売上高増加は連続10期以上。業界をリードするTISは、競争加速するIT人材採用においても盤石の態勢を築く

TIS株式会社

執行役員 人事本部
人事本部長 林 由之(はやし・よしゆき)

プロフィール
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  • 国内で大手の独立系Slerとして業界をリードするTISは、激化するIT人材採用においても獲得に成功している
  • 新組織「インキュベーションセンター」設置などにより、社員の新たなキャリアの可能性を広げる
  • アルムナイ採用など採用チャネルも拡大。社員のキャリア自律を目指し人材戦略を推進する

国内で大手の独立系Slerとして、IT業界をリードするTIS株式会社(本社:東京都新宿区・代表取締役社長:岡本安史)。

同社はキャッシュレスが進む中、クレジットカードの基幹システム開発では、国内シェア約50%を誇る。IT人材の獲得競争が他業種間でも激化する中、いかに求める人材を採用できるか。また、これまでの基幹システム事業に加え、新しいサービスの開発・販売を促進・成功させるか。

継続的な成長のために試行、実践されている人事戦略について、人事本部長の林 由之氏にお話を伺った。

(聞き手:パーソルキャリア株式会社 執行役員 加々美 祐介 ※2024年2月当時)

業界のリーディングカンパニー、TIS。「ムーバー」として新しい可能性を探る


――これまでの事業、そしてこれからの展開についてお聞かせください。

林 由之氏(以下、林氏):TIS株式会社は1971年に大阪の地で創業し、システムインテグレーターとして50年の歴史があります。IT黎明(れいめい)期には、コンピューターの専門家としてさまざまな企業のシステムづくりに携わり、アメリカ法人を立ち上げたり、株式を上場させたり、着実に歩みを進めてきました。

ここ数年は、テーラーメイドのシステムよりも汎用的なサービス提供が求められる傾向にあり、業界のトレンドが大きく変わってきています。実際には、テーラーメイドのシステム構築分野もまだまだ成長しているのですが、長い目で見れば、汎用的なサービス分野が成長していくでしょう。

当社では2015年ぐらいからこの変化を察知し、テーラーメイド、汎用サービス、どちらも視野に入れて事業計画を立ててきました。特にコロナ禍の3年間は、汎用的なシステム制作に力を入れた転換期となりました。

これまで当社は有形資産を持たずにきましたが、この3年間で作ったサービスで、会社の資産は拡大しています。

――御社のサービスは私たちの生活でも至る所に見られます。

林氏:特にクレジットカードの基幹システム開発では約50%の市場シェアを持っています。そのほかにも、数多くのサービスを生み出し、オーダーメイドなものづくりで成長してきました。

ビジネスの変化が加速している今、サービスの提供形式が変わっていくことは間違いありません。それに向けての準備や行動転換には着手していますが、これをどう進化させていくかが、次の3年間におけるチャレンジだと捉えています。

――グループでビジョンを策定されたとか。

林氏:2026年に向けて「Create Exciting Future」をグループビジョンに掲げました。これは、先進技術・ノウハウを駆使してサービスを提供し、お客さまから戦略パートナーとして頼られる存在であり続けるべくまい進するというコミットメントです。

私たちがミッションに掲げる「ムーバー」として、新しい可能性や選択肢を世の中に生み出していきたいという想いもあります。

2026年まではドラスティックに構造改革をしていく計画ですが、最初の6年で土台ができあがってきた。そこで2032年に向けてグループビジョンを改訂し、より事業創出や社会課題への貢献を深めていきたいと思っています。

――畑そのものの土壌を変えて、種をまいてきた。その後は育てて収穫する10年ということですね。

林氏:新しい事業をつくることはもちろんですが、これまでやってきたお客さま向けのシステム構築は、当社の土台となる資産として、今後も伸ばしていく所存です。

DXなどで、お客さま側の事業にも変化が見られますが、基幹システムのようなものはまだまだ活用されています。

既存のビジネスがあるからこそ、新規分野にも投資ができるということで、変わるものと変わらないものを見極めながら、新たな価値提供を進めていきたいと思います。


バックエンドからフロントまで社内で網羅できる強みを人材活用に活かす

――さまざまな変化がある中で、会社として求める人材像も変わってきているでしょうか。

林氏:かつてはシステムの受注生産が基本でしたので、マーケターやデザイナーなどが関わることはなかったのですが、事業の幅が広がるとともに新しいポジションが増えていきました。またサービスの販売がスタートしてからは、新しい職種の募集も開始しています。

エンドユーザー向けのサービスはUXIA(Information Architect)がより重要になりますし、より良いサービスを提供するための手法が、基幹システムとは異なります。お客さまの隠れたニーズを深掘りしてヒアリングする力や、提案力が必要になってきています。

バックエンドからフロントまで社内で網羅できる強みを活かし、ユーザーの特性ごとに価値提供をしていくために、多様なキャリアを持った、チャレンジ精神にあふれる即戦力となる人材を必要としています。

私たちが培ってきた基盤を活用して、新しいサービスや価値を生み出してほしいと願っています。

――広く募集されていると思いますが、良い人材を採用する上での課題を教えてください。

林氏:かつてIT業界の採用で競合する企業といえば、相手も同じくIT企業でした。しかし、今やどの業界でもITに精通した人材を求めているため、候補者は私たちのようなIT企業と併願し、自動車会社や金融機関にも応募しているという状況です。

この動きは数年前から見られるようになった傾向で、当初は「そういう会社と併願するんだ」という驚きがありました。

ITに携わりたいという意思がある人にとって、当社のようなIT企業だけでなく、ユーザー企業の社内システム職も視野に入ることは当然です。

また、金融業界は今やITと切っても切り離せなくなってきましたから、金融業界でもITのポジションが急増し、どこも人材を確保しようと努力されているでしょう。異業種間でも人材の取り合いになるわけですから、今まで以上に魅力を発信していかなければなりません


「ローンチ前からユーザー数万人」という環境、最適な人材を獲得する手法・戦略立案とは

――ビジネスが多種多様になり、採用面でのライバル企業が増えているとのこと。そんな中で、御社の魅力はどこにあるとお考えでしょうか。

林氏:当社最大の強みは、チャレンジできる環境とこれまでの実績です。例えば「ITを活用してこんなことができるんじゃあないか」というアイデアがある人にとっては、自分がやりたいことを実現できる環境が整っています。

基幹システム事業で培った実績やお客さまとのつながりがありますので、ローンチする前からユーザーが何万人もいるという前提で事業計画ができるのです。やってみたい事業がある人は、ぜひTISに来て、実現していただきたいと思います。

もちろん、既存分野での活躍ポジションも多々あります。大手金融企業の基幹システムトラブルは、記憶に新しいところでしょう。基幹システムに不具合があると、企業にとっては致命的な大問題となり得ますから、これまでのIT業界を熟知し、実績のあるSEの価値が再認識されています

TISには経験ある人材がそろっていますので、いろいろな案件に挑戦し、自己成長していきたい人をサポートしながら、実績を積んでいただけます。

――「良いサービスをつくりたい」という人は多いですが、そこからどうスケールするかが難しいものです。しかし、御社の場合は既存事業をベースにできるので、アドバンテージがありますね。

林氏:そういう視点で物事を見られる方は、日頃からアンテナを張っているでしょうし、どんな環境でも活躍できる人が多いですね。おっしゃる通り、既存顧客には大手企業様も多く、サービス開始前から想定ユーザーが何万人もいる、という世界です。

一方で、まだ存在しない新しいビジネスを、ゼロから考えて生み出せる人材も必要です。新規事業を希望する人は増加傾向にあり、社内の新規事業プログラムには、毎年20~30人ぐらいの人が手を挙げてくれています。

TISには、新しいビジネスモデルに取り組む「インキュベーションセンター」という組織があります。新しいビジネスですから、成功事例や案件数は少なく、成功確率も0.3%ぐらいでしょうか。それでも新しいことにチャレンジしてみたいという人に、ジョインしていただきたいと思っています。

成功、失敗にかかわらず、新規事業にチャレンジした経験がある方などが理想です。

――社内では部署異動もあるのでしょうか。

林氏:年間100名程度が異動しており、社内流動はある方だと思います。

一つの分野を深掘りしていくことももちろん重要ですが、自分の経験と実績を活かしながら社内でキャリアを変え、幅を広げていくのも手です。自分の可能性を追求したい人にとっては、とてもいい環境だと思います。

システムづくりに携わる人は、「ものづくりを極めたい」という考えの方が多いため、事業モデル構築に必要な「ゼロ→イチ」の考え方を持ち合わせていないことが多いものです。

しかし、フロントエンド・開発の両方がわかる人がプロジェクトマネジャーにいれば、問題解決の速度や精度が上がり、新規事業も形になりやすいものです。人の循環を高めてどちらにも精通した人材を育成し、基幹ビジネスの強化とともに、新規事業にも力を入れていきたいと考えています。

――現在はどのような募集をされているのでしょうか。

林氏:Slerとしてのビジネスだけでなく、新規ビジネスに対応するために、ここ3年ぐらいはコンサルタントの募集も増やしています。今は数十名程度ですが、近い将来には100名以上まで増やしていく予定です。

コンサルというと、苛烈な働き方を想像するかもしれませんが、当社の場合、残業は全社平均で20時間強です。残業がない分、日中はかなり集中して取り組まなければなりません。可能な限りゆとりを持ちながら生産性を上げ、より良いサービスをつくっていきたいと思います。

――採用人数もかなり増やしていかれるのですね。採用手法で力を入れておられることがあれば教えてください。

林氏:来年度より、一度退職された方の復職を推奨する、「アルムナイ採用」を強化したいと考えています。他の企業で働いてみてはじめて、元の職場の良さを再認識するということはよくあることです。

もともと、年に数名の方がアルムナイとして再入社しているという現状を受け、積極的に退職者に声掛けをして、今はアルムナイでの採用が約2~3倍にまで増えています。年間の採用数の5%程度を占めておりますので、まずまずの割合ではないでしょうか。

個人的に、みんな一度は他の企業を見てもいいのではないかと考えています。他の企業でチャレンジしたいという人のことも応援したいですし、外で得た経験を持ってTISに戻ってきてくれるのも、大いに歓迎しています。


TISがキャリア採用に注力する理由(ワケ)、人材戦略で見据える未来とは

――採用に関する、今後の人材戦略を教えてください。

林氏:今、力を入れたいのは現場の採用です。現在は、人事が現場のキャリア採用も一括していますが、来年からはスタイルを変えて現場にキャリア採用を一任し、より細やかな採用活動を実現していく予定です。

採用を現場に任せることで、現場の声が採用に直接反映され、本当に必要な人材を迎え入れると同時に、多様性も生まれてくると考えます。

一方で、人事として力を入れていきたいのはTISの魅力を発信する認知活動です。

世の中には私たちの名前を出すことができないサービスがたくさんありますが、インキュベーションセンターについての取り組みなどを紹介し、基幹システムに強い会社というイメージに加え、新しいサービス開発などのチャレンジに力を入れていることも伝えていきたいですね。

――人材教育についてはいかがでしょうか。

林氏:「キャリア自律」をテーマとし、社員が自分のキャリアを自分で考えるということを、積極的に促進していきます。DX人材輩出に向けての教育も、当社の課題の一つです。

特に若い方には、TISの環境や実績を大いに活用し、TISで学んでチャレンジしてもらいたいと考えています。

社員が自分の幸せを追求しながら成長することは、企業の利益にもつながりますし、最終的には社会への貢献に発展します。多くの方にTISの魅力を知ってもらい、「ムーバー」として一緒に働いてほしいと願っています。

――ありがとうございました。

【取材後記】

IT業界のリーディングカンパニーとして、優秀な人材の確保は企業の存在価値に直結する課題だ。異業種でもIT人材が求められている中、自社の魅力発信はもちろん、魅力を感じさせるサービスと社会貢献の実績が欠かせない。国内独立系SIerとして3,000社以上の顧客を持つTISが、今後どんな新しいサービスを展開するのか、これから採用する人材がどう活躍するのか、世の中の期待が集まっている。

[企画・取材・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション]

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