだけの報酬を得たいと考えています。

メンバーシップ型雇用の場合、報酬は年齢や勤続年数の影響が大きいため、必ずしも業務内容に見合うだけの報酬が支払われるわけではありません。そのため、高い専門スキルを持つ人材は、メンバーシップ型雇用を報酬と業務内容が見合っていないものとして捉え、メンバーシップ型の企業を転職先の候補から除外しがちです。

人材不足が叫ばれる高度専門人材を獲得するためには、メンバーシップ型雇用では対応しきれないのが現状と言えるでしょう。

総額人件費のコントロール

メンバーシップ型雇用では終身雇用や年功序列を前提としているため、仕事の成果や生産性に関係なく、年齢を重ねるごとに賃金が上昇していきます。そのため、入社して数年の若手社員の場合、いくら優れた成果を挙げたとしても、賃金が中堅社員の額を上回ることはありません。

総額人件費をコントロールしないと、若手社員の賃金と中堅社員以上の賃金との差が大きく、若手社員が報われない状況になってしまう可能性があります。

ダイバーシティの確保

価値観の多様化により、人材の多様性「ダイバーシティ」の確保が重視されています。しかし、新卒一括採用や終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用の場合、ダイバーシティの確保が難しい面もあるとされているのが実情です。

その理由には、「入社後に育児・介護との両立が困難になり、仕事を辞めざるを得ない」「新卒採用した人材を育成したいという想いが強く、その分、中高年者の採用・活躍に消極的」といった従業員側・企業側の事情が挙げられます。

メンバーシップ型雇用は、育児や介護中の人、定年後の再就職者、外国人労働者といった、多様な属性の人が活躍できるよう、ワークライフバランスの考え方や、制度の拡充に取り組む社会的な流れに沿いにくい雇用システムであると考えられるでしょう。

(参考:『ダイバーシティーとは何をすること?意味と推進方法-企業の取り組み事例を交えて解説-』)

グローバル横断の人事運用

先ほどご紹介した通り、海外ではジョブ型雇用が一般的です。そのため、海外拠点で日本と同様のメンバーシップ型雇用を採用した場合、現地の働き方になじまず、海外の従業員から批判的な声が挙がることも考えられるでしょう。

メンバーシップ型雇用になじみがないがために、現地における人材確保が難しくなることも容易に想像できます。そうした状況が続けば、国際競争力の低下にもつながっていくでしょう。

日本でジョブ型雇用が導入されてこなかった理由

近年、注目が高まっているジョブ型雇用ですが、なぜこれまではジョブ型雇用を導入する日本企業が少なかったのでしょうか。ジョブ型雇用を導入しようとした企業が、導入に踏み込めなかった理由やうまく進められなかった理由について解説します。

労働者側の不満

ジョブ型雇用の導入を検討した際、労働者から不満の声が聞かれたことがジョブ型雇用を導入する障壁の一つとなっていたようです。

具体的には、「評価制度や人事制度をジョブ型雇用にしても、会社全体の運用までを変えるのは難しく、給与に反映できない」といった運用面の煩雑さを懸念する声の他、「会社への帰属意識が強く、面倒見などの和を重んじる日本では、モチベーション低下につながる」といったプロセスを重視しないジョブ型雇用に、抵抗感を持つ声も少なくありませんでした。

導入には従業員からの同意を得ることが困難だったと考えられるでしょう。

企業側の分析不足

ジョブ型雇用の導入には、職種や部署ごとに対象となる職務を洗い出した上で、該当する職務についての職務内容や求められるレベルなどを記した「ジョブディスクリプション(職務記述書)」を作成する必要があります。

しかしながら、経済成長により仕事が煩雑に変化する中、ジョブディスクリプション作成の前提となる職務分析を十分に行ってこられなかった企業が多かったようです。このように、分析不足の状態が継続していたことも、ジョブ型雇用が導入されてこなかった一因と言えるでしょう。

(参考:『ジョブディスクリプションとは?テンプレートと記載例を使って作成、採用・評価に活用!』)

メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用にするべきか

近年、業務の複雑化や労働者人口の減少、テレワークの普及、働き方改革の推進、法改正などにより、人一人の仕事の専門性が高まり、業務範囲はより限定的なものに変わりつつあります。こうした時代の変化に伴い、今後はジョブ型雇用が主流になっていく可能性が高いでしょう。

しかし、必ずしもジョブ型雇用が、メンバーシップ型雇用よりも優れているというわけではありません。企業規模や扱う商材・サービス、企業理念によってはメンバーシップ型雇用がマッチしているケースもあります。

また、雇用システムを変更する場合には、採用・評価・報酬制度も変更する必要があるため、ジョブ型雇用の導入には一定の期間・工数を要します。メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の双方のメリット・デメリットと企業の方針を照らし合わせて、どちらがより自社に合っているかを判断するとよいでしょう。

まとめ

メンバーシップ型雇用には、帰属意識のある人材の育成や採用コストを抑えられるといったメリットがある一方、専門職人材の不足や海外人材の採用難といったデメリットがあります。

しかし、専門性を持つスペシャリストを育成に適したジョブ型雇用とは異なり、さまざまな部署や地域を経験し幅広く活躍できるゼネラリストの育成に適しています。

メンバーシップ型雇用、ジョブ型雇用の双方にメリット・デメリットがあるため、どちらかを採用するのか早急に決めるのではなく、まずは自社の現状をしっかり分析し、自社にマッチする雇用システムを選択してみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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