新卒人気トップクラスのNTTデータ関西、キャリア採用を強化。自由闊達な社風でキャリア自律を推進する、そのビジョンと人材戦略に迫る
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公共分野、金融・ヘルステック分野、法人分野を主事業とする大手SIerのNTT関西。ITエンジニア含むキャリア採用者数を昨年度22名から100名に増加させた
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魅力的な人材と出会うため、過度な書類選考の偏重をせず、人物中心で人材の強みを引き出す面接スタイルを実施
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会社の課題や将来像、今後の方向性などを管理職だけでなく実担当者レベルまで共有。採用成功の秘訣は「同じ目線」で臨むこと
株式会社NTTデータ関西(本社所在地:大阪府大阪市、代表取締役社長:斎藤 佳宏/以下、NTTデータ関西)は、関西では最大手のSIerだ。直近の採用者数は100人以上で、社内のキャリア採用人材割合は、3割以上に上る。
今回は常務取締役執行役員の植野 剛至氏に取材を実施。NTTデータ関西が手掛ける事業そのものは広く認知されているが、そこで活躍するITエンジニアなどの人材についてフィーチャーされたことは少ない。そこで人材戦略や採用計画、社内の人材育成に対する考え方などにスポットを当て掘り下げていこうと思う。
※NTTデータの記事はこちらから
大手SIer、NTTデータ関西が担うITインフラ事業とその展開
――市場における御社の立ち位置や、直近の業界トレンドをお聞かせください。
植野 剛至氏(以下、植野氏):NTTデータ関西はNTTデータグループの一員ですが、「親会社から仕事を受けてこなす」ということではなく、事業会社としてマーケットに向き合い、責任と誇りをもって価値を提供しています。
自分たちが持つ資産(アセット)への積極的投資や、お客さまと共にビジネスを創出していくような新しい領域においても果敢に取り組んでおります。また、NTTデータグループの仲間やパートナー企業と連携しながら、周りの方々と一緒に価値を創出しております。
そしてNTTデータ関西だけでできないことがあれば、グループの仲間やパートナー企業などとのアライアンスを活かし、周りの方々と一緒に価値を見いだしていきたい――、そういう会社を目指しています。
――NTTデータとNTTデータ関西では、求められている役割に違いはあるのでしょうか。
植野氏:NTTデータとNTTデータ関西は、組織規模の違いはあれどそれほど大きく違いません。
ビジネス形態によってどちらかがプライマリーを担いながらプロジェクトを遂行するため、お客さまにとって最適な方法をケース・バイ・ケースで選択しています。そういった意味では、グループ内の知見や経験を活かせることはグループの強みかもしれません。
NTTデータ関西は約20年前にスタートし、地域のお客さまと共に積極的にビジネスを展開してきました。今では関西にとどまらず、全国のお客さまあるいはマーケットに対してビジネスを展開しています。
――NTTデータ関西ではどのような案件を担当しておられるのでしょうか。
植野氏:事業ドメイン的には、公共分野、金融・ヘルステック分野、法人分野の3つです。
公共分野については、自治体の基幹システムの開発運用を主に担っています。加えて、DXという時代背景の中で行政事務や住民の諸手続きといったデジタル化などの案件も手掛け、さらに防災や介護といった住民接点系サービスも展開しています。
金融・ヘルステック分野については、人々が日々利用する銀行などのシステム構築はもちろん、各金融機関が展開する事業を支援するような、ソリューション型のビジネスも増えてきました。また、近年は企業や行政による「健康事業」が加速しており、データを活用したサービスの創出にも取り組んでいます。
また、法人分野については、特に関西圏のお客さま(クライアント)には製造業が多いこともあり、生産管理や販売管理のシステムを手掛けています。昨今では関西圏のみならず、エンタープライズ企業に対してデータ活用やデータ分析、セキュリティー領域の分野でもビジネスを積極的に展開しております。
さらに、分野に限定せずユニークな部分でいうと、社員のアイデアから始まった新たなビジネスの芽も生まれ始めています。例えば、新たに生まれた事業の一つとして、アスリートを応援しながらファンエンゲージメントを向上させるようなサービスの展開を予定しています。
そして事業ポートフォリオとしては、特定の分野に偏ることなく、全分野をバランス良く運営することを心掛けています。今後は一層分野間連携を促進し、さらなる事業成長に取り組んでいきます。
そのため高い事業成長を目指し、高い目線と謙虚なスタンスを持ちつつ、より多くの企業への支援を続けながら、ITで社会課題の解決に貢献していきたいと考えています。
――関西圏におけるDXやITインフラの拡大状況はいかがでしょうか。
植野氏:首都圏と同じく、関西でもそのニーズは拡大しています。DXに象徴されるように、テクノロジーは日進月歩、変化・発達しています。
ひと昔前はお客さまからシステム開発を受託して開発し、運用していくことが私たちのメインの仕事でした。しかし現在は、技術を生かしてお客さまの事業そのものを変革していく仕事が多く、これまでに比べて課題が複雑化しています。
データ分析を例に取ると、収集したデータをどうビジネスに生かせるかが重要なのですが、これについては「正解」がなく、お客さま自身も悩まれることが多いものです。私たちの役目としては、単にデータを並べるにとどまらず、お客さまと二人三脚で「新しい価値」を見出すことにあります。
もう一つ、経営リスクの感度が高まっている近年においては、セキュリティー分野のニーズも高まっています。今までのように「監視」に寄った保守運用とは違い、高度なセキュリティー対策が求められるようになりました。セキュリティー分野におけるプロフェッショナル度を高めていくことは、今後ますます重要になっていくでしょう。
単純な保守運用ではなく、SoC(Security Operation Center)やマネージドサービスの領域で、お客さまへの価値を提供していきたいですね。
採用は対話。魅力的な人材と出会うために大事にしている「候補者目線」とは
――NTTデータ関西の採用活動進捗(しんちょく)や採用課題を教えてください。
植野氏:新卒採用もキャリア採用も、おかげさまで多くの方に入社してもらい、かつ活躍いただいております。特にキャリア採用は、現場のマネジャーも前のめりで協力してくれていますし、去年はキャリア採用で100名程度の方に入社してもらえました。もちろんその中に多くのエンジニアも含まれています。
特にリーダー層の獲得に向けては、求人情報一つひとつが魅力的に伝わることや、過度な書類選考の偏重をせず、人物中心でその方の強みを引き出すような細かいところでも工夫をしています。
面接の場面でも型にはまった質問はせず、対話を重視しています。例えば、私たちのビジネスや、求職者の方がやってみたいことなど、意見を聞き目線を合わせることによって戦略的なディスカッション形式での面接を心掛けています。こうした工夫で入社の動機や意向を高められていると実感する日々です。
――採用に関わる人数が少ない中、多くの採用を可能にした秘訣(ひけつ)はどこにあるとお考えでしょうか。
植野氏:当社では会社の課題や将来像、今後の方向性などを管理職のみならず、実担当者レベルまで共有しています。「何をすべきか」「課題は何か」と一人ひとりが考え、ボトムアップで行動できていることが、採用を成功に導く理由かもしれません。
また、NTTデータといえばお堅いイメージがあるそうですが、社内は意外と自由闊達で、意見も言いやすい社風です。
採用チームのメンバーは知識が豊富ですから、信頼して任せています。もちろん、役員としてメンバーに考えを聞くこともありますし、私から経営層の考えを伝え、意見が合わない時には議論を重ねます。手段にはこだわりませんが、目的や課題の擦り合わせは大切にしています。
――全国的にIT関連人材が不足しておりますが、採用や社内育成、人材開発などについてはどのようにお考えでしょうか。
植野氏:一人ひとりの社員が生み出すバリューが利益に直結しますから、プロフェッショナリティーを高めるべく、各自の自育精神を尊重し、それを全面的にサポートしています。
研修は以前のような画一的なものではなく、自分が必要なタイミングで上司に相談し、どの研修をいつ、どの順番で受けるかなども、各自に一任しています。
マネジメントスタイルも、ここ2年ぐらい前から新しい概念を取り入れています。これまではお客さまから依頼を受けたものを開発する、という仕事の仕方でしたので、品質・コスト・納期をきっちり管理する、いわゆるQCD(*1)マネジメントが最適でした。
しかし、お客さまと一緒に価値を生み出すことや仕組みを変えるようなこと、あるいは新しいビジネスにチャレンジしていくときには、「課題を一つひとつ潰していく」というようなスタンスをとっていては自由闊達な意見が出てこなくなります。時には指摘を控え、イネーブラー(*2)として寄り添い、応援するスタンスも必要だと考えており、両方のマネジメントスタイルを適切に使い分けできるように取り組んでいます。
時間がかかると思いますが、マネジメントの手法を適切に使い分ける文化が成熟してくれば、好循環が加速し、社員個人の成長につながると確信しています。
――知的好奇心がそがれると、一気にモチベーションが下がるということですね。
植野氏:アイデアが浮かんだとしても、「きっと批判されるだろうし、そもそも稟議が下りないだろう。上司に言ってもどうせ却下されるだろうから、提案するのはやめておこう」などとシミュレーションし、自己完結してしまいがちです。
しかしそれではもったいない。自分のやりたいこと、夢中になれることをどんどん提案し、ワクワクしながら働いてほしいと思うのです。
事業を立ち上げ、軌道に乗せることは決して簡単なことではありません。商品企画の段階になれば、もちろん経営判断が入ります。しかしその前段まではあまりとやかく言わずに応援し、良い結果を導けるようにしたいものです。
新規事業を考える際は、アイデアを出すのが得意な人、アイデアを具体化できる人、計画を立てるのが得意な人などを巻き込んで、それぞれの得意分野で力を発揮すれば成功にも近づきやすいですし、気付きや成長もあるでしょう。要するに一人ですべてを行うのではなく、チームで進めていこうという考え方です。
――お客さまにとっても、心強いブレーンになりそうです。
植野氏:「お客さまから最初にお声がけいただける会社になろう」という意味で、「関西PRIME1~社会、お客様から選ばれる会社になる」ということを中期方針に掲げています。
そのためには、技術力だけではいけません。お客さまにとって、私たちの技術力は高くて当たり前です。そうではなく、仮説思考で提案し、付加価値を出していくこと。これがNTTデータ関西に求められていることだと認識しています。
――今後入社する方について最も重視する条件は。
植野氏:創立20周年を機に、これからの20年に向けて、「KANSAIから「いま」を支え「あす」を笑顔に」というパーパスを作りました。
「KANSAI」としたのは、自分たちの事業領域を自分たちで決める必要はなく、関西を起点にして、全国、そしてワールドワイドに貢献していきたいという想いと、IT技術を駆使して新しい価値を作り出し、幸せの象徴である「笑顔」を増やすことに私たちの存在意義を見出したいという想いを表したものです。
今後、あらゆる意思決定の際にはこのパーパスに照らし合わせて進めていきます。そのため、パーパスに共感してそれを実現したい方が入社条件になります。
これまでも、これからも、「社会のため、誰かのため」という利他の気持ちがビジネスの基本です。
案件をいただくとき、もちろん収支も大切ですが、それ以前に「私たちがこの仕事をすることに、どういう意味があるのか」、「お客さま、住民の方、消費者の方にとってどういうメリット・バリューを提供できるのか」ということを考えてほしいのです。
バリューを生み出すのは一人ひとりの社員ですから、「主体性」が不可欠です。想いを持ってお客さまに向き合い、その先にいる「人」を想像しながら仕事に取り組むこと。そこに「俯瞰(ふかん)力」や「デザイン力」が加わることで、パッションが生まれ高まってくるのだと思います。
主体性がなければ活躍できない――。キャリア自律を大切にする働く環境について迫る
――キャリア採用の方は、どのような業界から来られる人が多いのでしょうか。また、社員の方に共通点のような特徴があれば教えてください。
植野氏:業界を狭めず幅広いお客さまとお取引をいただくことが多い特性上、同業他社でSEとして活躍されていた方をはじめあらゆる業界から入社されています。
中には「IT未経験」という方もいるのですが、IT未経験の方でも、業界に対して深い知見やリレーションがある方であれば、大いに活躍していただけます。
当社の社員は総じて真面目で、人のことを放っておけない人が多い印象です。
「この課題を何とかしたい――」というパッションと主体性をもって、自ら進めていくという姿勢で、日々の仕事に取り組んでいます。近江商人かたぎと言いますか、個社としての個性なのかもしれません。
――シニアミドルのリスキリングや再雇用などの施策や、既存人材について期待されていることをお聞かせください。
植野氏:新しい挑戦に積極的である一方、レガシーなビジネスもあり、そこではベテランの方ならではの知見が大いに生かされます。
今のところ定年は60歳ですが、その後もぜひ会社に残ってご活躍いただきたいと、常日ごろから皆さんにお伝えしています。もちろんレガシーなビジネスでなくとも、新しいことにもどんどんチャレンジしてほしいと思っています。
大学卒業後すぐに入社し、60歳で退社というような考え方ではなく、時代の流れや個人の考え方に合わせた働き方ができるかどうかが大切です。
出産・育児はもちろん、病気になったり、家族の介護が必要な状況になったりした場合に、会社がどうサポートできるのか。世代に応じた福利厚生なども柔軟に制度の仕組みを変えていくべきだと考えています。
――選択ができること、主体性を持って関わること、がキーワードですね。最近の方は「社会貢献」を重視している人もおられます。
植野氏:IT業界は仕組みを作ることがなりわいです。社会インフラという観点から社会全体に影響することですから、大変な面もありますが、やりがいのあることです。
社会インフラのシステムの仕事も多く手掛けていることから、当社を志望してくださる方の動機として、「ITの力で社会課題を解決したい」ということが前提にあるようです。
主体的に関わることで仕事がますます面白くなりますし、会社の魅力アップにもつながっていくのだと思います。
――これから入社される方にどんなことを期待しておられますか?
植野氏:キャリア採用の方は特に、それぞれの得意分野を掛け合わせて面白いことを実現していただきたいと期待しています。また、入社後に「これはおかしいな」と気付くことがあれば遠慮なく発信してもらい、より良い会社づくりにご協力いただくことも、お願いしたいことです。
NTTデータ関西、NTTデータグループが保持する資産を目いっぱい活用し、ご自身のやりたいことをお客さまと一緒に実現してほしいと願っています。
――ところで、現在採用計画のパートナーとなっているパーソルキャリアの支援取り組みや採用成果はいかがでしょうか。
植野氏:パーソルキャリアさんには当社の課題に向き合っていただき、その結果、採用者数が22名から100名に増えました。
これはひとえにパーソルキャリアさんが私たちの想いをくみ取って伴走してくださり、タイムリーに情報共有をしてくださったことによるもので、大変ありがたいことです。
私たちが拠点を構える「関西」という土地は、経済的にも文化的にも豊かなスーパーリージョンです。インバウンド一つとっても、大阪、京都、神戸、奈良などもあり、首都圏に劣ることなく魅力的です。ビジネス的にも、グローバルに羽ばたく企業が多く集積しているエリアでもあります。
私たちNTTデータ関西も一丸となって、関西を起点に日本を盛り上げていくべく、同じ想い・志をお持ちの方にご一緒いただければと思います。
――ありがとうございました。
【取材後記】
近江商人の「利他」や「三方よし」の精神を大切にすることや、マネジメント方法を課題管理からイネーブルメントに変えることなどを重視するNTTデータ関西。お客さまや社員に対する真摯(しんし)な気持ちや、丁寧に向き合うスタンスは「言うは易し行うは難し」で、一朝一夕には成り立たないことだ。NTTデータ関西が転職希望者含むあらゆるステークホルダーから選ばれる理由には、高い技術力はもちろんのこと、「この会社と仕事がしたい」と思わせる魅力があるようだ。
[企画・取材・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、撮影/安田健示(フォトレイド)、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション]
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