エンジニア採用が難しい7つの理由|失敗の原因と成功のコツを解説
d’s JOURNAL編集部
AI技術の発展やDXの推進により、IT人材の需要は年々高まりを見せています。それにともない、エンジニアの採用難易度も高まっており、優秀な人材の確保が企業の重要課題となりつつあります。
この記事では、エンジニアの採用が難しい理由に触れながら、うまくいかない企業の共通原因や成功させるためのポイントなどを見ていきましょう。
エンジニア採用が難しいとされる7つの理由
DXの推進などによってIT人材の需要が高まっているなかで、高度な技術を持ったエンジニアの採用は企業の大きな課題となっています。しかし、さまざまな職種のなかでも、エンジニアは特に採用が難しいとされている種類の一つです。
ここではまず、なぜエンジニアの採用が難航しやすいのか、具体的な理由を7つに分けて見ていきましょう。
エンジニアの有効求人倍率の上昇
近年の求人市場は、労働力不足による売り手市場が長く続いている状態です。なかでもIT人材の供給不足は深刻であり、経済産業省の試算によれば、2030年にはIT人材が最大で約79万人不足するという予測が立てられています。
(参照:経済産業省『IT人材需要に関する調査』)
それには、DXの推進やAI技術の発達などにより、企業全体として急速な対応が求められていることも大きく関係しています。また、新型コロナウイルスの流行拡大により、非対面型のサービスやシステムが発展したことも重要な要因といえるでしょう。
こうした流れのなかで、エンジニアの有効求人倍率はますます上昇していき、採用のハードルが高まっているのです。
即戦力需要の増加
現在の求人市場は、従来と比べて即戦力需要が高まっているのも大きな特徴です。特にエンジニアを含めた高度な専門職では、新卒や未経験者の採用をストップし、一定以上の経験を持った即戦力の人材に切り替えるケースが増えています。
これは、「一から高度な人材を育てるだけの体力が保てない」「ITに関する目先の課題を解消したい」といった企業の事情を反映していると考えられるでしょう。また、そもそも自社にある程度の経験を積んだエンジニアがいなければ、未経験者を育成することができません。
こうした事情から、とりわけ20代後半~30代前半までの経験者には需要が集中しやすく、実質的に複数の企業で取り合うような形になってしまう状態が続いています。このように、エンジニアの即戦力需要が高まり、未経験の募集が減ったことも採用の難易度を上げている原因の一つです。
働き方の多様化
働き方改革の推進や終身雇用・年功序列制度の崩壊などにより、現役世代の働き方には大きな変化が生まれています。従来のように1つの企業に勤め続けるというオーソドックスなスタイルだけでなく、フリーランスや副業なども一般的になりつつあるのです。
特に高度かつ専門的なスキルを持ったエンジニアであれば、特定の企業に雇用されるよりも、自ら仕事を獲得するフリーランスのほうが高い収入を得られる場合もあります。あるいは、企業に勤めながらも、副業として他社の開発業務を担うといった働き方も可能です。
働き方の柔軟性が向上したことにより、無理に転職をしなくても収入アップが狙えたり、自分の携わりたい案件に関われるチャンスが得られたりするようになったのです。その結果、転職市場にはエンジニアの求職者がなかなか現れず、正規雇用の難易度が高くなっている面もあります。
中小企業とエンジニアとのミスマッチ
エンジニアをはじめとするIT人材は、中小企業でのニーズも高いといえます。中小企業では十分な教育体制が整えられていないケースも多く、大手企業以上に経験者のエンジニアを必要とする面もあるといえるでしょう。
しかし、前述のようにエンジニアの競争率は上昇しており、それにともなって給与水準なども軒並み高くなっているのが現状です。それに対して、経営基盤が弱くなりやすい中小企業では、十分な給与水準を維持できるだけの体力を保てません。
また、エンジニアのやりたい仕事やキャリアアップにつながる経験を提供するには、やはり相対的にチャンスの多い大手企業が有利になってしまいます。その結果、特に中小企業においては、エンジニアの人手不足解消が難しい問題となってしまっているのです。
エンジニア市場の流動性の低下
これまで見てきたように、IT分野で活躍できる人材は、多くの企業にとって重要な価値を持っています。IT人材の獲得競争が激化するなかで、すでにエンジニアを雇用している企業では、優秀な人材の待遇を向上するなどして手放さないための努力を続けている状態です。
市場の流動性が低下した結果、十分な経験を持ったエンジニアが転職市場に現れる場面が減少し、そもそも十分な母集団を形成することが難しくなっているのです。
採用手法の複雑化
エンジニアの採用が難しくなっている背景には、採用手法や採用チャネルの多様化・複雑化も関係していると考えられます。現在の採用市場においては、これまで主流とされてきた求人広告や人材紹介といったサービスだけでなく、企業が自ら獲得に動く「ダイレクト・ソーシング」や「リファラル採用」なども普及しはじめています。
また、求職者との信頼関係を築くために、SNSの運用によって一定の成果を上げている企業も少なくありません。このように、採用手法・採用チャネルが多様化していることにより、競争力の低い企業では進化に適応できなくなってきているのが現状です。
採用活動に十分な人員を充てられない場合、体力のある企業との差がどんどん広がり、優秀な人材と出会える機会を得ることが難しくなってしまいます。
エンジニアの見極めの難しさ
社内に専門性の高い人材がいない場合、そもそも新たに迎えるエンジニアの力量やスキルを見極めるのが難しくなってしまうという問題も生じます。技術面などの専門的な分野については、詳しい知識を持った技術責任者でなければ見極められません。
そのため、IT分野に詳しい従業員が不足している場合には、選考自体の難易度も高くなってしまうのです。また、技術職とはいっても、当然ながら一般の職種と同じようにコミュニケーションスキルや人柄といった基本的な資質を見極める必要もあります。
このように、選考段階の難しさも、エンジニア採用のハードルを上げている原因の一つといえるでしょう。
エンジニアの採用に失敗する企業の共通原因
前述のように、エンジニアの採用難易度は社会全体として高くなってしまっているのも事実です。しかし、採用がうまくいかない理由は、外部要因だけでなく企業が抱える内部要因にも隠されているケースがあります。
ここでは、エンジニアの採用が難航してしまう企業に共通して見られる問題点について解説します。
採用基準が高すぎる
「求人広告を出してもなかなか応募が集まらない」「条件に当てはまる人材に出会えない」という場合は、そもそも設定している採用基準が高すぎる可能性が考えられます。エンジニア採用の難しさを把握できておらず、自社の理想のみを採用基準に反映させてしまえば、なかなか応募を集めることはできません。
給与面などでよほどの好条件を設定できる企業でなければ、採用基準を下げるという判断も必要です。採用基準は、自社が求める人材像と実際に採用できる人材のレベルの両方を踏まえ、バランスを丁寧に考慮することが大切です。
採用条件を設定するうえで、どうしても即戦力としての採用が難しいようであれば、育成を前提に未経験者にも視野を広げるなどの選択肢も検討しましょう。
求める人物像が明確になっていない
「求める人物像が不明瞭」である場合には、せっかく採用できたとしても、ミスマッチによって思うような働きをしてもらえない可能性が高くなります。エンジニアの採用に限られるわけではありませんが、企業側がどのような人材を必要としているかがあいまいでは、選考段階で自信を持った判断が行えなくなります。
選考に時間がかかれば、その間に競合他社へ気持ちが動いてしまうリスクもあるため、そもそも採用自体に支障をきたしてしまうでしょう。エンジニアは専門的な技術を要する職種であることから、適切な採用基準を設けるのが難しい面もあります。
人事担当や採用担当だけで判断するのではなく、現場の責任者などにもヒアリングしながら、精度の高い採用基準を設定しましょう。また、「採用コンセプトが定まっていない」という点も、採用計画があいまいになってしまう原因となります。
「自社が何を目的にエンジニアを求めているのか」「どのような点で他社との差別化を図るのか」など、採用をスタートする段階でコンセプトをきちんと煮詰めておくことが大切です。
求職者へのアピールがあいまい
求人広告の効果が現れない場合には、自社の魅力をしっかりとアピールできているのかを確かめるために、求人内容の見直しを行うことも重要です。まずは、「文章表現に問題はないか」「使用している写真は適切か」といった基本的な事柄をチェックしてみましょう。
そのうえで、自社の魅力がうまく伝わる手法を研究し、求人広告にきちんと反映させていく必要があります。そのためには、採用活動に関わるメンバー自身が、自社の特徴や将来性を言語化して共有できるようにすることが大切です。
自社の立ち位置や社会的な役割を客観的にとらえ、エンジニアが入社することでどのような魅力を感じてもらえるのかを丁寧に追求するなかで、求人広告のクオリティは自然と向上していきます。
エンジニアの希望や不安を理解できていない
採用がうまくいかないパターンとしては、採用担当者のエンジニアリングに対する知識が不十分であるというケースもあげられます。そもそもエンジニアの業務やスキルに関する理解が不足しており、現実的なジャッジが難しい場合は、現場の担当者も巻き込みながら採用活動を進める必要があります。
また、エンジニアが求める条件や希望についても、きちんと理解しておかなければなりません。エンジニアがどのような職場環境を魅力的に感じるのかを分析し、可能な範囲で整えておくことも大切です。
たとえば、「リモートワークやフレックスタイム制による柔軟な働き方」「エンジニアに適した評価手法・基準の策定」「他部署とのスムーズな連携体制」などは、エンジニアが働きやすいと感じるポイントとしてあげられます。そのためには、エンジニアがどのような点に不安を感じやすいのかにも注目するとよいでしょう。
待遇やキャリア形成などについて、エンジニア特有の悩みや不安を理解しておけば、環境整備の方向性を見極めやすくなります。
選考スピードが遅い
中途採用においては、選考スピードも重要なポイントとなります。新卒採用とは異なり、中途採用の選考のプロセスやスピードは企業によって大きく異なります。
そのため、応募者が複数の企業で選考を受けている場合には、早く内定を出した企業のほうが、相対的に有利である可能性が高くなるのです。求職者側から見れば、対応がスピーディな企業のほうが信頼しやすいと感じられるため、印象もよく映りやすいといえるでしょう。
特に、引く手あまたのエンジニアを採用するうえでは、選考スピードが成功を左右するケースもめずらしくありません。対応が後手に回り、競合他社に機会を奪われてしまうリスクを避けるためにも、選考プロセスの効率化と採用基準の明確化に力を入れることが大切です。
エンジニアの採用に必要な準備
まだ仕組みが整っていない企業では、いきなりエンジニア採用を始めても思うような成果を上げるのは難しいといえます。まずは、採用活動をスタートする前に、しっかりと土台を固めておく必要があるのです。
ここでは、エンジニアの採用を成功させるうえで、企業がすべき準備について解説します。
採用目的を明確化する
人材採用は単に「採用して終わり」というわけではなく、その後の活躍も見据えた中長期的な取り組みです。採用方針がぶれてしまうのを避けるために、自社の事業計画と照らし合わせながら、何のためにエンジニアを採用するのかを明確にすることが大切です。
IT技術は日々目覚ましい進歩を続けているため、目先の課題を解決するためだけにエンジニアを採用したとしても、その技術が数年後まで活用できるとは限りません。自社の長期的な成長はもちろん、採用した人材のキャリアを考えるうえでも、採用計画は長い目で検討する必要があります。
採用目的が明確になっており、計画が長期的な視点に基づいたものであれば、細かな事柄の決断はスムーズに行えるでしょう。また、しっかりとした軸を中心に採用活動を行うことで、採用ノウハウが蓄積されていきやすいのもメリットです。
人材の要件を明確化する
選考をスムーズに進めるためには、自社が求める具体的な人材要件を洗い出し、言語化や定量化した状態で共有しておく必要があります。人材に関する捉え方は人それぞれであり、明確な指標がなければ、候補者の評価を公正に行うのは難しい面があります。
特にエンジニアは経験やスキルが細分化されやすいため、採用側に認識のズレが生じないよう、丁寧に採用基準の理解を進めなければなりません。また、スキルだけではなく、人柄やマインドセットなどに関する条件も明確に設定しておくことが大切です。
現時点で十分なスキルがあっても、自ら主体的に成長を求められない人材であれば、いずれは技術の変化についていけなくなってしまいます。そればかりか、組織全体にも悪影響を及ぼしてしまう可能性もあるでしょう。
実際に組織の一員として働いてもらう姿をイメージしながら、どのような人材であればスムーズに活躍してもらえるかを具体的に描くことが重要です。
エンジニアリングの基礎知識を把握する
これまで見てきたように、エンジニアの採用においては、採用を担当する側にもエンジニアリングに対する一定の理解が必要となります。まずは、エンジニアの業務や役割がどのようなものであるかを確認し、最低限の専門用語は理解できるように準備しましょう。
現場のエンジニアも採用活動に巻き込む
すでに社内エンジニアがいる場合は、採用活動に巻き込み、積極的に意見を出してもらうのも有効です。現場のエンジニアに携わってもらえば、同じ目線や共通言語で候補者とやりとりができるため、選考を円滑に進めやすくなります。
また、必要な人材の要件を設定するうえでも、貴重なアドバイスをもらえるでしょう。そのため、できるだけ早い段階で現場のエンジニアとの接点をつくり、信頼関係を構築しておくことが大切です。
エンジニア採用を成功させるためのポイント
エンジニアの採用を成功させるためには、どのような点を意識すべきなのでしょうか。ここでは、より実際的な選考段階を想定して、採用担当者がおさえるべきポイントについて解説します。
雇用条件は候補者に合わせて設定する
エンジニアの採用においては、基本的に「企業が人材を選定する」のではなく、「人材に企業を選んでもらう」というマインドに切り替えることが大切です。エンジニアの採用市場は売り手が優位にあり、1人の人材を複数の企業で取り合う形になってしまうケースもめずらしくありません。
企業としては、できるだけ採用候補者の希望条件を理解し、それに合わせた雇用条件を設定しましょう。
対面での面接を省略しない
エンジニアに限らず、中途採用はある程度の即戦力を期待して実施する場合がほとんどです。即戦力として活躍してもらうためには、社会人としての基本的なスキルやコミュニケーション能力などが欠かせない資質となります。
こうした資質を見極めるには、応募者にはしっかりと会って判断するということを前提におき、選考プロセスをむやみに省かないことが重要です。特にエンジニアの場合は、書類上からは読み取れない優秀な経歴を保有している人材が隠れている可能性が高いといえます。
そのため、書類選考では「次のステップに進める人を選ぶ」のではなく、「面接を行う必要がない人を落とす」というスタンスを保つのがポイントです。
選考はスピード感を意識する
エンジニアの選考は、候補者の気持ちが他社へ動いてしまうのを避けるためにも、できるだけスピーディに行うことが大切です。選考プロセスは事前にシステム化しておき、書類選考から面接実施までのリードタイムを短くまとめましょう。
また、面接の日程については、できるだけ企業側が調整してセッティングするのがポイントです。自社以外にも選考を受けていることを想定して、機会を逃さないように心がけましょう。
入社の動機付けに力を入れる
エンジニアが求める条件や感じやすい不安は、事前の調査・分析によって、ある程度傾向を把握することができるのも確かです。しかし、企業選びで重視することやキャリアの志向などは、当然ながら人それぞれで異なります。
そのため、面接においては一人ひとりに合わせた動機付けを丁寧に行い、入社へのモチベーションを高めてもらうことも大切です。候補者にとって、自社で働くことにはどのようなメリットがあるのか、先輩従業員の例なども提示しながらアピールするとよいでしょう。
エンジニアの採用に適した手法
人材紹介
人材紹介とは、求人内容に合わせて人材を紹介してくれる有料のサービスのことです。厚生労働大臣から許可を受けた「有料職業紹介所」を通して、求職者とのマッチングをはじめ、さまざまな採用業務を代行してもらえるのが特徴です。
人材紹介サービスを利用する大きなメリットは、原則として「成功報酬型」の支援サービスである点と、希望する人材の条件をピンポイントで絞り込める点にあります。人材紹介サービスは採用が決定したときにはじめて料金が発生する成功報酬型のケースが多く、初期費用を気にせずに納得のいく人材を選ぶことが可能です。
また、専任の担当者が豊富なデータベースから人材を紹介してくれるため、エンジニアなどの専門的な職種でも比較的見つかりやすいのが特徴です。希望する人材の条件を細かく絞り込めるため、受け身の姿勢で応募を待つよりも、ハイクラスのエンジニアに出会える可能性もあります。
その他のメリットとしては、完全非公開で求人を行える点があげられます。人材紹介サービスを利用すれば、広く求人広告を打つ必要がなくなるため、新規プロジェクトのためのエンジニア募集などで競合他社に動向を知られたくない場合には有効です。
人材紹介サービスについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参照:『人材紹介サービスを活用するメリット・デメリットとは?』)
求人広告
求人広告はオーソドックスな手法の一つですが、広告を入稿するだけで求人情報を広く周知できるのは大きな利点です。利用者数が多い専用サイトを利用すれば、特に大掛かりな準備をしなくても、多くの人の目に留まる可能性があります。
一方、実際に応募してもらえるかどうかは、企業の知名度やブランド力によって左右されてしまう面もあります。また、自社で採用サイトを用意するのと比べると、アピールできる情報量に制限があるのも難点です。
求人広告を利用する場合は、ターゲットをより明確に絞り込み、簡潔に自社の魅力を伝えられるテキストや写真を用意する必要があります。求人広告について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参照:『求人広告の書き方の基本|法律順守で成果を最大化するコツを解説』)
ダイレクト・ソーシング
「ダイレクト・ソーシング」とは、専用サイトなどを通じて、企業から個人のエンジニアに直接アプローチを試みる採用手法のことです。専用サイトやSNSに登録されたエンジニアに対して、スキルなどの条件を確かめたうえで、企業から接点をつくるスカウト型の方式が特徴です。
自ら主体的に動けるため、企業の知名度が低い場合でも、求める人材と関わる機会をつくれるのが大きなメリットといえます。また、気になる点があれば求職者側からの質問も受け付けられるため、双方向的なコミュニケーションを図れるのも利点です。
ダイレクト・ソーシングを活用すれば、採用が難しいエンジニアとの接点も生まれやすく、自社の魅力を直接的に伝えられるチャンスが広がります。ダイレクト・ソーシングについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参照:『攻めの採用「ダイレクト・ソーシング(ダイレクトリクルーティング)」とは?』)
リファラル採用
「リファラル採用」とは、いわゆる縁故採用のことであり、自社の従業員に人材を紹介してもらう採用手法です。前職の同僚や学生時代の同級生など、直接的に関わりのある知人を紹介してもらい、企業は紹介者にインセンティブを提供するのが基本的な仕組みです。
自社の内情を理解している従業員からの紹介になるため、社内カルチャーにフィットした人材を見抜きやすく、高度な人材との接点もつくりやすいのがメリットでしょう。リファラル採用について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
(参照:『リファラル採用とは?導入のメリット・デメリット、運用のポイントを紹介』)
エンジニア採用の成功事例
株式会社デジリハ
音楽やデジタルアートを用いたリハビリツール「デジリハ」を提供する「株式会社デジリハ」では、十数名ほどの少数精鋭型組織でありながら、高度なアプリ開発などの業務を実現しています。これには、エンジニアリングやグラフィックデザインなどを「外部のフリーランスに依頼している」点が、成功を支えるポイントとなっています。
また、外部契約といっても10年近くの付き合いがある依頼先もおり、社内のメンバーに近い感覚で信頼関係を築いているのが特徴です。そのうえで、社内のメンバーについては、「全員参加の3次面接」を実施することで、採用時のミスマッチを予防しています。
この取り組みにより、全従業員が採用への責任意識を持つようになり、入社後のオンボーディングも自然と充実するといった効果が生まれています。
(参照:『福祉・医療の専門人材がエンジニアも⁉営業も⁉「全社員面接」を通じて多様な人材獲得・開発を実現しているデジリハの採用術【連載 第11回 隣の気になる人事さん】』)
株式会社みんなの銀行
2021年5月、国内初のデジタルバンクとして開業された「みんなの銀行」は、エンジニアを中心としたハイクラス人材の採用によって、従来の銀行とは一線を画したサービスの提供を実現しています。その土台となっているのが、イベントへの登壇やTechブログなどを通じた地道な情報発信です。
企業のミッションやビジョンなどを丁寧に発信し、自社で働く環境や得られる経験などにも触れることで、エンジニア人材に定期的な働きかけを行っているのです。また、母集団形成においては、外部の人材サービスを組み合わせて活用するとともに、現場のエンジニアにも積極的に参加してもらう仕組みをとっています。
エンジニアの目線から採用活動のアドバイスをもらい、柔軟に方針を転換していくなかで、1年半あまりで200人を超える組織づくりに成功しています。そのうえで、もう一つの特徴的な取り組みとしてあげられるのが「カジュアル面談」の実施です。
同社では正式な面接の前に、カジュアルな場で深いレベルの情報を直接伝えることで、ハイクラス人材の転職への動機付けにつなげています。
(参照:『システム領域トップと人事が連携し、「従来の銀行にはいなかった」ハイクラス層エンジニアを続々採用』)
株式会社スリー・イー
IT人材の育成やIT技術支援を扱う「株式会社スリー・イー」は、独自の選考プロセス「バーチャルインターン」の導入により、1年間で50名ものITエンジニアの採用に成功しています。バーチャルインターンとは、1日2時間の無料オンライン研修プログラムを6日間受講すると、自動的に選考合格とする仕組みのことです。
ITエンジニア未経験者を対象にしているため、幅広い人材にアプローチできるのが利点であり、しっかりと事前研修を受けてもらうことで入社後の定着率上昇にもつながっています。この制度の導入には、同社がIT人材育成のノウハウを持っている点と、人柄やカルチャーフィット重視で採用を行っていることが背景となっています。
事前研修を受けてもらうため、選考スケジュールは他社と比べて長くなってしまうという懸念もあったものの、実際には辞退率が低く、入社承諾率は90%と優れた成果につながりました。
(参照:『独自の選考プロセス「バーチャルインターン」で、ITエンジニアを50名採用することに成功』)
株式会社エージェントグロー
SES事業およびSaaS事業を手掛ける「株式会社エージェントグロー」は、「中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える」というミッションのもと、毎月2名以上のエンジニア経験者採用を実現しています。これには、還元率80%を目標とする好待遇も関係していますが、それ以外にもさまざまな工夫が凝らされています。
代表的な取り組みとしてあげられるのが、「顧客からの単価に基づいた客観的評価指標の導入」です。エンジニア職は比較的各自の貢献度合いが不透明になりがちな職種でもあります。
そこで、同社では明確な評価基準の設定と案件選択の自由を実現し、仕事に対するやりがいを実感してもらうことに成功しています。また、独自の教育・管理システムにより、1人の従業員で80名のエンジニアをフォローできる体制が整えられており、転職者のスムーズな合流が実現されているのも特徴です。
(参照:『ITエンジニアの処遇やキャリアパスを一変させたSES企業。経験者を中心に毎月2名以上の採用を実現!その秘密に迫る』)
まとめ
売り手市場にある求人市場において、エンジニアは特に採用難易度が上がっている職種の一つとされています。1人の人材を複数の企業で取り合うというケースもめずらしくなく、IT分野における人材競争は、企業の大きな課題といっても過言ではありません。
エンジニアの採用を成功させるためには、採用担当のエンジニアリングに対する理解が重要となります。エンジニアがどのような点に不安を抱きやすいのか、どのような条件を求めるのかなどは、現場で働く自社のエンジニアにも意見を求めることも大切です。
エンジニアに適した採用手法や、採用に成功している企業の事例も学びながら、有効な採用戦略を構築していきましょう。
(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)
ITエンジニア採用のために大切な5つの心得
資料をダウンロード