人事面談とは|4つの種類と基本フロー・企業の実施事例を解説

d’s JOURNAL編集部

部下の能力開発や成長促進、部下との信頼関係の構築を目的に実施される「人事面談」。具体的には、目標設定面談や中間面談、フィードバック面談、1on1ミーティングが人事面談に該当します。人事面談の実施方法について課題を感じている管理職の方もいるのではないでしょうか。

この記事では、人事面談の種類や基本フロー、実施する際の注意事項などについて、企業の実施事例も交えて解説します。

人事面談とは

人事面談とは、人事評価や能力開発を目的に、上司と部下が1対1で行う面談のことです。人事面談で話す内容としては、「人事評価の結果」「部下の目標達成までの進捗状況」「業務遂行における課題解決」「業務上の認識共有」などが挙げられます。

上司と部下が互いに情報を共有し、意思疎通がスムーズに行われることで、「評価の納得度を高める」「部下の強みや弱みを引き出して能力開発につなげる」「部下の話を傾聴することで信頼関係を築く」などの効果が期待できます。

また、人事面談を効果的に実施できれば、従業員のモチベーション向上や早期離職の防止にもつながるでしょう。

人事面談の種類

人事面談は「目標設定面談」「中間面談」「フィードバック面談」「1on1ミーティング」の4種類に分けられます。それぞれの特徴や実施内容について見ていきましょう。

目標設定面談

目標設定面談とは、部下の目標を設定するための面談です。「何を」「いつまでに」「どこまでするか」というように、達成すべき数値目標や具体的な取り組みなどを明確化するために実施します。実施頻度は年に1〜2回、新年度(上半期)が始まるタイミングや下半期に入るタイミングで行われるのが一般的です。

中間面談

中間面談とは、評価期間の途中に実施する面談のこと。「年に一度」「半期に一度」「4半期に一度」というような頻度で行います。目標達成までの進捗状況や中間的な指標を再確認することが目的です。課題が見つかった場合には上司と部下で解決法を話し合い、部下が次の行動に移れるように促します。

特に若手社員の場合は、不明点・疑問点が生じると業務が滞りやすいため、定期的に目標への進捗状況を確認するのが望ましいです。

フィードバック面談

フィードバック面談とは、会社や上司からの評価をフィードバックするための面談です。部下への評価とその根拠を具体的に伝え、今後の課題や目標達成のために効果的な行動を整理します。評価に対する納得感を高め、今後の課題点を明確化することで、部下の成長を促すのが目的です。

フィードバックにより、部下は自身の立ち位置を理解できます。また上司にとっては、部下へフィードバックすることが自身のマネジメント能力を養うことにつながります。

(参考:『効果の高いフィードバックのやり方とは?人材育成や評価で役立つ手法やコツについて解説』)

1on1ミーティング

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談のこと。部下の成長促進や中長期的なキャリア形成について意向の確認、心身の悩みの把握、部下と上司の信頼関係の構築を目的としています。

実施時間・頻度は企業によってさまざまですが、1回当たりの時間は30〜60分とし、週1回もしくは月1回のサイクルで実施するのが一般的です。他の面談と比べて、頻繁に行うのも特徴と言えます。通常の面談では上司が部下に話しかけることが多いですが、1on1ミーティングでは上司が部下の話を聞くことが重視されます。

上司は部下の業務状況や悩みなどに耳を傾け、フォロー・アドバイスしたり、人材育成につなげたりします。

(参考:『1on1で話すことにはもう困らない!テーマの具体例と成功のポイントを紹介』)

人事面談を実施する目的

そもそも人事面談は、「人事考課(評価査定)」「人事評価の納得感の向上」「部下の成長促進(人材育成)」「モチベーションの向上」という目的で実施するものです。それぞれについて、見ていきましょう。

人事考課(評価査定)

人事面談には、人事考課(評価査定)を行い、人事評価の判断材料にする役割があります。人事考課とは、業務に対する貢献度や業績、能力などの指標から一定の基準を基に企業が従業員を評価し、給与や賞与、昇進などの人事に反映させる制度のこと。

人事考課で従業員の成果を評価する基準を明確化することで、従業員のモチベーションアップも期待できます。

(参考:『人事考課をうまく運用するために、押さえたい目標設定と評価のポイント』)

人事評価の納得感の向上

人事面談では、従業員へのフィードバックとして、人事評価とその具体的な理由を伝えます。「なぜこのように評価したのか」「何が評価され、何を改善すべきなのか」を具体的に説明することで、人事評価への納得感を高めるのが目的です。

人事評価への納得感が高まると、部下の今後の成長につながるとともに、人事評価を不満とする離職の防止にも効果が期待できます。

部下の成長促進(人材育成)

人事面談は部下の成長促進にも好影響をもたらします。部下の能力開発を目的に、人事面談では目標達成に向けた進捗状況の定期的な確認や、改善点などの具体的なアドバイスを行います。

また、人事面談では部下のキャリア形成についての意向や有しているスキルの内容・程度を把握できるため、それらを基に「部下一人一人がより力を発揮できる業務は何か」を検討することもできるでしょう。

人事面談により本人の成長を促すことができれば、組織の成長にもつながっていきます。

モチベーションの向上

人事面談には、部下のパフォーマンス向上を目的に、目標に対するやりがいの意味付けや信頼関係の構築などにより、部下のモチベーションを向上させる役割もあります。

また、部下自身が成長を実感することで、モチベーションのさらなる向上が期待できるでしょう。そのために、人事面談では「良かった点」「さらに伸ばしてほしい点」「改善に向けたアドバイス」などを具体的に伝えます。

人事面談の基本的なフロー

具体的な流れは面談の種類によって異なるケースもありますが、ここでは各人事面談に共通する基本的なフローについて解説します。人事面談をスムーズに進めるポイントも併せて紹介しますので、参考にしてください。

人事面談の基本的なフロー

面談の事前準備

人事面談は事前準備が重要です。何も準備せずに面談に臨んでしまうと、「聞くべきことを質問できない」「伝えるべきことを話せない」「部下からの相談に応えられない」といった状況になってしまいます。

「何を目的とした面談か」「誰が何を話す面談か」といった目的をしっかり定めた上で、面談で話す内容をあらかじめ整理しておきましょう。面談内容を後日振り返ることができるよう、面談シートを用意するのもおすすめです。面談シートには、以下のような項目を設けておくとよいでしょう。

面談シートに記載する項目例

●質問項目や回答
●人事評価
●目標
●困っていること
●振り返り
●課題
●今後取り組むべきこと
●自身のフィードバック など

人事面談では部下の話を引き出すことが大切です。「はい」「いいえ」で答えられる「限定質問」はなるべく避け、「どうして?」「どうやって?」「どのように?」など意見や感想を聞くための「拡大質問」を用意しましょう。また、部下が話しやすいよう、1対1で静かに対話できる場(個室)も事前に確保しておきます。

緊張をほぐすアイスブレイク

緊張が生じやすい人事面談は、「いかに緊張を解き、話しやすい空気をつくるのか」が成功のカギとなります。お互いがリラックスして話せるよう、部下の緊張を和らげるための「アイスブレイク」の時間を設けましょう。

いきなり本題に入るのではなく、雑談や仕事に関係ない話から始めることをおすすめします。アイスブレイクの時間は5分程度を目安とし、相手の様子を見ながら本題の質問を投げかけるようにしましょう。

(参考:『【面接官必見!】知らないと失敗しちゃうかも?有意義な面接のためのアイスブレイクとは~質問例付き~』)

部下の話に耳を傾ける

人事面談では、部下の話をよく聞くことが重要です。部下の話は途中で遮らずに最後まで聞き、部下の言いたいことをしっかり理解しましょう。傾聴の姿勢を取ることで、「ちゃんと話を聞いてもらえたから、信頼できる」という安心感・信頼感を部下に与えることができます。信頼関係を構築できれば、部下のモチベーション維持にもつながるでしょう。

なお、評価について言及する前に、部下自身の自己評価を確認するのもポイントです。部下自身に説明してもらうことが、自己肯定感の高さや自信を持っている部分、自信を持って取り組める仕事などの判断材料となります。部下が自信を持っている点を褒めれば、自尊心を高めることができるでしょう。

自己評価と実際の評価との乖離が大きい場合には、そのギャップを埋めるための説明が必要となります。

部下へ助言や情報提供をする

部下の話をじっくり聞いた後で、部下への助言や情報提供を行います。いきなり指摘から入ると、自分の仕事ぶりを「評価してもらえていない」「批判された」と感じる人もいるかもしれません。そのため、評価している部分や達成できた部分を褒めた上で、改善点などを指摘します。

助言する側の上司は感情的にならないよう、客観的かつ冷静に伝えることが重要です。そうすることで、指摘事項を受け入れてもらいやすくなり、成長促進につながるでしょう。なお、次のアクションへスムーズに移ってもらえるよう、今後の改善点や課題については優先順位も一緒に伝えます。

今期の評価を終えたら、来期の目標や課題について話します。部下に前向きな気持ちで目標を立ててもらうとともに、達成に向けた具体的な取り組みも相談の上で設定しましょう。その際、今後のキャリアに関する希望を聞いておくことも大切です。

質問・疑問がないか確認する

人事面談で重要なのは、部下の悩みを解消し、評価や目標について納得してもらうことです。人事面談の内容や部下の業務経験などによっては、人事評価に納得していない場合や、目標の数字やミッションを理解できていない場合もあるでしょう。そのため、人事面談を終える前に質問・疑問がないかを確認し、不明点を残さないようにすることが重要です。部下からの質問がない場合は、上司から質問し、相互理解を深めるとよいでしょう。

人事面談を実施する際の注意事項

人事面談に当たっては、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。人事面談を実施する際の注意事項を2つ紹介します。

上司が話し過ぎないようにする

部下の話を引き出すためには、上司が話し過ぎないようにすることが大切です。人事面談では部下の話が中心となるよう、上司は「傾聴8割」「話す2割」くらいのつもりで面談に臨みましょう。

また、部下が上司に信頼関係を覚えるのは、「自分の話を聞いてもらえた」と感じられた時です。上司が話し手になってしまうと部下の話を深められないだけでなく、信頼関係も築きにくくなってしまうため、注意しましょう。

人間性や人格を否定しない

人事面談では、部下の人間性や人格を否定しないようにする必要があります。人事面談の目的は、部下の能力を向上させ、モチベーションを維持することです。そのため、目標を達成できなかったことやその理由について非難するのではなく、具体的な事実をもとにフィードバックし、相手の成長を促しましょう。

フィードバックのNG/OK例

NG:「納期を守れなかったあなたが悪い」
OK:「納期を守れないことがあった」

NG:「同じミスを繰り返すのは、大雑把な性格が原因だ」
OK:「同じミスが見受けられる」

NG:「営業目標が達成できないのは気合が足りないからだ」
OK:「先月より契約数が10%低下している」

また、「同じチームの▲▲さんは、あなたよりも優れた成果を上げている」というように、他人と比較することも望ましくありません。他人と比較されることで部下の自尊心が低くなり、モチベーションの低下につながる可能性があるためです。「半年前と比べると、●●さん(被評価者)の営業成績が15%低下しています」というように、本人のこれまでの成果・行動と比較する方が、成長促進につながるでしょう。

企業が実施する人事面談の事例

実際の企業では、人事面談をどのように実施しているのでしょうか。2社の事例を紹介します。

株式会社あしたのチーム

人事評価制度の構築からクラウドシステムの提供までを手掛ける株式会社あしたのチームでは、人事評価シートをクラウド化しています。人事評価シートのクラウド化により、リモートワーク下で上司と部下が画面を共有しながら面談を実施できるようになりました。

クラウド上に評価面談や1on1ミーティングなどの履歴を全て残せるため、上司からのフィードバックの振り返りにも活用されています。また、各人が成長するための貴重な情報や成長過程の記録となるため、今後の面談における参考資料の役割も担います。

人事担当者にとっては、人材育成のためのカルテのような形で活用できるのがメリットです。評価シートを横並びで見ながら、自社の人事評価の在り方について検証することにも役立てています。
(参考:『“納得できません”なんてもう言わせない!リモートワーク下での適正な人事評価メソッド』)

株式会社サーバントコーチ

1on1マネジメントをはじめ、組織人事コンサルティング事業を幅広く展開する株式会社サーバントコーチでは、期待していた部下がある日突然退職してしまうことを「びっくり退職」や「勘違い退職」と呼称。職場でのコミュニケーションの機会・量・質の低下に問題を呈しています。

「部下のための時間」であるはずの1on1について、上司の役割ばかりが強調され、当事者であるはずの部下がその目的を理解していないケースも少なくないと指摘。1on1の目的である「信頼関係づくり」「中長期的な成果を出すための土台づくり」「成長促進」「モチベーション向上」「働きがいの向上」の5つについて、部下が理解できるように説明することが重要としています。

上司と部下が気兼ねなく話し合い、お互いの考えや認識を擦り合わせる場として1on1を活用していくことで、突然の退職もなくなるのではないかと考えていると言います。

(参考:『上司と部下のすれ違いが「びっくり退職」に…。1on1の趣旨を正しく理解し、人材流出を阻止!』)

まとめ

部下の能力開発やモチベーション維持に効果を発揮する人事面談ですが、部下の納得感を得られなければ逆効果になってしまう恐れがあります。上司はあらかじめ質問を用意するなどの事前準備をしてから面談に臨み、面談中は傾聴の姿勢で部下とのコミュニケーションを深めることが重要です。

今回の記事で紹介した基本フローや注意事項を参考に人事面談を実施し、部下の成長促進につなげましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/d’s JOURNAL編集部)

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