ストレス耐性とは?高い人・低い人の特徴と高めるポイント、注意点を解説

ストレス耐性とは?高い人・低い人の特徴と高めるポイント、注意点を解説

d's JOURNAL
編集部

「ストレス耐性」とは、ストレスを受けても心身の安定を保つ能力のことです。十分な能力や経験のある従業員でも、ストレス耐性が低いと生産性の低下やメンタルの不調を招き、最悪の場合、離職につながる恐れがあります。

企業の持続的な成長には、ストレス耐性への理解を深め、従業員が安心してはたらける環境づくりを行うことが不可欠です。

本記事では、ストレス耐性の基本から、企業に求められる対応策までを詳しく解説します。

まず全体像を押さえたうえで読み進めたい方は、レジリエンストレーニングのポイントをまとめた資料をご活用ください。施策検討の前提整理に使える内容ですので、資料をダウンロードしてご確認ください。

ストレス耐性を高める施策を考える前に、企業としてのストレスマネジメントの全体像を押さえておくと、取り組みの優先順位が整理しやすくなります。
(関連記事:ストレスマネジメントとは|やり方・効果と具体的な施策を解説

ストレス耐性とは


ストレス耐性とは、仕事や人間関係などによるストレスに直面した際、心身への負担を過度に高めることなく、状況を冷静に受け止めて対処できる能力を指します。ストレス耐性が高い人は、強いプレッシャーの中でも冷静さを保ち、問題の解決に向けて適切に対処できます。

一方で、ストレス耐性が低い人の場合、疲労や不安が蓄積しやすく、パフォーマンスの低下やメンタルの不調につながることも少なくありません。ただし、ストレス耐性は環境や経験、日々の対処の積み重ねによって高められます。

ストレス耐性を正しく理解するためには、関連する用語や概念との違いを知っておくことが重要です。混同しやすい言葉や概念を整理することで、ストレス耐性の本質がより明確に見えてきます。

【ストレス耐性と似た言葉・概念との違い】
●ストレス耐性・ストレッサー・ストレス反応の違い
●レジリエンスとの違い

ストレス耐性・ストレッサー・ストレス反応の違い

ストレス耐性と関連する言葉に、「ストレッサー」「ストレス反応」があります。

詳細は、以下の表をご確認ください。

【ストレス耐性・ストレッサー・ストレス反応の違い】

ストレス耐性 ストレスを受けた際に心身のバランスを大きく崩さず、適切に対処できる力
ストレッサー 心身にストレスを引き起こす原因や外部からの刺激
ストレス反応 ストレッサーによって引き起こされる心身の変化や不調

ストレッサーは、ストレスの原因となる出来事や外部からの刺激を指し、ストレス反応はそれによって生じる不安や疲労などの心身の変化を意味します。

一方、ストレス耐性はストレッサーやストレス反応に対して、心身のバランスを保ちながらどのように対処できるかを示す能力です。

こうした意味合いの違いを正しく理解しておくと、ストレスを感じる仕組みを把握でき、職場での対策を検討する際に役立てられます。

レジリエンスとの違い

ストレス耐性と併せて注目される概念として、「レジリエンス」が挙げられます。

レジリエンスは、回復力や立ち直る力を意味し、ストレスや困難な状況を経験したあと、「どれだけ早く心身の状態を回復できるか」に関わる能力のことです。一方、ストレス耐性はストレスを受けている最中に心身のバランスを保ち、適切に対処する力を指します。

両者は異なる概念ですが、レジリエンスが高いほどストレスからの回復が早く、ストレス耐性も高い傾向があります。

レジリエンスの意味や、ビジネスにおける活かし方を詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
(関連記事:レジリエンスとは?ビジネスでの意味や高い人の特徴、高める方法を解説

企業がストレス耐性を重視する背景と人事への影響

近年、はたらき方の多様化や業務の高度化により、従業員が受けるストレスは増加傾向にあります。こうした中、企業の安定した生産性を維持し、離職を防ぐためには、従業員一人ひとりのストレス耐性に目を向けることが不可欠です。

以下では、企業がストレス耐性を重視する背景と人事への影響について、制度・組織運営・人材マネジメントの観点から解説します。

【企業が注目したいストレス耐性の重要項目】
●ストレスチェック制度の義務化と企業対応
●離職率・生産性・エンゲージメントへの影響
●採用・配置・育成におけるストレス耐性の重要性

ストレスチェック制度の義務化と企業対応

労働安全衛生法の改正により、常時50人以上の従業員が勤務している事業所では、ストレスチェック制度の実施が義務化されています。この制度は、従業員自身がストレス状態を把握し、メンタルの不調を未然に防ぐことを目的としたものです。

企業には、単にストレスチェックを実施するだけでなく、結果を職場環境の改善や人事施策に活かす取り組みが求められます。具体的には、医師による面談を行ってアドバイスを受けられる環境を整えるほか、状況に応じて業務内容の変更や労働時間の調整といった対応が必要になります。

(参照:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』p4)

離職率・生産性・エンゲージメントへの影響

ストレス耐性は、離職率や業務の生産性、従業員エンゲージメントと密接に関係しています。

心理的な負担が蓄積することで、仕事に対する意欲が薄れ、結果として離職につながるケースも少なくありません。また、過度なストレスを抱えた状態が続くと、集中力や判断力が低下し、業務効率の悪化を招きます。

加えて、ストレス耐性は従業員の仕事に対する熱意や組織への愛着といったエンゲージメントにも影響を与えます。無理なくはたらける環境であれば、従業員が前向きに業務に取り組めるだけでなく、チームの連帯感や成果意欲も高まるでしょう。

こうした職場づくりは、従業員の定着率を高め、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

(参考:『従業員エンゲージメントとは|効果的な取り組みと事例・向上のメリットを解説』)

採用・配置・育成におけるストレス耐性の重要性

採用や人材配置、育成の場面では、ストレス耐性が重要な判断材料となります。業務内容や職場環境によって求められるストレスへの向き合い方は異なるため、個人の特性を踏まえて採用・配置を行うことで、ミスマッチや過度な負担を防げるでしょう。

さらに、ストレス耐性や対処傾向は入社後のパフォーマンスや定着率にも影響を及ぼします。そのため、入社後の育成過程でもストレスへの対処力を高める支援を行うことで、変化の多い環境にも柔軟に対応できる人材を育てられます。

ここまでの内容を踏まえて、自社で取り組む優先順位や進め方を整理したい方は資料をご活用ください。レジリエンス強化のポイントを体系立ててまとめていますので、資料をダウンロードしてご確認ください。

ストレス耐性を構成する6つの要素

ストレス耐性を構成する6つの要素

ストレス耐性は一つの要素で決まるものではなく、ストレスの感じ方や対処の仕方、これまでの経験など、複数の要素が組み合わさって形成されます。

ここからは、ストレス耐性を構成する下記の要素について詳しく解説します。

●ストレスに対する容量
●根本の処理能力
●感知能力
●転換能力
●回避能力
●経験

ストレスに対する容量

容量とは、ストレスをどの程度受け止められるかを示す心身の許容範囲のことです。容量が大きい人は、一定のストレスを受けても心身のバランスを保ちやすく、目立った不調が表れにくい傾向があります。

一方、容量が小さい人の場合、わずかな刺激でも不安や疲労を感じ、行動や表情にも影響が表れます。ただし、この容量は常に同じわけではなく、体調や環境、精神状態によって変動する点を理解しておくことが大切です。

根本の処理能力

ストレスの原因を表面的に捉えるのではなく、本質を見極めて解決へと導く力を根本の処理能力といいます。これは、問題が起きた際に冷静に状況を整理し、優先順位を付けて対応することで、ストレスの拡大を防ぐ能力のことです。

例えば業務過多の場合、残業で乗り切るだけでなく、業務の取捨選択やプロセス改善に取り組むことで将来的な負担を減らせるでしょう。また、根本の処理能力が高い人ほど、予期せぬトラブルにも柔軟に対応できるという特性もあります。

感知能力

感知能力とは、日常の出来事に対する反応や心身に表れる変化から、「これはストレスだ」と気付く能力のことです。感じ方には個人差があり、些細(ささい)な刺激でも強く反応する人もいれば、負荷がかかっていても認識しにくい人もいます。

一般的に感知能力が低い人ほどストレスを自覚しにくく、耐性は高い傾向にある一方で、気付かないうちに負荷が蓄積して、突然心身の不調に陥る場合もあります。

転換能力

転換能力は、ストレスを感じる出来事や状況を別の視点から捉え直し、ネガティブな状況を前向きに切り替える能力です。

同じ失敗やトラブルでも、単なるマイナスとして受け取るか、学びや成長の機会としてプラスに捉えるかで、感じるストレスの大きさは変わります。

例えば、仕事でミスをしても「経験を積めた」「次に活かせる」と考えられれば、前向きな意欲につながります。この能力が高い人ほど、困難な状況でも学びを得て、ストレスを成長のエネルギーへと変えられるでしょう。

回避能力

ストレスの原因となる状況や人間関係から、適切な距離を保つ力が回避能力です。

この能力が高い人は、トラブルの兆候を察知して距離を置くことで、心身への負荷を軽減できます。こうした回避能力を発揮するためには、物事を割り切って考えられる柔軟さや、注意力・判断力が十分に保たれていることが求められます。

ただし、過度にストレスを回避し続けると問題が先送りになり、それが新たなストレス要因になる可能性もあるため注意が必要です。

経験

ストレス耐性に関する経験とは、過去にストレスフルな状況に直面し、それに対処してきた実績のことを指します。同じようなストレスに繰り返し向き合い、対応方法を学ぶことで、似た状況でのストレスに強くなり心身への影響が軽くなります。

例えば、商談での失敗やメンバーとの意見対立など、過去の体験で学んだ対処法は、同様の場面に対応する際の助けとなるでしょう。ただし、失敗の経験が強く心に残ったり、負担が続いたりすると、ストレスに弱くなることもあります。

ストレスの主な原因

従業員のストレス耐性を高めていくには、そもそもストレスの原因が何であるかをきちんと把握しておくことが大切です。

ここでは、ストレスの原因について解説します。

【ストレスの主な原因】
●物理的ストレッサー
●心理的ストレッサー
●社会的ストレッサー
●環境的ストレッサー

物理的ストレッサー

物理的ストレッサーとは、温度や湿度、騒音、強い光など、外部環境が身体に直接負荷をかける要因のことです。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

【物理的ストレッサーの例】
●工場での高温や騒音
●建設現場での極端な温度環境
●オフィスの空調不良
●長時間のディスプレー作業(VDT作業)

これらによるストレスを受けている期間が長くなると、集中力が乱れるだけでなく、疲労感や不快感が増して作業効率の低下を招くなど、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。

心理的ストレッサー

怒り・悲しみ・不安・恐れ・焦りなど、さまざまな感情から生じるストレスのことを心理的ストレッサーと呼びます。現代社会では、仕事上のプレッシャーや職場での人間関係、将来への不安などが代表的な心理的ストレッサーといえます。
心理的ストレッサーの具体例は、以下の通りです。

【心理的ストレッサーの例】
●上司の期待に応えられない不安
●同僚との意見対立やコミュニケーションの摩擦
●キャリアや将来への不安
●プライベートでの人間関係や家庭の問題

上記のような心理的な負荷が長期間続くことで、集中力や判断力の低下、また睡眠障害や体調不良などを引き起こし、日常生活や業務に支障を来す恐れがあります。

社会的ストレッサー

社会的ストレッサーは、職場や家庭、友人など、日常の人間関係や社会生活から生じます。前述の心理的ストレッサーと重なる点が多く、両者は明確に分離されるわけではありません。

これらのストレスは、心理的な負担にも関係しており、集中力や判断力の低下を引き起こすことも多く見られます。
社会的ストレッサーの例は、以下をご確認ください。

【社会的ストレッサーの例】
●職場での評価や人事に関わる決定
●解雇やリストラ、転職のプレッシャー
●仕事と育児・介護との両立による負担
●恋愛や離婚、人間関係でのトラブル
●収入や生活に関わる不安

こうした社会的ストレッサーは、集中力や判断力の低下に加えて、疲労や不安感の増大などにもつながります。

環境的ストレッサー

環境的ストレッサーは、季節ごとの気温差や光の強さ、満員電車や外出時の混雑など、生活や行動の状況から生じるストレスのことです。
日常生活では、次のような場面が該当します。

【環境的ストレッサーの例】
●猛暑や厳しい寒さなどの気温変化
●強過ぎる太陽光や暗過ぎる照明
●満員電車や人混みでの移動
●道路渋滞や公共交通機関の遅延

前述した物理的ストレッサーと重なる要素もありますが、環境的ストレッサーは「行動や生活においてストレスとなる状況や場面」に焦点を当てています。つまり、身体への直接的な刺激ではなく、日常の環境や社会的背景に起因するストレスという視点で分類されます。

こうした刺激が継続すると、疲労感やイライラ感が増し、集中力や作業効率の低下に結び付きます。

ストレス耐性が低い従業員に見られる特徴


ストレス耐性には個人差があり、同じ状況でも受ける影響の大きさは人によって異なります。

以下では、ストレス耐性が低い従業員にどのような特徴があるのかを具体的に解説します。

【ストレス耐性が低い従業員の特徴】
●責任感が強く一人で抱え込みやすい
●几帳面(きちょうめん)で完璧主義になりやすい
●周囲に合わせ過ぎてしまう
●気持ちの切り替えが苦手である
●自己否定的な思考パターンを持ちやすい
●ネガティブな先入観を持ちやすい

責任感が強く一人で抱え込みやすい

責任感が強い従業員の場合、仕事や人間関係で生じたトラブルを「自分で解決しなければ」と考え、一人で抱え込みやすい傾向が見られます。他人に相談する機会が少なく、自分だけで対処しようとするため、過度なプレッシャーがかかることも少なくありません。
その結果、精神的な疲労や不安が蓄積し、強いストレスを感じやすい状態になります。

また、失敗を恐れて決断を先延ばしにしたり、リスクを避けたりすることで、業務効率に影響が生じる可能性もあります。

几帳面(きちょうめん)で完璧主義になりやすい

几帳面な性格で物事を丁寧に進める従業員は、業務の質や成果を重視するあまり、自分自身に過度な負担をかけてしまいます。細部へのこだわりが強く、些細なミスも許せないため、常に緊張した状態が続くことで心身にストレスが蓄積してしまうのです。

さらに、自分以外の人にも同様の基準を求めることから、周囲とのギャップや思い通りにいかない状況が生じると、ストレスを強く感じることがあります。

周囲に合わせ過ぎてしまう

協調性の高い従業員であれば、周囲の状況や他人の気持ちに注意を払い、臨機応変に行動できます。しかし、周囲に合わせ過ぎてしまい、自己主張を控えたり、他人の期待に応えようと無理を重ねたりすると、心身に負担がかかる可能性があります。

意見の対立や競争が多い環境では、本音を抑えることが増え、気付かないうちにストレスや疲れが蓄積されるでしょう。その結果、精神的に疲弊しやすくなるのです。

気持ちの切り替えが苦手である

気持ちの切り替えに時間がかかる従業員は、失敗や否定的な経験を長く引きずる傾向があります。

小さなミスや批判でも必要以上に気にしてしまい、次の作業に集中できなくなることがあるのです。オンとオフの切り替えが難しく、プライベートでも嫌な感情が残るため、徐々にストレスが蓄積されます。

このような思考パターンの人は、新しい課題や人間関係でのストレスに対して不安を感じやすく、精神的な疲労をため込むことが多くなります。

自己否定的な思考パターンを持ちやすい

ストレス耐性が低い従業員は、失敗したときや指摘を受けたときに、自己評価を下げてネガティブな考えにとらわれてしまいます。些細なミスでも「自分は無能だ…」と感じ、フィードバックを成長の機会として受け止められないのです。

また、上司からの注意や同僚の意見を必要以上に気にするあまり、判断や行動が過度に慎重になり、業務効率やチームの成果に影響を及ぼす場合もあります。さらに新しい挑戦への不安や心理的な負担が増すと、積極的に行動できず、業務の機会損失や成長の停滞につながることも考えられます。

ネガティブな先入観を持ちやすい

ストレス耐性の低い従業員の特徴として、物事を悲観的に捉える傾向が挙げられます。
仕事の小さなミスや上司・クライアントからの指摘を長く引きずり、感情の切り替えに時間がかかることも珍しくありません。

また、「失敗するに違いない」という根拠のないネガティブな先入観で判断し、不必要な不安やストレスを抱えながら行動してしまうこともあります。

ストレス耐性が高い従業員に共通する特徴

ストレス耐性が高い従業員にも、共通する行動や思考のパターンが見られます。

以下で具体的に解説しますので、参考にしてください。

【ストレス耐性が高い従業員に共通する特徴】
●自己肯定感が高い
●自分の軸を持っていてマイペースである
●物事をポジティブに考えられる
●目の前の業務に集中できる
●周囲と協力関係を構築できる

自己肯定感が高い

自己肯定感が高い従業員の場合、ストレスの多い状況でも心身への影響を受けにくく、冷静に行動できる傾向があります。自身を肯定的に捉えられると、ありのままの自分を受け入れられるため、失敗や叱責を経験しても必要以上に自分を責めず、前向きに問題解決に取り組めます。

自己肯定感が高くストレスへの耐性がある従業員であれば、判断や行動も安定し、職場での業務効率や成果の向上にもつながるでしょう。

自分の軸を持っていてマイペースである

自分の価値観や考え方を軸に行動し、周囲の期待や評価に振り回されず落ち着いて仕事に取り組める従業員は、ストレス耐性が高いといえます。指導や注意を受けても人格の否定とは受け取らず、冷静にフィードバックを活かしながら改善につなげられる点が特徴です。

また、自分の得意・不得意な分野や、限界を理解した上で行動するため、無理をせず効率的にタスクを進められます。こうしたマイペースな姿勢によって、ストレスの多い状況でも集中力を保てるのです。

物事をポジティブに考えられる

ポジティブな思考の従業員であれば、困難な状況や失敗を成長の機会として捉え、前向きに行動できます。トラブルが生じた際や、指摘を受けた際にも「次に活かそう」と考え、建設的な解決策を検討しながら業務を進められます。この姿勢により、ストレスの影響を受けにくく、集中力や判断力を維持できるのです。

さらに、ポジティブな考え方は周囲にも良い影響を与え、チーム全体の士気を高める効果もあります。

目の前の業務に集中できる

ストレス耐性が高い従業員の特徴として、目の前の業務に意識を集中できる点も挙げられます。集中力があるため、複数の業務が発生しても感情に左右されず、優先順位を冷静に判断できます。

現在取り組んでいる業務に没頭することで、不安や失敗への懸念といった雑念が入り込む余地が少なくなり、高いパフォーマンスにつながるでしょう。こうした行動の積み重ねにより、業務は滞りなく進み、精神的な安定も保たれます。

周囲と協力関係を構築できる

ストレスの多い場面でも冷静に行動できる従業員は、周囲と協力して課題を解決する力が優れています。自分の限界を理解し、困ったときには相談することで負担を減らせるため、孤立せず信頼関係を築けるわけです。

たとえ多くの業務を抱えることになっても、同僚や上司に協力を求められる従業員であれば、ストレスを抱え込まずに業務を遂行できるでしょう。

従業員のストレス状態・ストレス耐性を把握する方法


従業員のストレスを正しく把握するには、日ごろからのチェックが欠かせません。

主な方法として、以下のようなものが挙げられます。

【従業員のストレス状態・ストレス耐性を把握する方法】
●勤怠データ・業務量から把握する方法
●ストレスチェック制度を活用して把握する方法
●面談・1on1によって定性的に把握する方法

本項では、どのようなポイントに注目して確認を行っていけば良いのかを解説します。

勤怠データ・業務量から把握する方法

従業員がどの程度のストレスを感じているかを把握するためには、まず勤怠状況を確認することが有効です。

ストレス耐性が低下すると、集中力ややる気が落ち、勤怠不良として表れるケースがあります。遅刻や早退、欠勤などが増えている場合、ストレスやメンタルヘルスの不調が影響していることも考えられます。さらに、長時間労働や残業、休日出勤が続く場合も、ストレスが蓄積するため注意が必要です。

こうした労働状況を把握しておくことで、従業員が抱える負担やストレスの原因を早期に察知でき、適切なサポートや業務内容の調整につなげられるでしょう。

ストレスチェック制度を活用して把握する方法

ストレスチェックを実施して、従業員のストレス状態や耐性を確認する方法もあります。

ストレスチェックとは、従業員が抱えるストレスの原因や状況を質問で可視化する検査のことです。常時50人以上の従業員がいる事業所では、労働安全衛生法によりストレスチェックが義務付けられています。

ストレスチェックの結果、多くのストレスを抱えている従業員に対しては、希望に応じて医師と面談する機会を設けなければなりません。併せて、就業上の改善措置や労務環境の整備を進める必要があります。

ストレスチェックでは、従業員のストレス状態を把握するためにさまざまな質問が用いられます。代表的な質問例は以下の通りです。

【ストレスチェックの質問例】
●担当している業務が多いと感じる
●業務時間内だけで、仕事が処理できない
●仕事に対するプレッシャーを常に感じる
●細かい点に注意を払わなければ仕事に取り組めない
●現在の業務を行う上で高度な知識や専門性が必要である

上記の質問に対する回答として、「当てはまる」「やや当てはまる」「どちらともいえない」「やや違う」「当てはまらない」などの項目を用意します。なお、質問項目が多過ぎると従業員の負担となるため、必要な質問に絞り、繁忙期を避けて実施することがお勧めです。

(参照:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』p4)

面談・1on1によって定性的に把握する方法

定期的な面談や1on1ミーティングを実施することで、従業員のストレス状態やストレス耐性を定性的に把握できます。

面談や1on1では、従業員の悩みや不安を引き出し、改善策を提案することでストレスによる悪影響を早期に防げます。また、日常的な対話を重ねて信頼関係を築いておけば、従業員が相談しやすい環境を整えられるでしょう。

(参考:『1on1ミーティングとは?目的や効果、導入する方法と進め方を解説』)

企業が取り組むべきストレス耐性の向上施策


従業員のストレス耐性を高めていくために、企業が取り組みたい施策として以下の点が挙げられます。

●労務管理を適切に行う
●ストレスを抱えにくい職場づくりに努める
●ストレス耐性を高める研修を実施する

本項では、それぞれのポイントについて詳しく解説します。

労務管理を適切に行う

従業員のストレス耐性を高めるには、適切な労務管理が欠かせません。長時間労働とストレスには密接な関係があるといわれており、時間外労働や休日出勤の実態をきちんと把握しておく必要があります。

労働安全衛生法によれば、月80時間を超える時間外労働や休日出勤を行っており、従業員から申し出があったときには、1カ月以内に医師による面接指導を実施することが事業者には求められています。長時間労働はメンタルヘルスの不調を招くことにつながりかねず、休職や離職のリスクを防ぐためにも早めに対応していくことが大切です。

時間外労働や休日出勤を減らし、従業員がはたらき過ぎの状態になってしまわないように、労働環境の整備を図りましょう。必要に応じて、外部の専門家などと連携しながら、取り組みを進めていくことが重要です。

日ごろの労務管理を細かくチェックしていくことで、時間の経過によって従業員の心身にどのような変化が起こっているのかを把握しやすくなります。労働安全衛生法に基づいた労務管理を行うことについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

(参考:『【よくわかる】労働安全衛生法とは?違反しないために企業は何をするべき?重要点を解説』)

ストレスを抱えにくい職場づくりに努める

従業員のストレスを軽減するための取り組みを行っていくことは大切ですが、そもそもストレスが発生しにくい職場環境を整備していくことが重要です。職場環境の整備と一口にいっても、業務内容や個々の作業環境、人間関係などチェックしたい項目は多岐にわたります。

業務の量や質が従業員の能力に見合ったものであるかどうかを、定期的な面談などを通じて確認していくことが大切です。また、照明の明るさや空調の管理、騒音への対策など、室内環境を整えることも意識しましょう。

業務内容などに問題がなくても、物理的に仕事をしづらい環境に身を置いていると、気付かないうちにストレスを溜め込んでしまうため注意が必要です。そして、人間関係に関する部分もストレスにつながる要因になりやすいといえます。

上司や同僚とのコミュニケーションを取りやすい環境に整えることで、従業員の心身の変化に気付きやすくなります。従業員自身が悩み事を抱えているときに、気軽に相談できる雰囲気づくりに努めましょう。

リモートワークを行う従業員が多い職場であれば、コミュニケーションスペースを設けたり、気軽に会話ができる社内チャットツールを導入したりすることも検討してください。複数の方法を組み合わせることで、ストレスを抱えにくい職場づくりにつなげられます。

ストレス耐性を高める研修を実施する

ストレスの原因がわかっている場合は、研修を通じて必要な知識と対処法を学んでもらうことも、従業員のストレス耐性を高めることにつながります。メンタルヘルスの不調を予防する研修は数多く行われているため、必要に応じて外部の研修を取り入れるなどして、ストレス耐性の強化を図りましょう。

仕事のストレスは、従業員の立場によって性質が異なる部分があります。一般従業員であれば、自ら実施できる対応策を学ぶ「セルフケア」を中心とし、管理職なら部下や組織に対してどのような施策を実施すれば良いかを学ぶ「ラインケア」を中心に必要な研修プランを立てると良いでしょう。

また、ストレスをうまくコントロールしていくことを学ぶ「レジリエンス研修」を行えば、ストレスを感じやすいさまざまな場面での対処法を身に付けられます。全社的に取り組む部分と、個々の従業員に身に付けてもらいたい部分を分けて、必要な研修を行ってください。

企業としてストレス耐性を高めるための場を設けることは重要ですが、研修で学んだことを活かしてもらうためには、従業員の協力も必要です。「なぜ研修を行うのか」という目的を明確にした上で、継続的に取り組みましょう。

レジリエンス研修について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

(参考:『レジリエンスとは?ビジネスでの意味や高い人の特徴、高める方法を解説』)

ストレス耐性の向上に有効なストレスコーピングの考え方

ストレスコーピングとは、ストレスを感じたときに、心身への負担を軽減するために行う考え方や対処行動のことです。ストレスを完全になくすのではなく、上手に付き合うための対処法といえるでしょう。企業の人事担当者としては、従業員がこうした手法を理解し、実践できるようにサポートや教育を行うことが重要です。

ストレスコーピングにはさまざまな考え方がありますが、中でもストレス耐性の向上に役立つ代表的な手法は押さえておきたいところです。

【ストレス耐性の向上に有効なストレスコーピングの手法】
●ABC理論を用いた思考整理
●SOC(首尾一貫感覚)によるストレス対処
●メタ認知を活用したセルフマネジメント

ストレスへの具体的な対処行動を整理したい方は、以下の記事も参考にしてください。

(関連記事:コーピングとは?企業のストレス対策に役立つ種類・やり方・実践例

ABC理論を用いた思考整理

ABC理論は、出来事(A)に対する自分自身の捉え方(B)が、感情や行動(C)にどのように影響するのかを理解するための考え方です。この理論を活用すると、ストレスに対する感情や行動をコントロールでき、結果として耐性を高められます。

同じ出来事(A)でも、信念(B)を前向きに変えれば、感情や行動(C)もポジティブに変化します。例えば、上司に叱られた(A)ということを、「成長のチャンス」と捉えるよう信念(B)を変えることで、「落ち込み」ではなく「前向きな行動(C)」につなげられるでしょう。

日常的に自分の思考をABCの視点で整理すると、ネガティブに流されずストレス耐性を高められます。

SOC(首尾一貫感覚)によるストレス対処

SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)は、人生や日常の出来事を理解した上で対処する能力であり、同時にそれらに意味や価値を見いだす感覚のことです。このSOCを高めることで、ストレスに対して前向きに対処できます。

SOCが高い人であれば、ストレスの多い状況でも出来事や周囲の状況を正しく理解し、冷静に対応できるでしょう。例えば、予期せぬトラブルや忙しい業務に直面しても、「何が起きているのか」「自分に求められる対応は何か」を把握した上で行動できます。その結果、過度に不安になったり混乱したりすることが少なくなり、ストレスを抑えられるのです。

また、SOCは有意味感・把握可能感・処理可能感の3要素で構成されており、それぞれがストレスへの向き合い方や行動の基盤を示しています。
3つの要素の特徴や役割は、以下の表をご覧ください。

【SOCの要素】

有意味感 身の回りの出来事や困難に価値を見いだす力
把握可能感 自分が置かれている状況を予測・理解する力
処理可能感 困難な状況でも「自分なら対応できる」と思える感覚

これらを意識的に育むことで、ストレス耐性が向上するでしょう。

メタ認知を活用したセルフマネジメント

メタ認知とは、自分自身の思考や感情を客観的に捉える能力のことを指します。

この能力を高めることで、ストレスに対して冷静かつ柔軟に対処できるようになります。これは、自分の思考や感情を客観的に把握し、不要な思考パターンやネガティブな感情に振り回されなくなるためです。

メタ認知を高めることにより、問題解決や意思決定の質が向上し、ストレス反応を早期に察知して対処できます。また、感情を整理して落ち着きを取り戻せるため、仕事や人間関係でのトラブルにも冷静に対応でき、結果としてストレス耐性を高めるセルフマネジメントにつながります。

まとめ

従業員が活き活きとした気持ちで仕事に取り組んでいく環境を整えるには、ストレス耐性について正しく理解しておくことが重要です。従業員一人ひとりの性格や悩みを把握した上で、何がストレスの原因になっているのかをツールなども活用して調べてみましょう。

また、ストレス耐性は従業員を取り巻く環境の変化によって、結果にも大きな影響が出てくるものです。そのため、一度チェックを行ったからといってそのままにせず、定期的に確認をして経年管理が行える体制を整えましょう。

ストレスを抱えた状態の従業員をそのままにしておくと、心身の健康に悪影響が出る恐れがあることに加え、離職の原因になる場合もあります。原因の早期発見を心がけて、ストレスが溜まりにくい職場環境を整備してください。

ストレス耐性の向上は、把握・予防・育成をセットで回せると継続的な改善につながります。取り組みの要点を整理した資料をご用意していますので、資料をダウンロードして検討にお役立てください。

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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