組織を活性化させる「要人材」はなぜ埋もれていくのか?採用計画のための要人材発掘の視点を徹底解説

株式会社ITSUDATSU

代表取締役
黒澤 伶(くろさわ・れい)

プロフィール
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  • 組織活性化のカギを握るのは「要(かなめ)人材」であり、組織を動かしていく推進力のある人物
  • 問題社員を育成することで、かえって要人材発掘や育成の阻害要因となってしまう
  • 若手人材の活用は、人間の中心にある「進化欲求」をいかに掘り起こすか

緻密な人材戦略を立てたのに、組織が活性化しない。優秀な社員から辞めていく。研修に投資しているのに、指示待ちの社員が目立つ。

「組織がこうした課題を抱えている場合、真に評価されるべき社員が見過ごされている可能性があります」と語るのは、株式会社ITSUDATSUの黒澤 伶氏。組織活性化のカギを握る「要(かなめ)人材」の役割や見極め方について伺いました。

また同ページの付属の資料である、要人材発掘に必要な8つの視点と人材活用の思考スタイルも無料でダウンロードいただけます。こちらもご活用ください。


多くの組織が抱える課題の根底にあるもの

――株式会社ITSUDATSUは、組織人事のコンサルティングサービスや、最優先育成人材の発掘・抜擢(ばってき)サービスを提供されています。組織課題の取り組みについて教えてください。

黒澤 伶氏(以下、黒澤氏):これまでさまざまな企業の課題と対峙(たいじ)してきましたが、組織の雰囲気が停滞し、以下のような課題を感じている人材戦略実施者は少なくありません。

・組織にとって最適な人材を集めても、活躍を阻まれ、組織に失望して去っていく
・指示待ちの社員が残っていく
・モチベーションをアップさせる施策を打ち出しても効果が薄い

原因を紐(ひも)解いていくと、影響度の高いポジションに、しかるべき人が付いていないことが見えてきます。

停滞している組織では、「表向きの言葉や態度が巧みで、一見、エンゲージメントが高いように見える人」がキーマンとして評価・抜擢され、昇格しやすい一方、本当に抜擢されるべき人材が埋もれている傾向があるのです。

――そのスパイラルを回避するためにはどうしたらいいのでしょうか。

黒澤氏:要(かなめ)となる「要人材」を正しく見抜き、引き上げ、抜擢し、育成することです。組織のコアとなるべき人材が、「ここにいてもムダだ」と見切られて離脱しないよう、彼らが成長する土壌を整えなければなりません。

しかし、その「人材育成プログラム」に課題を持つ企業が多いことも、問題の一つです。

一般的な企業研修を見てみると、例えば100人の社員がいる場合、100人全員に対して同じ教育プログラムが提供されることがほとんどです。しかしその方法では、一人一人の能力にきめ細かくアプローチし、等しくポテンシャルを引き出すことはできません。

何より最大の問題は、いくら育成しても効果が薄いであろう問題社員に対して真剣に・全力で育成をしていることです。

また、目新しい制度やメソッドを取り入れて、組織の「ハコ」から整えようとしても、残念ながらその効果は限定的です。

例えば人事制度の変更やシステムの導入、あるいはリモートワークやフルフレックス制度といった組織における仕組みや制度を変えることで外側から活性化しようとしても、枠組みなどのカタチから人を動かすことは難しいです。

大切なのは、その枠組みに「人の心がついていけるか」だと考えています。

ではどのようにしたらいいのか。それは第一に、組織を外から活性化するのではなく、個人から活性させることです。結局組織は一人一人の個人の集合体なので、個人から活性化させた方が実は早いのです。

第二に、その個人とは誰かを決めること。それが組織の「屋台骨」となるような要人材です。要となる人材を発掘し、集中的に育成していく方法では、「要人材」を起点に周囲の社員に良い影響がもたらされ、活性化した個人が増えていきます。

つまり、「人材育成に優先順位を持つ」というターゲット戦略が必要です。

ですから、「社員を全員大事に育てたい」「社員にエコひいきはしたくない」いう感情とは別の次元で、「要」となる人材の選定および発掘をして、最優先で育成することが重要です。

経営層や人事権のある人たちは、自らも「要人材」であることを求められる一方、その評価眼を持っておくことも大切だと言えます。


要(かなめ)人材の定義とは

――組織の「要」となる「要人材」とはどんな人材なのでしょうか。

黒澤氏:ひとことで言えば、「組織に影響を与えることができる人材」です。

例えば、「この人と一緒にいたい」「この人と一緒に何か(仕事など)をしたい」「この人に喜んでもらいたい」「この人と一緒に喜び合いたい」「この人から褒められたい」「この人から認められたい」といった、人間的に「好き」であり、かつ、どことなく「尊敬されている」人です。

そういった人が、「私はもっとこうしたい」「私はもっとこうありたい」「私は組織のここを変えたい」「私はこの組織でこれを目指したい」など、自分の素直な想いを表明しながら取り組むことで、そこに、多くの人は影響を受けます。

ITSUDATSUでは、上記のような特徴がある人材を要人材と定義していますが、具体的には以下の2点の特性を高水準で持ち合わせています。ちなみに要人材にポジションや役職は一切関係ありません。

(1)成長性:自己保身の行動パターンに陥ることなく、自責志向で成長意欲が著しいこと
(2)調和性:所属組織の個性と本質的に相性が良く、相乗効果の可能性があること

成長著しく、内面が充実している社員に育成のアプローチをすることで、組織や部署に良い影響をもたらし、二次的な効果で周囲の人たちも引き上げられていきます。

――「要人材」のポテンシャルがある人の特徴とは?

黒澤氏:抽象度が高い言い方ですが、「内面のエネルギーが高い人」とでも言いましょうか。

人は、自らの「真本音の願い」を人生のテーマ・課題として常に大切にすることで、内側からエネルギーが湧き続けるようにできています。その一つのわかりやすい特徴としては「自己防衛をしなくなる」という点だと思います。

問題が起こった時にそこから逃げだしたり、他者からの指摘に過剰反応して攻撃的になったりするといった行動パターンの根底には、「自己防衛」の感情があります。

一方、自己防衛をしない人は、大きな問題が起きたときに責任転嫁せず、どう向き合うかを真剣に考えます。相手の言葉を曲解して解釈したり、自分の価値観を押し付けたりせず、相手が言おうとしていることを理解しようと試みるのです。

もう一つの特徴としては、「自分は社会とどうつながっているのか」という広い視点を持っていることです。所属している組織に依存し過ぎず、「会社は自分が成し遂げたいことのために必要なハコである」という自律的なスタンスを持っています。


要人材を見極める8つの視点

――貴社は要人材の発掘ツールを提供しています。どんな視点で要人材を見極めているのでしょうか。

黒澤氏:ITSUDATSUでは、人材発掘の8つの視点を持っています。

(1)意志と行動を一致させているか
(2)追求心が豊富か
(3)地に足がついているか
(4)一つ一つを大事に育てるか
(5)集中力があるか
(6)広い視野があるか
(7)筋が通っているか
(8)素直に人と向き合うか

このような8つの視点です。

当社は、要人材の発掘・抜擢サービス「KANAME」を提供していますが、組織の中にも5~8%の割合で要人材がいます。全ての条件を完璧に満たさなくても、一定の水準を満たしている人材を要人材と想定し、集中して育成をしています。

詳しくは同ページの付属の資料をご覧ください。

――最初からこれらの条件を全て満たすのはなかなか難しいと思いますが、採用のほか既存の人材をトレーニングすることで近づくことができるのでしょうか。

黒澤氏:内発的な動機付けやどんな生き方をしたいかを言語化する取り組みを通じて、若手は大きく変わります。

要人材のポテンシャルがある人を集めてワークショップを行い、自分が大事にしている生き方を言語化すると、「この職場でどんな仕事をしていくのか」という発想がしやすくなり、仕事に向き合う姿勢が変わってきます。

――要人材の割合は限られていると思いますが、配置のポイントはありますか。

黒澤氏:内面的な要素よりも、専門的なスキルが重要な職種やポジションも当然あると思います。このポジションはスキル人材、このポジションは要人材というように、組織を俯瞰(ふかん)しながら配置するのが理想的な形です。


今後の人材戦略のカギを握る「若手世代」

――組織を取り巻く環境にさまざまな変化が起こっていますが、今後、人材に対する視点はどのように変化していくと思いますか?

黒澤氏:今後、「若手」はますます重要なキーワードになっていくと思います。2025年には、ミレニアル世代(1981年~1996年ごろに生まれた世代)や、Z世代(1990年代半~2010年ごろに生まれた世代)の労働人口が半数を超え、徐々にα(アルファ)世代(2010年以降に生まれた世代)も社会に出始めます。

現在、多くの企業でマネジメントの実権を握っているのが50代以上ですが、徐々に30~40代に移り、現在の若手にもポジションを与えていくことになるでしょう。しかし管理・統制としてのマネジメントの在り方はいよいよ限界にきているかと思います。

ですから人の本質的・本能的欲求である「進化欲求」に基づいた自然なマネジメントに変化しなければなりません。「人をどう変えるか?」よりも、「その人の本来をいかに発揮するか?」が大切であり、もともと人間の中心にある「進化欲求」をいかに掘り起こすかが肝となります。

私たちが、頭で発想して自分の解釈で物事を進めようとすれば、どうしても「進化」よりも「管理」「統制」に向かってしまうものです。そのように、社会的に癖がついてしまいました。その癖を超えること、それを組織で実現すること自体が非常に意義深いと思います。

この組織にいることで、人としての本質的な生き方ができる、という実感は、人(特に若手)を根底から活性化させます。

――結局、マネジメント層の変化が大切であると。

黒澤氏:おっしゃる通りです。しかし、一定の年齢層になると、変化が難しいのが実情です。これまでの成功体験から逸脱することができず、部下に価値観を押し付けてしまうケースは珍しくありません。

特に、同じ組織に長く所属しているミドルシニアの場合には、組織への依存度が高まりやすいので、社外の経験値を増やしたほうがよいでしょう。例えば、社外で副業し、そこで得たスキルを若手に還元するなどです。

今後、人材の移動や転職がますます活発になっていきます。社員にとって、「今、この会社にいる時間」を意義のあるものにできなければなりません。「うちの会社が一番成長できるし、大きなことができる。辞める必要がない」と思える機運を醸成することが理想です。

そして、若手の著しい成長に気付き、刺激を受けることが、現在の、特に大きな組織のマネジメント層には必要なのです。

【取材後記】

海外で行われた心理学の実験では、集団の中で少数が一貫して主張を続けると、多数者に影響を与えたという結果があります。「組織」「社会」「個人」のバランスを取りながら、筋の通った行動を取ることができる「要人材」を見いだし、そして育成、影響あるポジションに就けることで、組織の雰囲気は変わるというのです。周囲に良い影響をもたらす要人材の発掘は、組織活性のヒントとなるかもしれません。

[取材・企画・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション]

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