面接官の心得とやり方とは?役割や事前準備・流れとコツを解説

面接官の心得とやり方とは?役割や事前準備・流れとコツを解説

d's JOURNAL
編集部

人材採用で、面接官は自社と応募者のミスマッチを防ぐとともに、応募者の入社意欲を向上させる重要な役割を担っています。

質の高い採用面接を実施する行うためには適性を持った面接官を配置し、適切に訓練することが大切です。

この記事では、面接官が果たす役割や必要な心構えを確認した上で、面接の流れや注意事項、具体的な質問例などを詳しく解説します。

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面接手法や質問設計のポイントを整理したい方は、ぜひご活用ください。

面接官の目的

面接の質を向上させるためには、面接官がどのような存在であるかをしっかりと理解することが大切です。まずは面接官の基本的な役割と目的を確認していきましょう。

●転職希望者が自社に合う人材であるかを見極める
●自社に入社したいという動機を形成する

転職希望者が自社に合う人材であるかを見極める

採用後のミスマッチを避けるためには、新たに採用する人材が自社に合っているかどうか見極めることが欠かせません。履歴書・職務経歴書だけでは読み取れない情報を通じて、複合的に判断する力が面接官には求められます。

具体的には「自社の業務にマッチしたスキルや経験を持っているか」「長くはたらいてもらえそうか」「自社の風土に合っているか」などです。ミスマッチによって新たな人材の採用にかかる時間や費用を減らすためにも、自社が求める人材を見極めて採用しましょう。

自社に入社したいという動機を形成する

面接官の目的には、転職希望者の不安要素を取り除き、「自社に入社したいという動機を形成する」ことも挙げられます。

面接官は転職希望者にとって企業の窓口となる存在であるため、対応次第でイメージを大きく左右する可能性があります。面接時に横柄な態度を取ったり、不適切な発言をしたりすると、会社の価値を下げることにつながるでしょう。

面接官を通して自社に魅力を感じてもらい、入社への意欲が向上するような振る舞いを意識することが重要です。

面接官に求められる3つの適正

優れた面接官になるためには、求められる適性を理解した上で自身の強みと照らし合わせてみることも大切です。ここでは、面接官にどのような人物が向いているのか、具体的な適性を3つに分けて見ていきましょう。

1.コミュニケーション能力
2.柔軟性の高さ
3.公正な判断力

1.コミュニケーションスキルが優れている

面接官は応募者と直接的に関わる存在であるため、コミュニケーション能力は欠かせません。語彙力が豊富にあり、適切な言葉を場面に応じて選べる能力に優れていることが重要な条件となります。

採用面接では、応募者だけでなく面接官も緊張してしまうものであり、どうしても打ち解けるまでに時間がかかります。言葉選びの微妙な違いによって、転職希望者との距離感に大きな差が生まれることもあるため、基本的な言語能力自体に高い水準が求められるのです。

また、採用活動では、応募者の強みや特性についてきちんと言語化し、チーム内で的確に共有することも大切なプロセスとなります。そうした意味でも、コミュニケーションスキルはなくてはならない資質といえます。

2.応募者に合わせて質問内容を変えられる

面接官に求められるもう一つの特性は「柔軟性の高さ」です。面接はあらかじめ用意したシステムを用いることも大切ですが、あまりにも画一的に進めてしまうと、応募者の個性を見極めることが難しくなります。

そのため、面接官には転職希望者の反応を見ながら質問内容を変えられる柔軟な思考が求められるのです。転職希望者の経歴やスキルを通して独自の発問を行ったり、相手に合った形で自社の魅力を伝えたりすることで、面接の質は大きく向上していきます。

3.公正な判断を下せる

面接では、自身の主観に頼らず、客観的で公正な判断を下す必要があります。そのため、面接官が認知バイアスに対してどのように向き合うかが、面接の成否を決定するポイントと言っても過言ではありません。

人間の認知システムは不完全なものであり、思い込みやそのときの環境によって左右されてしまうことが多く、どうしても公正な判断は難しいものです。面接官はこうした認知バイアスをきちんと認識しており、それらを低減させるために行動できるかどうかが問われる職業ともいえます。

ステレオタイプや親近感の罠、確証バイアスといったさまざまな認知のずれに目を向け、公正かつ冷静であり続けるためには、一定の知識と経験が必要となります。

面接官が大事にしたい6つの心得

有意義な面接を実現させるためには、単に優れた適性を持つ面接官が担当するだけでなく、事前に適した心構えを持っておくことも大切です。面接官がどのようなスタンスや振る舞いを心がける必要があるのか、ここでは主な6つの項目を解説します。

1.企業の代表としての振る舞いを認識する
2.話しやすい雰囲気をつくるようにする
3.お互いが評価を受ける場であることを忘れない
4.清潔感を重視する
5.先入観に左右されない
6.転職希望者の目線になって臨む

1.企業の代表としての振る舞いを認識する

応募者にとって、面接官はその企業で最初に会う人物であるケースがほとんどです。入社前に接する唯一の関係者となるパターンもあるため、面接に臨む際は企業の「顔」としての意識を常に持っておかなければなりません。

先ほども触れたように、面接官の振る舞いや人柄は応募者の動機形成に影響を与えるため、信頼感や安心感を与えられるような対応を心がけることが大切です。特に近年では、面接時に不適切な対応があると、SNSなどで広がってしまうといったリスクも考えておく必要があります。

面接官が与える印象次第で企業のイメージはプラスにもマイナスにもはたらくため、振る舞いには十分な注意が必要です。

2.話しやすい雰囲気をつくるようにする

有意義な面接を行う上では、応募者にリラックスした気持ちで本音を話してもらう必要があります。面接の場であまりにも緊張感が生まれると、応募者は自分の状況や考えを素直に表現できなくなってしまうため、企業側にとっては人材を見極める機会を損失することにもなります。

そのため、本音をきちんと引き出せるように、話しやすい雰囲気をつくって緊張をほぐすことが大切です。例えば明るい表情を心がけたり、適度な相槌を意識したりするなど、ちょっとした配慮でその場の雰囲気を和らげましょう。

また、座りやすい椅子を用意したり、景色が見える部屋をチョイスしたりするなど、環境面に気を配ることもポイントです。

3.お互いが評価を受ける場であることを忘れない

面接は一般的に、「企業が転職希望者を見極めるプロセス」として捉えられがちです。

しかし、売り手市場での人材採用は、同時に「転職希望者が企業を評価する場」でもあります。

近年では、複数の企業で同時に就職活動を行うことが基本であるため、企業側は常に「あくまでも就職先の候補の一つである」という認識を持っておかなければなりません。選ぶ立場として高圧的な態度をとってしまうと、転職希望者との間に感覚のずれが生じ、面接をしても採用までたどり着くことが難しくなります。

お互いに選ばれる存在であることを忘れず、対等の立場として丁寧に対応していく意識が、面接官にはなくてはならない心構えといえます。

4.清潔感を重視する

「企業も選ばれる側である」という視点で考えると、面接時にはさまざまなポイントに注意を払う必要が出てきます。中でも特に重視したい点は清潔な環境を整えることです。

通常、一度の面接で自社の企業風土や、既存メンバーの魅力を知ってもらうことは難しいものです。面接官が応募者を見極めるときと同じように、転職希望者も企業を見極める上では、ある程度見た目の状況に判断を左右されます。

そのため、面接官自身もきちんと身だしなみを整え、真剣な態度で臨んでいることを知ってもらう必要があります。また、会社の入口から面接会場までのルートもきれいに整っているかをチェックし、清潔感のある環境整備に力を入れることが大切です。

5.先入観に左右されない

面接の数をこなした面接官は、先入観のみで転職希望者の人となりを決めつけてしまうことがあります。その結果、自社が求める人材に沿っていない転職希望者を採用し、ミスマッチから早期離職につながる恐れがある点には注意しなければなりません。

先入観で判断するのではなく、面接でのコミュニケーションを大切にしましょう。要件に合う人材を採用するためには、面接時にその人材を深く知ることが大切です。

(参考:『その判断軸、間違ってます!面接官がやりがちアンコンシャス・バイアス<お役立ち資料付き>』)

6.転職希望者の目線になって臨む

面接では転職希望者の本当の想いを聞き出さなければ、自社が求める人材像に当てはまるのかが見極められません。本心を引き出せるよう、転職希望者の目線に立った面接を行いましょう。

転職希望者の目線になる意識を持って会話を進めることで、転職希望者の方の力が抜け、その人本来の姿が少しずつ見えてくるはずです。転職希望者との良好な関係を築いてから面接を進めると、考え方や振る舞いなどを引き出すことができ、より質の高い面接内容につながります。

(参考:『今日から使える面接官マニュアル【質問事項はこれでOK】』)

面接の事前準備で必要なこと

入念な事前準備は、面接をスムーズに行うためのキーポイントです。応募者と接する前にできることは数多くあるため、しっかりと時間を取って準備を進めましょう。

●社内の意見や基準を明確にする
●職務経歴を事前に確認しておく
●自社の魅力や採用理由を整理する
●質問事項や評価基準を準備する
●面接スキルを向上させる

以下の資料では、面接に必要なプロセスをまとめています。よりスムーズに準備を進められますので、こちらの業務テンプレもご活用ください。

社内の意見や基準を明確にする

面接を行う前に、まずは自社がどのような人材を求めているのかを正しく把握しておかなければなりません。面接時にはできる限り客観的な採用基準に照らし合わせて判断する必要があるため、準備段階で採用のものさしを明確にすることが重要です。

また、専門的なスキルが求められる採用では、現場の担当者にも丁寧に意見を聞いておきましょう。面接官が複数いる場合は、全員の認識を擦り合わせておくことも大切です。

職務経歴を事前に確認しておく

履歴書や職務経歴書を通して、面接を受ける人材のことも事前に理解しておく必要があります。面接の場で応募書類を見返す頻度が多いと、転職希望者から見れば「自身に関心がない」と映ってしまうので、あらかじめ目を通しておくことをおすすめします。

なお、以下では、転職希望者をより詳細に理解するために、面接でチェックしたいポイントを年代別にまとめた資料をダウンロードいただけます。職務経歴書の内容に対する面接での質問例をまとめておりますので、ぜひご覧ください。

自社の魅力や採用理由を整理する

企業の顔としての役割を考えると、面接官には自社の魅力を客観的かつわかりやすく伝えられる技術も求められます。転職希望者から魅力的な会社だと感じてもらうためには、「事業内容」や「ビジョン」「具体的な業務内容」などをきちんと説明できるように準備しておくことが大切です。

また、後ほど詳しく解説しますが、面接時には自社について説明するステップもあるため、必要に応じて資料も用意しておくと良いでしょう。

多忙な人事・採用担当者に向けて、自社の課題と実情をまとめる採用ピッチ資料や、自社の魅力や訴求ポイントを整理できるシートをご用意しました。いずれもフォーマットですので、面接前の準備にご活用ください。

採用ピッチ資料について詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『採用ピッチ資料とは?理想の構成やつくり方、効果的な活用方法を解説』)

質問事項や評価基準を準備する

面接で質問することはあらかじめ精査した上である程度まとめておき、評価基準も具体化しましょう。評価基準として、主体性や協調性、コミュニケーション能力などの評価基準を設けておくと、面接官同士の判断にずれがなくなり、適切に人材を見極められます。

反対に、評価基準がなければ、面接官同士が定量的に判断できない要素にずれが生じやすく、希望に合う人材を採用できない可能性があります。

評価基準を設定する際は、項目別にチェックポイントを具体化しましょう。
例えば「主体性:自主的に課題解決に向けた行動が取れる」「コミュニケーション能力:質問の意図を理解した上で回答できる」などです。

自社が求める人材を採用するには、評価基準を事前に設定するだけでなく、社内で高い成果を残している従業員に共通する行動特性を洗い出すことも重要です。

以下のコンピテンシーモデル(※)シート・面接評価シートを活用して、より質の高い面接を実施しましょう。
(※)コンピテンシーモデル・・・社内で成果を上げている従業員(ハイパフォーマー)

コンピテンシーモデルについて詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『コンピテンシーモデルとは?目的や活用例・作成方法を解説』)

面接スキルを向上させる

面接官の力量は担当者自身の素質だけでなく、訓練の質や度合いによっても左右されます。面接の質を向上させるためにも、あらかじめ研修を行い、担当者のスキルを磨く機会をつくることが重要です。

詳しいトレーニング方法については後ほど解説しますが、代表的なものとして面接官同士によるロールプレイングが挙げられます。ロールプレイングとはチームメンバーを応募者に見立てて模擬面接を行い、当日の流れや質問、受け答えなどを細かくチェックしていく方法です。

実際にシミュレーションすることで、面接をスムーズに進行するためのコツや話しやすい雰囲気づくりを学べるとともに、自分でも把握していなかった落とし穴に気付ける可能性もあります。採用に携わるメンバーで取り組みながら、チーム全体でスキルの底上げを進めていく形が理想です。

「とは言っても、面接官に求められるスキルがわからない…」という人事・採用担当者には、dodaが展開する「doda面接官トレーニング」がお勧めです。以下のURLからダウンロードの上、面接官のスキルアップにお役立てください。

面接官トレーニングについて詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『採用を成功に導く面接官の5つのトレーニング方法と実施するメリット』)

面接の基本的な流れ

会社ごとに違いはありますが、一般的に採用面接は次のような手順で進めます。

1.アイスブレイク
2.面接官の自己紹介や会社説明
3.応募書類の事実確認
4.志望動機やキャリアの確認
5.応募者からの質問
6.事務的な項目の確認

面接時のやり取りが極端に脱線しないために、会話には柔軟性を持たせながらも、おおまかな手順に沿って進めていくことが大切です。ここでは、上記の各ステップについて、主な内容と質問例を見ていきましょう。

STEP1.アイスブレイク

アイスブレイクとはリラックスした雰囲気をつくり、応募者の緊張をほぐして本音を引き出しやすくするための工程です。目的はあくまでもその場の緊張を和らげることにあるため、会話のテーマとしては直接的に採用に関わりそうな内容よりも、当たり障りのない話題が適しています。

志望動機や応募者の経歴に関する質問は後のステップに任せ、ここでは天気や当日の来社方法のような無難な話題をピックアップしましょう。具体的な質問例としては、次のようなものがあります。

・あいにくの雨ですが、今日は電車で来られましたか?
・当社まで来られるのに道に迷われませんでしたか?
・就職活動でお忙しいでしょうが、何か息抜きはできていますか?
・会社説明会はいかがでしたか?
・昨日はよく眠れましたか?

アイスブレイクでは応募者も面接官の反応や人柄を注意深く観察しているため、柔らかい笑顔と声色を心がけると良い印象を与えられます。

アイスブレイクの話題に迷ったときに役立つ質問リストを無料公開しています。
効果的な質問や避けるべき話題のポイントもまとめていますので、ぜひチェックしてください。

アイスブレイクについて詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。

(参考:『【面接官必見!】知らないと失敗しちゃうかも?有意義な面接のためのアイスブレイクとは~質問例付き~』)

(参考:『ダメ面接官のやりがちNGアイスブレイク質問例 ~すぐ使えるトーク付~』)

STEP2.面接官の自己紹介や会社説明

まず面接官から自己紹介をしましょう。名前や部署、担当業務などを簡単に伝え、アイスブレイクへと移ります。

アイスブレイクの後はすぐに質問を始めるのではなく、自社の情報を十分に把握してもらうために会社説明から始めましょう。

近年の就職活動では、一度にさまざまな企業に応募するのが主流であるため、転職希望者から見れば自社も候補の一つに過ぎません。特に一次面接では、自社の魅力をきちんと理解してもらうためにも、ある程度の時間を取って丁寧に説明することが大切です。

具体的には、次のような事柄が挙げられます。

【面接で伝える会社説明項目の例】
●会社沿革
●事業内容
●企業風土
●今後のビジョン
●求めている人材

細かなスケジュールなどの事務的な内容は最後に伝えるため、ここでは理念やビジョンといった大きな枠組みで自社をアピールしましょう。

STEP3.応募書類の事実確認

自社の説明を終えたら、具体的に転職希望者の経歴や人となりについて触れていくこととなります。まずは事前にチェックした履歴書や職務経歴書の内容に沿った質問で、記載事項に誤りや誇張がないかを確認しましょう。

また、書類には記載しきれない有益な情報があるかどうかも、このステップで確かめることが大切です。具体的な質問例としては、次のようなものが挙げられます。

・前職を通して得られた成果と、その成果を得るためにしたアプローチについて教えてください
・担当していた業務でどのような工夫をしていましたか?
・リーダーとして業務を進めたご経験はありますか?
・会社から与えられていた目標はどのような内容でしたか?
・〇〇の業務について、どのような知識やスキルをお持ちですか?
・ご自身の経歴や経験を踏まえて、当社を志望された理由を教えてください
・5年後、10年後のキャリアビジョンを教えてください

過去の経験やスキルについて質問するだけでなく、自社でどのように活かしていきたいと考えているのかも確認できると、採用を検討する上で情報の有益性が高まります。

また、応募者の経歴や今後のビジョンと自社の状況を照らし合わせることは、採用時のミスマッチを防ぐ意味でも重要なプロセスです。

STEP4.志望動機やキャリアの確認

応募書類に関連するステップが済んだら、転職希望者に対して事前に用意した質問の中から、ふさわしいと考えられるものを投げかけます。特に確認したい項目は、志望動機やこれまでのキャリアです。

質問のステップは特に自由度が高く、幅広い角度からのアプローチが考えられるため、質問例を参考にしながら最適なものをピックアップする形が適切です。

【入社意欲に関する質問】
・転職を考えた理由はなんですか?
・転職のタイミングを現在に決めた理由はありますか?
・5年後にはどのような仕事をしていたいですか?
・自由に選べるとしたら、どのような会社で働きたいですか?
・当社に興味を持った理由を教えてください。
・当社にはどのような印象をお持ちですか?
・当社では具体的にどのような業務に携わってみたいですか?
・会社選びで重視していることを教えてください。
・転職を通じて、当社に期待することはどのようなことですか?
・当社でどのような経験、スキルを身に付けたいですか?

なお、転職希望者の年齢や前職の業務内容などによって、適切な質問内容は異なります。

より精度を上げた質問で多角的な意見を引き出したい方は、以下3つのシートからさまざまな場面に活かせる質問内容をご確認ください。

STEP5.応募者からの質問

面接官からの質問がひと通り済んだら、必ず応募者からも質問できる時間を設けることが大切です。面接時には応募者の疑問や不安を解消することも大切なポイントになるため、応募者からの自由な発言も受け付ける必要があります。

その上で、単に「気になる点があれば質問してください」とするよりも、「後ほど質疑応答のお時間を設けてあります」と伝えたほうが、応募者からの質問を引き出しやすくなります。

6.事務的な項目の確認

応募者からの質疑応答が済んだら、事務的な項目の伝達と確認を行い、面接は全て完了です。事務的な項目については、応募者に不安が残らないように心がけ、できる限りわかりやすく明瞭に伝えることが大切です。

事務連絡の具体的な内容としては、入社日や勤務体制、シフト、内定後のスケジュールなどが当てはまります。また、応募者が複数の会社で選考を受けているケースも多いため、合否連絡の目安日程や手段なども明確に伝えておきましょう。

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面接でよく使われる質問

面接時の質問は、転職希望者一人ひとりに合わせた内容をピックアップすることが重要です。ここでは、さまざまな視点から面接に活かせる質問を紹介します。

確認したい目的 質問例
志望動機 ・ 志望動機を教えてください
・ どのような業務内容に興味を持っていますか?
・ 数ある会社の中から弊社を選んだ理由は何ですか?
・ 弊社の印象を教えてください
スキルや経験の有無 ・ これまでの職歴の中で実績を残したものを教えてください
・ 新たな業務に取り組むにあたって、どのようにスキルを習得してきましたか?
・ 短期間でプロジェクトを成功させる場合、どのようにタスクを優先して進捗を確保しますか?
・ 業務にあたる際、どのような目標を持って取り組んでいましたか?
人柄や価値観 ・ 周囲の方から、どのような人物だと評価されていますか?
・ 一番の強みは何ですか?弊社の業務にどのように活かせますか?
・ チームで仕事をする上で、どのような役割につくことが多いですか?
・ 仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください
ストレス耐性 ・ これまでに大きな挫折をしたことがありますか? その際に、どのように解決しましたか?
・ ストレスを感じるのはどのようなときですか?
・ トラブルにあったときにはどのように対処しますか?
・ 前職、学生生活でもっとも負担に感じたことは何ですか?
今後のキャリアプラン ・ 今後のキャリアプランを教えてください
・ 弊社で叶えたいゴールはありますか?
・ 5年後・10年後になりたい姿を教えてください
・ 現時点で挑戦したいと考えていることはありますか?

上記に挙げた質問はあくまでも一例であり、転職希望者の全てを可能な限り引き出すには、面接内容に合わせて柔軟に質問する能力が求められます。

より詳しい質問内容が知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

(参考:『採用面接で使える質問75選!本音を引き出すポイントと注意点【面接質問シート付】』)

面接官が転職希望者に聞いてはならない質問の例

転職希望者に合わせて質問する必要はありつつも、聞いてはならない質問があることも押さえておかなければなりません。厚生労働省は、採用選考の基本的な考え方として、「転職希望者の基本的人権の尊重」と「適正・能力に基づいた採用選考」を掲げています。

厚生労働省の考え方に基づいた公正な採用選考を行うためには、転職希望者の適正や能力に関係ない項目で合否を判断しないことが大切です。

以下にまとめたこれらの項目を、面接で聞くことはもちろん、応募に関わる書類に記入させることも厳禁です。

【転職希望者に聞いてはならない質問】

転職希望者本人に関わらない事項 思想や心情に関わる次項
・ 本籍、出生地に関すること
・ 職業や続き柄など、家族に関すること
・ 住宅状況に関すること
・ 生活環境や家族環境に関すること
・ 宗教に関すること
・ 支持政党に関すること
・ 人生観や生活信条などに関すること
・ 尊敬する人物に関すること
・ 思想に関すること
・ 労働組合や学生運動などの社会運動に関すること
・ 購買新聞や雑誌、愛読書などに関すること

面接での質問内容を適切なものとするためにも、上記の項目を念頭に置いた上で、適正と能力に関連する事項のみを質問できるように、あらかじめ質問内容を決めておきましょう。

(参照:厚生労働省『公正な採用選考の基本』)

面接で聞いてはいけない質問・会話のNG行為について詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『面接で聞いてはいけない質問・会話のNG行為とは?リスク回避のための具体的な対策』)

面接官として避けたいNG行動

企業のイメージに直結する面接官は、質問内容だけでなく面接中の振る舞いにも気を配る必要があります。面接はただでさえ緊張する場面なので、転職希望者に圧を与えるような言動は控えてください。

具体的には以下に挙げるような行動です。

●腕や脚を組む
●面接官の自己紹介をせずに面接を始める
●アイスブレイクをせずに本題の志望動機から聞く
●転職希望者の苗字ではなく名前で話しかける
●転職希望者の目を見て話さない
●お礼を言わずに面接を終える

面接開始時は、転職希望者を尊重している姿勢が伝わるように、面接官の自己紹介から始め、
応募への感謝も伝えましょう。アイスブレイクを通じて転職希望者の緊張をやわらげた上で、適切な振る舞いで質問を進めていくことが大切です。

また終了時には、感謝を伝えるとともに「採用結果は〇日までに連絡します」など、面接後のスケジュールも案内すると志望度を高められるでしょう。

自社に合った転職希望者を見極めるコツ

自社が希望する人材を採用するには、面接の質を高めて内容にこだわることが肝要です。

具体的に、以下のコツに基づいて面接を進めましょう。

●採用基準に基づいて質問する
●質問のタイプを使い分ける
●質問を掘り下げる

採用基準に基づいて質問する

面接前に自社が求める人材像を明確にし、その基準に沿う人材を採用できるような質問内容を検討します。採用基準を設けていないと、面接官ごとの評価に一貫性がなくなりミスマッチの採用につながる恐れがあるためです。

転職希望者に求めるスキルや価値観、人柄、行動特性などの採用基準は、できる限り明確に定めることをお勧めします。さらに優先順位を付けて、優先度の高いものから順に質問していきましょう。

なお、優先順位を意識した結果、必要な質問内容が抜けてしまわないよう、面接全体の時間配分にも気を配ることが大切です。

採用基準について詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『採用基準とは?具体的な設定手順や自社にマッチした人材の見極め方|テンプレ付』)

質問のタイプを使い分ける

採用要件に合致した人材を採用するには、面接で転職希望者の本音を引き出す必要があります。その際に重要となるものが、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分けです。

オープンクエスチョンとは、「はい」や「いいえ」では答えられない多角的な質問のことで、クローズドクエスチョンは反対に「はい」や「いいえ」で答えられる質問を指します。

面接では、答えが限定されないオープンクエスチョンを適宜使って、転職希望者の考えを引き出しましょう。

【オープンクエスチョンの例】
・入社後のキャリアプランを教えてください
・前職で得たスキルを弊社でどのように活かせますか?
・これまでに特に大変だった業務を教えてください

このようなオープンクエスチョンを受けた転職希望者は、自分の考えを自由に話す必要があるため、コミュニケーション能力や表現力などを見極めることに役立ちます。

なお、オープンクエスチョンだけを使った面接は、転職希望者の負担が大きくなるため、適切にクローズドクエスチョンを挟む工夫も必要です。

質問を掘り下げる

面接では、一問一答にならないよう、転職希望者の回答を掘り下げるような追加質問を適切に行いましょう。転職希望者の回答にしっかりと耳を傾けて、深掘りする質問を投げかけると、根底にある本音や考え方など、その人材の思考パターンを把握することにつながります。

例えば、転職希望者が自身の長所について「責任感が人一倍強いことです」と答えた場合、「なぜそう思うのですか」「裏付ける具体的なエピソードはありますか」と、さらに問いかけます。こうした質疑応答を通じて、論理的思考力や言語化能力なども判断できるでしょう。

転職希望者は、履歴書や職務経歴書には記載されていないエピソードを多く保有しているはずです。限られた時間の中で転職希望者を深く理解するためには、質問内容の掘り下げがとても重要な要素といえます。

面接官が注目したい5つのポイント

ここでは、面接を行うにあたって面接官が注目したい5つのポイントを取り上げます。

1.面接時間に遅れていないか
2.身だしなみは適切か
3.面接前後の振る舞いはどうか
4.自社への関心や入社意欲はどうか
5.コミュニケーション能力は十分にあるか

1.面接時間に遅れていないか

まず確認したいことは、面接時間にきちんと間に合っているかどうかです。特別な事情なく面接開始予定時間に遅れている場合、時間管理能力や誠実さを有した人材とはいえません。

遅れている場合は、メールや電話での事前連絡の有無が重要です。連絡がきていた場合は、謝罪や理由の内容に誠意が込められているかどうかを確認しましょう。

また、オンライン面接の場合は、インターネットのつながりが良好であり、周囲の声や音が静かな環境から参加していることが評価ポイントです。

時間への意識や、参加する環境の配慮などは、入社後の業務への取り組み姿勢にも直結する判断材料になります。

2.身だしなみは適切か

面接時の身だしなみは、転職希望者が持つビジネスマナーの表れです。清潔感のあるスーツを着用した上で髪型が整えられている、さらに必要のない装飾品を付けていないと、好印象でしょう。

業界によってはカジュアルスタイルが許容されることもあるため、自社の業界・募集職種とのバランスも加味して見極める必要があります。

3.面接前後の振る舞いはどうか

転職希望者の印象は、面接中だけでなく前後の振る舞いでも判断できます。

例えば、対面での面接であれば受付時のあいさつや、待ち時間の姿勢などです。日程調整連絡での応対や面接終了後のひと言など、オンラインでの面接でも判断できることはあります。

面接終了後の感謝の言葉が自然に出る転職希望者は、入社後に既存の従業員と良好な人間関係を築けるでしょう。前後を含めた面接全体を通して、丁寧な振る舞いがなされているかどうかを意識することがポイントです。

4.自社への関心や入社意欲はどうか

自社に対する関心や入社意欲が高いほど、入社後に活躍しやすく定着率も高い傾向にあるといえます。

そのため自社が希望する人材を採用するには、企業研究の精度を適切に把握する必要があるのです。

きちんと企業研究ができている転職希望者は、理念や事業内容といった自社ならではの具体的な内容が志望動機や自己PRに含まれています。入社意欲が高いと、転職希望者自身の気持ちが前面に出た内容となっているはずです。

反対に企業研究がそれほどなされていない場合は、どの企業にも当てはまるような内容で熱意も伝わりません。

自社の風土や価値観に合致する人材かどうかを、表面的な志望動機でなく転職希望者から出る言葉や熱意で見極めましょう。

5.コミュニケーション能力は十分にあるか

仕事では社内外問わずさまざまな人とコミュニケーションを取る機会があるため、円滑にやり取りできるコミュニケーション能力が欠かせません。

上司への報連相や、顧客への伝え方など、社会人として必要なコミュニケーション能力を有しているかどうかは確実に確認しておきたいところです。

そのため、面接では転職希望者の話す内容だけでなく、表情や声のトーン、聞く姿勢などにも気を配りましょう。面接官からの質問に適切に回答できていれば、入社後もスムーズにコミュニケーションを取れる可能性があると評価できます。

あえて事前に準備できない質問を投げかけて、臨機応変な対応力や根底にある本音を見極めることも手です。

オンライン面接を行うときの注意点

リモートワークや非対面型のコミュニケーションツールの普及に伴い、採用でオンライン面接を導入する企業も少なくはありません。

オンライン面接は応募者の負担を軽減させられるのがメリットである反面、対面型の面接にはない注意点もいくつかあります。

●丁寧にアイスブレイクを行う
●通信環境について確認をする
●ノンバーバルコミュニケーションを意識する

ここでは、オンライン面接を行ううえで注意点を紹介します。

丁寧にアイスブレイクを行う

オンライン面接は直接表情や声色などを確認できる対面での面接と比較して、どうしても緊張がほぐれにくいとされています。応募者によっては、ビデオ通話の雰囲気に慣れていないケースも考えられるため、対面での面接時よりもアイスブレイクの時間は長めに取ることがコツです。

また、通信環境のトラブルなどに見舞われる可能性もあるため、通常の面接よりも時間にゆとりを持たせておくこともポイントです。

通信環境について確認をする

オンライン面接時には、音声や画像など、通信状態に関するトラブルが起こるケースも想定しておく必要があります。トラブルが起こったタイミングによっては、応募者から通知しにくいこともあるでしょう。

例えば、面接官が自社の説明を行っているときに音声や映像が途切れてしまった場合、応募者のほうから話を遮って止めることは難しい面があります。

そのため、面接官側から「音声は聞き取りにくくありませんか?」「画面はきれいに見えていますか?」など、適宜確認を取りましょう。

また、オンラインツールに慣れていない応募者がいることも想定して、あらかじめメールなどで使い方の案内を行っておくこともポイントです。

ノンバーバルコミュニケーションを意識する

非対面型で面接を行う場合は通常よりも表情や仕草が伝わりにくいため、ノンバーバルコミュニケーション(非言語によるコミュニケーション)を大事にする必要があります。特に重要となる点が「カメラの目線に気を付ける」ことです。

履歴書や職務経歴書などを見ながら応募者の話を聞いていると、面接官側には悪気がなくても、応募者には関心が薄いように映ってしまう場合があります。

そのため、カメラと目線が合うように細かくセッティングしておき、手元の書類を見る場合でも定期的に目線を送りましょう。

また、相槌や振る舞い、声色の変化なども、対面より多少オーバーなくらいが伝わりやすいとされています。

オンライン面接について詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『オンライン面接を徹底解明!メリット・デメリットや導入にあたっての注意点』)

面接官のスキルを向上するトレーニング方法

ここまで見てきたように、面接官は企業で重要な役割を担う存在です。求められる力量や知識の水準は高く、面接時には注意しなければならないポイントも多いため、きちんと訓練する場を設けることが大切です。

面接官のスキルを磨くトレーニング方法について、「ロールプレイング」と「講師による講義学習」を紹介します。

ロールプレイング 講師による講義学習
概要 ・ 採用チームのメンバーが面接官と応募者役に分かれて、実際の面接に近い環境で模擬面接を行う方法
・ 面接に必要なスキルを体得していくことが狙い
・ 人事・採用分野に精通した外部講師に、広義や講習を行ってもらう
・ 座学によって吸収した知識を身体に染み込ませる方法
メリット ・ 応募者役の人からのフィードバックで、自分を客観的に判断できる
・ 現状と課題を明確に把握して、効率的にスキルアップを目指せる
・ 面接の基礎的な知識から、実践的な内容まで学べる
・ 多くの面接官がまとめて習得できるため、学習効率が高い

ロールプレイングは、アイスブレイクや面接官からの質問、応募者からの質問など、それぞれのステップを実践できるため、特に不慣れな担当者が面接官になる場合にお勧めです。

講師による講義学習では、面接の目的や面接官の役割、必要な準備、評価方法など、面接に関わるさまざまなことを学べます。ロールプレイングとセットで行ってくれることもあるため、自社の実情に合わせて活用を検討してみることが良いでしょう。

面接官の育成は、採用活動全体の質を高め、理想の人材を確実に見極めるための第一歩です。
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面接官トレーニングについて詳しく知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください。
(参考:『採用を成功に導く面接官の5つのトレーニング方法と実施するメリット』)

まとめ

面接では、応募者を見極めて自社とのミスマッチを防ぐことが大切です。

本記事の内容を参考に、「どのような人材が欲しいのか」、「どのように評価するか」について社内で共通の基準をつくり、優先順位を定めるところから始めましょう。

また、応募者に好印象を与えることも重要です。面接官を務める上での服装や心構え、NG行動についても把握し、読書やセミナー参加等のトレーニングも積極的に行うことで最適な人材獲得につなげましょう。

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(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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