マツダはコネクティッド開発組織をどう強化するのか――!?首席エンジニアが明かす、ITエンジニアに求める素養、定着につながる育成論

マツダ株式会社

MDI&IT本部 コネクティッドシステム部 
首席エンジニア 
森下 敦司(もりした・あつし)

プロフィール
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  • 「ソフトウェアよりもハードウェアのほうが進んでいる」――。首席エンジニアが語る自動車製造のIT領域
  • IT人材に求める素養は「技術に対する渇望」と「好奇心」、そして「大規模プロジェクトを失敗した経験」
  • 「メタなスキルで公知な定石・原理原則を活かす」――。組織開発と育成は、ビジネス目標のほか固有な事情や文化も考慮してゼロベースで行っていく

自動車がインターネットにつながった「コネクティッドカー」の開発により、自動車業界には大きな変化が生まれている。それに伴い、自動車業界にも「ITエンジニア」が欠かせない存在となってきた。

今回はマツダ株式会社(本社:広島県安芸郡、代表取締役社長兼CEO:毛籠勝弘)の首席エンジニアである森下敦司氏に、マツダが求めるITエンジニアの素養や理想の組織、そして新たな人材で創り出すコネクティッドカーの未来についてお話を伺った。


ITアーキテクトであり、マツダの首席エンジニア。異業種での発見とマツダとの出会い

――これまでのご経歴や、マツダとの出会いについてお聞かせください。

森下 敦司氏(以下、森下氏):私は大学卒業後すぐにIT業界に入り、技術コンサル会社や大手SIerで開発実務やITアーキテクトとしてキャリアを積んできました。食品、証券、銀行、官公庁など、さまざまな事業ドメインのIT開発に携わり、JAXAに招聘(しょうへい)されて人工衛星関連の仕事に携わったこともあります。

全体としては、大規模システムやミッションクリティカルシステムの経験が多いですが、JAXAでの経験が長かったため、ハードウェア開発の世界にも土地勘があります。

前職での大きなプロジェクトを終え、最後の転職を考えていた時期に、マツダとの出会いがありました。

当時のマツダには2つの募集がありました。開発をスピードアップさせるアジャイル開発エンジニアか、マツダのITについてさまざまな角度からプロジェクトを推進するシステムアーキテクトか――。

未知の業務ドメインかつシステムアーキテクトの応募要件は結構高めで、一抹の不安もありましたが、経歴を踏まえてシステムアーキテクトに応募して、2021年11月に入社しました。当時はちょうどコロナ禍でしたが、最初の1カ月を広島で過ごし、ホテル住まいをしながら研修を受け、社員一人ひとりの「マツダ愛」に触れたことをよく覚えています。

そして入社から約3年間、アウトカーと呼ばれる車両と連携したサービス領域のシステム開発や、それらの基盤づくりに携わってきました。その中核となるのがコネクティッドシステムの大幅リニューアルプロジェクトです。

これらをしっかり推進しながらIT人材を育成し、アウトカー領域のビジネスを継続可能に整備していくことが私のミッションです。

――大手SIerと製造業とのギャップや、それぞれの良い点・課題についてどうお感じですか。

森下氏:人工衛星に携わっていたというお話をした通り、これまではソフトウェアだけでなく、ハードウェア領域でも経験を積んできました。2つを比較して言えるのは、ソフトウェアよりもハードウェアのほうが進んでいる、ということです。

ハードウェアの場合、解析ツール、シミュレーター、3D CADなどの技術を用いて、「実現可能な製品のゴールイメージ」をデジタルに作成し、事前検証してから製造を行います。なお、これらの技術は、形状だけでなく、質量、強度、剛性、熱などの数式化された物理法則に基づいており、例えば車のエンジンでも、熱伝導や温度分布などについて解析やシミュレーターが用いられています。

マツダでは「マツダデジタルイノベーション/MDI(*)」を推進してきたこともあり、IT技術の活用については実績も豊富です。

一方、ソフトウェアは数式化された物理法則のような明確な制約がないため、ゴールイメージの実現性を事前に完全に検証することは不可能です。したがってユーザビリティー、性能、セキュリティー、開発コスト、運用コストなどさまざまな観点とそれらの関係性を自分たちで見つけて、実現可能なゴールイメージをプロジェクト毎に見出さなければいけません。

また、これらの内容や関係性は製造開始後も日々変化しています。人への依存が大きくバーチャルな世界だけに、見落としや仕様変更要求も発生しがちです。つまり、ソフトウェアの世界では、プロジェクトごとにハードウェアの世界の物理法則に相当する法則とその変化を発見し続ける必要があります。

この点にハードとソフトの大きな違いを感じています。

(*)マツダデジタルイノベーション/MDI:
最新のIT技術の活用により、マツダの業務プロセス変革を行う取り組み。1996年より設計と生産技術を対象にスタートしたMDIは、IoTやAIなどのIT技術の進化や市場ニーズの多様化を踏まえて、2016年よりMDIフェーズ2を開始。マーケティング・セールス・サービス・エンゲージメントの一連の流れであるカスタマーエクスペリエンス(CX)を描いたCXマップを起点に、最新のIT技術を活用した業務革新に取り組んでいる。

――コネクティッドカーの大きな動きやトレンド、面白さについてお伺いします。

森下氏:コネクティッドカー自体をどうやって面白いものにしていくのかについては、自動車メーカー各社、横並びの状態と考えています。

これから世の中に出てくる車は、コネクティッドであることが前提です。すべての車がインターネットにつながって、ドライバーや企業が車からさまざまな情報収集をしたり、車に対して指示をしたりすることが当たり前になります。まだまだ未開拓の領域なので、やりがいがありますね。

ですから、ソフトウェアをアップデートするOTA(*)の採用はトレンドになっていくでしょう。

(*)OTA:「Over the air(オーバー・ジ・エア)」の略。インターネット上で、自動車のソフトウェアを更新する技術のこと。

――各メーカーによってコネクティッドカーに対するアプローチが異なるようです。マツダの特徴はどのようなところにあるでしょうか。

森下氏:マツダには「人間中心」というキーワードがあります。機械が全部やってくれるということではなく、人間がいかに心地よく使えるかということや、使うことによって元気になるような価値を目指しています。

自動車業界のこれまでのITは、走る・曲がる・止まるといった車の制御機能が中心でした。しかし、ITの対象がアウトカー領域に広がり、コネクティッドの技術を用いることで、従来の発想にとどまらず、エンタメも含めて、さまざまな分野で成長していけると考えています。

そういった中で、お客さまがマツダに求めることに真剣に向き合い、マツダならではの「人間中心」を体現するサービス、それを支える技術を探求していきたいと考えています。さらに20年も経てば、車がバックエンドのサービスにつながるだけでなく、車同士がつながるなど、通信方式やシステムのトポロジーについても大きく変わっている可能性があるでしょう。

そういった変化にマツダならではの価値観を大切にしつつ、小さいながらもキラリと輝けるように取り組んでいきたいと考えています。


人生を振り返って「豊かな人生だった」と思える未来を。コネクティッドカーの開発環境と組織構成

――今関わっておられる領域の組織構成や開発工程を教えてください。

森下氏:現在の組織構成としては、ヘッドクォーター的に動く運営部隊、現行システムの運用・保守を行う部隊、コネクティッドシステムのリプレースを推進する部隊の3つに分かれています。

しかし、エンジニアがビジネスサイドと直接連携して要件整理に関わりつつ、自分でつくったシステムを自分で運用するスタイルを目指していますので、これらの部隊を段階的に融合していきます。

システムはつくることが目的ではなく、使っていただくことが目的です。したがって全員がなんらかの形で運用・保守にも参画していただきます。一人ひとりのメンバーが高い専門性を持ちつつ、案件ごとに柔軟に対応できることが理想と考えています。

なお、業務知識に専門性を持つメンバーについても、抽象的な考え方、論理的な考え方、モデリング技法などテクノロジーと親和性のあるメタなスキルを持っていただきたいですね。私はこのようなスキルを「IT脳」と呼んでいますが、このスキルは領域や工程にかかわらず役立つものです。こうしたスキルをプロトコルとして組織の価値観を育てていきたいと考えています。

現在は次期コネクティッドシステムのシステムテストを控えている段階で、各種テスト完了後、順次リプレースを行っていきます。また、今後はこの作業と並走で、次のターゲットへの準備を進めていきます。難しい局面が続きますが、知恵を使って乗り切りたいですね。

――社員が活躍するためには、どのような環境が望ましいとお考えですか。

森下氏:私の世代が育ってきた環境は「根性でやりきれ」というやり方で、深夜、土日関係なく、期限内に仕事を終えるのは当たり前という時代でした。そこから学んだこともありますが、これからの時代は、いつか人生を振り返った際に「豊かな人生だった」と思えるようにしていかねばなりません。

そのためにはライフイベントを大切にすること、残業をしすぎないことなど、新しい時代に合わせたやり方が不可欠です。ただ一方で、古いと言われても大切にしたい考え、変えたくないこともあります。

例えば、エンジニア一人ひとりが、マツダに所属するからエンジニアなのではなく、「エンジニアである自分がたまたまマツダに所属して技能を提供している」と思うぐらいの気概、そして「技術に対する渇望と好奇心」を持って、自分なりの目標感を持ち、自分の意志で取り組んでほしいと願うわけです。

具体的には、会社が用意したからといって研修を受けるような「待ちの姿勢」ではなく、自分が興味を持った技術に対しては、自発的に、惜しみなく時間を使って一流を目指す姿勢です。ですから、業務外での社外コミュニティへの参加も積極的であってほしいですね。

たとえ業務的な必要性や会社の指示と直接関係ない技術であっても、自分が興味を持った事柄に取り組むことは、個人のエンジニア人生に必ず活きると思います。私たちは何よりもITが好きなエンジニア集団でありたいのです。

一方で、経営と直結したゴールを設定し、会社という組織の中で達成感を得ることも必須です。そのためにはマネジメント層が業務内容をコントロールし、業務に集中できる環境を用意する必要があります。緊急の業務が入れば遂行中の業務を止める、延伸するなど、仕事の優先順位を制御して、仕事量があふれないようにガードする、というイメージでしょうか。なお、このためには、マネジメントが業務の表層だけでなく内容について適切に理解している必要があります。

業務内容を適切に理解したうえで、適切な業務量をキープしつつ、エンジニアに必要な成果を目指して活躍してもらうことはなかなか難しいことですが、それを追求し続けることがエンジニア組織のマネジメントの責任だと思います。

しかし、業務目標とワークライフバランスを両立することは、容易ではありません。ビジネス環境も厳しくなる一方ですから。今の時代はミドルマネジメント層にとって、本当に難しい時代であると感じています。

昔は根性で理不尽を乗り切ることも受け入れられましたが、今の時代はそうはいきません。しかし、IT業務を取り巻く環境が大幅に改善されたとは言えませんので、この矛盾を解決して、昔以上に成果を出す方法を考えなければなりません。その事例をマツダから発信できたら素晴らしいと考えています。


メタなスキルで公知な定石・原理原則を活かす。コネクティッドシステム開発に携わるエンジニアの育成論

――昨今、幅広い人材を求める企業が多くなっています。マツダにおいて、IT人材に求める人物像について教えてください。

森下氏:好奇心が強い方がよいですね。ユーザー系企業や事業会社に応募される方は、変化やチャレンジよりも安定性を求める方が多いと感じていますが、マツダでは新しいことや知らないことに興味を持ち、自分が知りたいことに対する「渇望」がある方や、テクニカル面でチャレンジしていける人が好ましいでしょう。

サラリーマンとして必要な知識を学ぶというよりも、「知りたくて仕方がない」という気持ちが原動力で、業務にも勉強にものめりこむ――。そんなイメージです。

また一般的に、大規模システム開発プロジェクトの7割は失敗すると言われていますから、IT人材の7割は、失敗プロジェクトを経験していることになります。中には、成功した経験がないという人もいるでしょう。つまり、大規模システム開発を成功に導くスキルを持ったIT人材は少ないのが実態なはずです。そのため私たちは少ないIT人材に頼って、固有な問題を場当たり的に解決できるとは考えていません。

もちろん世の中には成功経験がある方がいらっしゃいますし、素晴らしいスキルを持った方もたくさんいらっしゃると思います。しかし、そういう方であっても過去の経験のみに頼って考えるのではなく、「公知な定石や原理原則を踏まえつつ、ゼロベースで考えられる方」を求めているわけです。

ですから過去の経験や知識に不足がある方でも、「学ぶ意欲があり、ゼロベースで考える素養がある方」であれば歓迎です。7割が失敗するシステム開発の世界を変革しようという試みに、共にチャレンジしていただける仲間を求めています。

「日々アップデートされる個人の経験を、共通知識でフィルタリングしてチームに還元し続けるエンジニア集団」によってシステム開発を変革できればいいなと。

――スキルについてはいかがでしょうか。

森下氏:私たちが取り組んでいるコネクティッドシステムは、車というハードウェアだけでなく、連携する社内外のシステムが多いことが特徴です。大規模開発となるため、問題が起こりやすく、当然難易度は極めて高いのです。

そのうえ、旧来の常識だけでは通用しないため、古典的な技法や過去の経験に固執せずに、「どうすれば成功させられるか」をゼロベースで考えられることが大切です。私たちの組織は、この課題に対処するために「これまでのIT業界に不足していたスキルセットや考え方」と「テクノロジースキル」を両立した人材を生み出していきたいと考えています。

そのためには、「当たり前にできなければいけないことが、できていない」という事実に向き合い、ゼロベースで真の問題の解消を考える必要がありますね。頭でっかちではなく、現実に合わせてさまざまな技法をハイブリッドに使いこなせる人材がこれからは求められるし、育てていかなければならないのです。

――マツダのITエンジニアはどのような人が多いのでしょうか。ITエンジニアとしての難しさについてもお聞かせください。

森下氏:中堅企業でのIT開発や、受託開発に携わってきた方が多い印象です。年齢層は20代後半から30代の方がボリュームゾーンでしょうか。

ITプロジェクトの要件定義では、場当たり的で現実を踏まえないむちゃな要望を耳にすることが多々あります。しかも、システムはきちんと動いて当然と思われていて、バグを出すことは許されない場合も多いです。要件の品質が悪い状態からそういった状況に至ったとしても、エンジニアは成果を求められるという厳しさがあります。これはとても理不尽なことです。

この状況を解決するためには、エンジニアが要件定義に参画し、要望をしっかりと理解し、QCD観点も含めて実現すべき、あるいは実現可能な要求なのか、を見極めることが重要です。私は、この見極めには「IT脳」、つまり抽象的な考え方、論理的な考え方、モデリング技法などテクノロジーと親和性のあるメタなスキルが必要だと考えています。もちろん、これだけで解決できるわけではありませんけどね。

また一方で、要件がなかなか固まらない現実を受け入れる必要もあります。そこで二転三転する状況に対応する力と、どこまで何をつくればよいか、何を満たせばよいかということを確認し、しっかり形にしていく力とのバランスは必要でしょうね。

なお、経営層やビジネスサイドの協力も不可欠です。マツダは幸い、経営層に理解がありますので、私たちエンジニアもそれに応えていきたいと思います。

――要件定義や開発において、要望の吸い上げと集約の工程はなかなかご苦労も多そうです。

森下氏:「相手のことを理解する」と言うことは簡単ですが、実行するのは難しいことです。

トップマネジメントやお客さまの要望を理解できないときもありますが、なぜこの人は、今それを言い出したのかということに想いを巡らせ、情報の断片を拾い集めて予測し、先手を打ちながら推進することが大事です。

要望を聞いたときは理解できなくても、経験と年齢を重ねることで、後からわかることもあります。自分の知見不足で、気付けないということが往々にしてあるのです。こういう知識は、本で学べることではありません。

サラリーマンエンジニアではなく、真のエンジニアとして人生を歩むということは、日々、自分なりのアップデートをするということと同義なのかもしれません。言われたことだけをするのではなく、知り得た知見を使いこなしつつ、人生を共に歩む人たちの組織にしていきたいと思います。

――いずれは基幹システムに携わるようなエンジニアメンバーを、どのように育成しておられるのでしょうか。

森下氏:現在、人材像やキャリアモデルを整備中です。前職ではIT人材育成施策を主管した経験もありますし、情報処理学会やIPA(情報処理推進機構)(*)からも知識やノウハウを学びました。しかしIT人材育成の知識と経験はあるつもりですが、それらすべてがマツダに合うとは考えていません。IT人材育成も、知識を踏まえつつ、組織に固有な事情や文化、ビジネス目標を考慮してゼロベースで行う必要があると考えています。

世の中から見ると、マツダは大きい企業に見えるかもしれませんが、自動車メーカーとしてはスモールプレイヤーで、他の大手メーカーさんと同じ方法・考え方ではうまくいかないこともあるのです。

システムの成功に必要なメカニズムや、その実現に必要なことに気が付くためには知識以上にメタなスキルが非常に重要です。

業界におけるスモールプレイヤーとしては、体力ではなく知恵とその質で勝負しなければなりません。本質に気付き、知恵を発揮するには、物事を俯瞰(ふかん)し、抽象化してモデリングできることや、公知な定石、原理原則をハイブリッドに使いこなすなど、時代やトレンドが変わっても通用するメタなスキルに注力することが不可欠です。

ですから、日々の業務で発生するさまざまな問題についてメンバーには、俯瞰(ふかん)したうえで分解し、簡単化することをお願いしています。もちろん教える側としても、重要な考え方を繰り返し、簡単な言葉で伝えるといったことなどを常に意識しています。

周りの人からは「あの人はいつも同じことばかり言っているな」、と思われているかもしれませんが、入社当初は「もっと楽しいと思っていた」「ここまでできなければならないのか…」と言っていた人も、1年、2年と経つうちに頼もしく育ち、みんなで連携して仕事をこなしてくれていることには感謝しています。

自分の成長は自分で気付きにくいものですから、マネジメントとしては、成長を実感できる機会も提供していきたいものです。将来、今のメンバーたちがさらに次の世代へバトンをつなぐなどして、新しい時代をつくっていってほしいですね。

(*)IPA(情報処理推進機構):ITで社会課題を解決したり、産業発展に寄与したりする指針を示すほか、情報セキュリティーの強化やIT人材の育成などに取り組む政策実施機関。

「走る・曲がる・止まる」という変わらない価値を提供。未開拓な領域への挑戦が成長を加速化させる

――車づくりの楽しさをどこに見いだしておられますか。

森下氏:車は美しく、かっこいいこと自体が魅力的ですし、多くの人にとって生活必需品でもありますから、車がなくなることはないでしょう。コネクティッドという領域で、ITを使ってどんな貢献ができるのか。マツダのコネクティッドがあるからマツダの車が欲しいという人が増えれば、エンジニア冥利に尽きますね。

私も車が好きで、今乗っているのは30年型落ちの古い車です。しかし、最新の車と同じように走っており、「走る・曲がる・止まる」という基本機能は、公道を走るぶんには古い車も最新の車も違いはありません。

また、車はスマホのように2、3年で買い替えるものではなく、長期の間、継続的にご利用いただく製品でもあります。これらの点で、変わらない価値を維持し、提供し続ける必要があります。このような難しい製品特性を踏まえつつも、マツダ車をお客さまに選んでいただくために、どのように差別化していくかということは難しい課題です。この点にITの立場で貢献していきたいと考えています。

――最後に、マツダのコネクティッドカーの展望をお聞かせください。

森下氏:マツダが求める「走る歓び」を「生きる喜び」に昇華させ、コネクティッドカーが人間の生活にどれだけ役に立てるのかということに挑み、「マツダならではの存在感」で勝負していきたいものです。

コネクティッドの世界において、マツダがどんな差別化を生み出せるのかは未開拓な領域です。

「人間中心」とはどういうことなのか。人間はどんなときに感動するのか。そういったことも含めてしっかり考え、お客さまに選んでいただけるサービスとしての車づくりに取り組んでいきたいですね。

――ありがとうございました。

【取材後記】

コネクティッドカーの領域は無限の可能性が広がっている。自動車メーカーは各社、さまざまな未来を描いていることだろう。マツダの車はもともとデザイン性が高く、走ることが大好きなファンが多い。「知りたいことへの渇望」があふれ出るマツダのITエンジニアは、どのような未来を見せてくれるのか。マツダのコネクティッドカーは私たち人間にどう寄り添ってくれるのか。マツダのこだわりと人材戦略に大きな期待がかかっている。

[企画・取材・編集/鈴政武尊・d’s JOURNAL編集部、制作協力/シナト・ビジュアルクリエーション]

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