社外パートナーと強固な関係性を築き、スプリックスのビジョンを共有。新規事業や経営幹部候補など、ハイクラス人材を異業種から続々と採用

株式会社スプリックス

常勤監査等委員 取締役 赤澤嘉信(あかざわ・ひろのぶ)

株式会社スプリックス

ヒューマン・リソース部 部長代行 採用責任者 服部剛志(はっとり・たけし)

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  • 転職市場が厳しさを増している中、企業ビジョンや文化への「本気の共感」がキャリア採用の絶対条件
  • 人材紹介会社とは重要パートナーとしてオープンにコミュニケーション。四半期に一度、会社の枠を超えて各社が一堂に会する場も
  • 人材紹介会社のキャリアアドバイザーにも自社を深く理解してもらうことで、「異業種出身×教育への熱い想い」を持つ採用候補者に出会えている

自社の将来を支えるハイクラス人材を採用したい、でも採用体制やマンパワーは限られている…。これは多くの中堅・中小企業が直面する現状ではないでしょうか。

個別指導塾「森塾」をはじめ、近年ではオンライン塾「そら塾」や生涯教育「東京ダンスヴィレッジ」などで新規事業を積極的に展開する株式会社スプリックスも例外ではありません。同社は役員がキャリア採用の陣頭指揮を執り、現在では本部人員の約8~9割がキャリア採用入社という多様性あふれる組織に。さらには新規事業や事業統括を担当する経営幹部候補・ハイクラス人材の採用にも成功しています。その秘訣は、人材紹介会社などの外部パートナーとも強固な関係性を築き、社内だけに閉じない採用チームをつくることだといいます。

一体どのようにして外部パートナーの心をつかみ、採用活動を進めているのでしょうか。

新卒入社の社員は教育現場で貢献したいという想いを持つ社員が大多数。ゼネラリストのキャリア採用が課題に

——貴社がキャリア採用を積極的に行っている背景をお聞かせください。

赤澤氏:大きな背景としては、新卒入社の社員の中に「ゼネラリストとしてキャリアを積みたい」と考える人が少ないことがあります。

当社の祖業である森塾は「先生1人に生徒2人まで」の方針を堅持し、生徒一人ひとりの個性に合わせた個別指導を提供しています。新卒で入社してくれるのは、私たちの考えに共感し、「教育の現場で子どもたちに貢献したい」という想いを持つ人がほとんど。教育事業の根幹には人があり、サービスの運営自体にも多くのマンパワーを必要としているため、こうした人材が集まってくれるのはとても歓迎すべきことです。

ただ、教育現場で直接貢献したいという強い想いを持つ社員の多くは現場を離れようとしません。本社異動の場合は「本部へ行くと子どもたちに直接向き合いにくくなりますよね…」と懸念する。その気持ちはとてもよくわかります。

——社員の皆さんは、なぜそこまで教育への純粋な想いを持ち続けられるのでしょうか。

服部氏:同業他社の多くは塾の現場を任せる教室長に売上目標を持たせていますが、森塾では教室運営者に売上や利益を一切共有していません。数字のことを考えずに、ひたすら子どもたちのことと学校成績を上げることだけを考えてほしいからです。そもそも教育ビジネスは、本気で子どもたちに関われば自然と成果につながるものですから。こうした方針があることで、社員は純粋に子どもたちに向き合えるのでしょう。

その反面、本部のコーポレート系部門やIT部門などは人材不足が続いており、ゼネラリストとして活躍してくれる人材を外部から迎え入れているのです。ICTを活用した教育コンテンツの新規事業や、既存の事業統括を担えるハイクラス人材も積極的に採用しています。当社は現状600人規模の体制で、そのうち森塾の現場に約500名が所属。本部勤務の残りの約100名のうち、8~9割がキャリア採用で入社しています。

どんなに魅力的なスキルや経験があっても、ビジョンに合致しなければ採用できない

——キャリア採用で苦労していることはありますか?

服部氏:転職市場が厳しさを増す中で、当社でも応募数を確保することに苦労しています。採用競合も増え続けていますね。

また、前述の通り当社には独自の文化と理念、サービスのオペレーションがあり、教育への強い想いを持つ人材が集まっています。特にハイクラス人材の採用ではいかに当社のことを理解してもらえるか、当社の想いに共感してもらえるかも課題となっています。どんなに魅力的なスキルや経験がある人でも、私たちの教育へのこだわりやビジョンに合致しなければ採用できません。

 

——採用候補者にはどのようにして想いを伝えているのでしょうか。

赤澤氏:現在の大学進学率をご存じでしょうか?50代の私が学生のころ、大学進学率は25%程度でしたが、直近では55%を超えています。高学歴化が強まってきたのは間違いありませんし、教育業界では「難関校に合格することが成果」という価値観が多いのも事実です。

しかし当社の考えは違います。森塾は勉強が苦手な子どものための塾です。勉強を苦手とする子の定期テスト結果が入塾時より1点でも高くなることが大きな成果だと考えています。

面接では、こうした考えを理解するだけでなく、本気で共感してもらえるかを重視しています。私たちが採用候補者を見極めているというよりは、私たちの想いを聞いた上で採用候補者に判断してもらっているといったほうが正しいかもしれませんね。たとえば新規事業のポジションでは、現在の課題感や、大変だと想定されることも面接で話しながら、入社してからのイメージを持ってもらえるようにしています。結果として、新規事業ならでは、複雑な環境の中でも主体的に活躍していただけるような方の採用が実現しています。

——採用体制はどのように整えているのでしょうか。

服部氏:現状、キャリア採用は最小限で担当しながら、役員をはじめ社内の関係者を巻き込んで選考を進めています。

当社は創業時からマーケティングとリクルーティングを最重要活動に位置づけてきました。「リクルーティングファースト」の精神が浸透しているため、現場に面接を依頼するとかなり協力的ですし、役員へ書類選考を依頼する際も1日で戻してもらえますので、とても助かっています。

加えて、外部の人材紹介会社との連携も重要視しています。社外のパートナーも含めて採用チームとして動いていることが、当社の一番の特徴かもしれません。

人材紹介会社は「大切なパートナー」。四半期ごとに各社が一堂に会する場も設ける

——人材紹介サービス各社との付き合い方で意識していることとは。

赤澤氏:大前提として、人材紹介会社の皆さんは採用成功という同じ目標を追いかけるパートナーであり、とても大切な存在だと認識しています。

私自身もかつて、人材系企業に所属して人材紹介事業に社内人事の立場から携わっていたことがあるんですよ。その経験を活かしながら、「どんな企業であればパートナーの皆さんが本気でコミットしたいと思えるか」を常に考えています。

大切なのは、私たち人事・採用担当者自身がどこまで採用に本気なのかを行動で示すということ。顧客側だからといって人材紹介会社を業者扱いにしているようでは、採用に向けた本気度が伝わりません。どんな事情があって採用が必要なのか、どんな人材がほしいのか。情報をオープンにして、当社のデメリットになる部分も包み隠さず誠実に伝え、質問されれば何でも答える。これが企業に求められる姿勢だと思います。

 

——営業担当やキャリアアドバイザー(以下、CA)とは、どのように接点を持っているのでしょうか。

赤澤氏:各社の営業担当者とは週2〜3回は電話でやり取りをしますし、四半期に一度のペースで各社の担当者に集まっていただく会も開いています。会社の枠を超えて情報共有することには限界があるかもしれませんが、当社の採用でうまくいった事例やナレッジなどを可能な範囲で共有し、各社の取り組みに活かしてもらっているんです。

また、営業担当者を介したコミュニケーションでは採用候補者にどうしても伝わりきらない部分が出てくるため、CAとも話す機会を持つようにしています。CAには当社のビジョンや事業、社風を理解してもらうことで、当社に合いそうな方を紹介していただけることや、当社への応募を迷っているような方にも背中をそっと押す役割を期待しています。世の中、転職慣れしている人なんてほとんどいませんよね。そうしたときにちょっとした一言で採用候補者の転職活動が大きく変わることもあります。だからこそ営業担当者だけでなく、CAにも当社を深く理解していただき、自信を持って当社を紹介してもらえるようにコミュニケーションを取れる場を設定しているのです。

スプリックスの教育への熱い想いに共感して、ハイクラスの異業種人材が入社

——これまでのキャリア採用にはどんな手応えを感じていますか。

赤澤氏:人材紹介サービスを通じたハイクラス人材の採用では、各社の営業担当者やCAが当社を理解してくれているからこその成果が生まれていると感じます。

実際に、「自分の子どもが学校で受けている教育や先生に違和感がある」「自身のキャリアを活かして教育現場に貢献したい」という理由で応募していただける方や、自身に子どもが産まれたことを機に「子どもたちの未来のために働きたい」と考え、異業種から当社を選んでくれる方もいますね。

こうしたこれまで教育業界に身を置いたことがない異業種出身の方々も当社の教育への想いに共感して、入社していただけています。これは人材紹介会社の営業担当者やCAを通じて当社の教育に対する想いや、教育でNo1を目指し、教育業界を変えようとするビジョンを本気で実現しようとしている姿などが伝わっているからこそだと思います。

 

———今後の人材戦略についてもお聞かせください。

赤澤氏:私たちのビジネスは基本的に労働集約型であり、今後も質・量ともに人材を確保し続けなければいけません。そうした中で転職してきた方に活躍してもらうためにも、マネジメントの在り方を見直していく必要があると考えています。昨今では世の中全体で賃上げの動きが加速しているので、報酬の見直しも積極的に進めていきたいですね。

個人的には、キャリア採用を通じて新規事業に挑む楽しさを多くの人に味わっていただきたいです。当社では今、オンライン塾や生涯学習など、教育にまつわるさまざまな領域で新規事業を積極的に進めています。仕事内容そのものも報酬だと感じてもらえるよう、当社に仲間入りすることで得られるチャンスをアピールしていければと思います。

取材後記

取材の中で赤澤さんは、人材紹介サービスの営業担当者が各々抱えている目標数字について聞くこともあると明かしてくれました。「森塾が現場から数字のプレッシャーを取り去っているように、営業担当者たちにも数字を心配せずに当社と向き合ってほしいと思っているんです」。表面的なコミュニケーションに終始することなく、どんな相手ともオープンに誠実に話す。そんな赤澤さんのもとには、各社の担当者から仕事だけでなく、プライベートに関する悩み相談が寄せられることも少なくないそうです。

企画・編集/森田大樹(d’s JOURNAL編集部)、野村英之(プレスラボ)、取材・文/多田慎介、撮影/塩川雄也

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