中途採用とは?目的やメリット・デメリット、成功のポイントを解説

d’s JOURNAL編集部

中途採用は、他社での就業経験がある人材を対象として行う採用手法です。新卒採用とは異なる特徴が数多くあり、有効に活用できれば、短期間に社内の組織を大きく活性化させることも可能です。

この記事では、中途採用の目的やその他の採用方法との違いを確認したうえで、メリット・デメリット、成功のためのポイントを見ていきましょう。

中途採用とは


中途採用とは、すでに就業経験のある人材を対象に行われる採用活動です。新卒採用と対比して用いられることが多く、対象となる人材の年齢層や経験値、スキルなどは幅広くなるのが特徴です。

企業が中途採用を行うのは、主に欠員を補充したいときや即戦力を求めるときなどであり、従来は新卒採用と比べると臨時的な意味合いが強い面もありました。

しかし、終身雇用制度が前提ではなくなりつつある現代にあっては、中途採用が行われるケースも多くなっています。

新卒採用などその他の採用方法との違い


中途採用には、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、その他の採用方法との違いから見ていきましょう。

新卒採用との違い

新卒採用とは、これまで正社員としての就業経験がない、高校・大学卒業見込みの学生を対象とした採用活動です。卒業直後の4月に入社することを前提に、募集・選考が行われます。

新卒採用の目的は、企業が長期安定的に事業を継続していくための人員バランスの維持や、組織の活性化、リーダー候補の獲得などにあります。そのため、採用活動も中長期計画に基づいて行われ、一定以上の育成期間を見据えて取り組むのが一般的です。

自社で育成していくことを前提に置くため、選考の基準も現時点でのビジネススキルよりは、人柄やポテンシャルを重視します。それに対して、中途採用はある程度の短期的なビジョンに基づき、着実な活躍を計算できるかどうかが重視されることが多いです。

なお、中途採用と類似した用語に「第二新卒」という言葉がありますが、こちらは新卒で入社してからおおむね「3年以内」に転職活動をしている人を指します。転職者のなかでも年齢が若いため、一般的な中途採用と比べると、将来性を期待してポテンシャルを重視されやすいのが特徴です。

新卒採用について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『新卒採用とは?メリットやデメリット、中途採用との違いを解説』

キャリア採用との違い

キャリア採用とは、中途採用のなかでも、特に経験や知識などを踏まえて即戦力を採用するためのものです。それに対して、中途採用は未経験者も対象とする点に大きな違いがあります。

そのため、おおまかな傾向としては、高い専門性が問われる業種や部門でキャリア採用が用いられるケースが多いです。一方、中途採用は、どちらかといえば専門性が問われない部門の採用に用いられます。

ただし、人材不足に陥りやすい企業では、専門分野であっても育成を見込んでの中途採用は十分に有力な選択肢となります。キャリア採用について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『キャリア採用とは|相性の良い企業・職種や成功事例を紹介』

中途採用の目的


企業が中途採用を行う主な目的には、年度計画を推進するうえでの欠員対応、あるいは増員の必要性への対応があげられます。新卒採用とは異なり、比較的に短いサイクルでの採用が見込めるため、短期的な目標を達成するうえで用いられるケースも少なくありません。

そのうえで、自社にないノウハウや知識を導入することも、中途採用の重要な目的です。新卒から入社した生え抜きの従業員が多い企業では、どうしても他社の文化や風土を知る機会は限られてしまいます。

異なる企業で働いた経験がある人材を迎え入れることで、社内に新しい風が入り込み、既存の組織や従業員によい刺激となる場合も多いです。

中途採用を行うメリット


企業が中途採用に力を入れることには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な5つのメリットをご紹介します。

<中途採用のメリット>
・通年採用が可能
・即戦力として採用できる
・他者のノウハウ・知見を吸収できる
・多様性のある組織づくりがしやすくなる
・企業ブランディングにつながる

通年採用が可能

中途採用は、新卒採用のように入社のタイミングを特定の期間に限定されず、通年採用を行えるのがメリットです。自社の都合に応じて、年度中でも不定期に実施できるため、柔軟な人員の補充が可能です。

新卒採用のように選考から入社までの間隔が空くこともなく、選考のスケジュールも任意に調整できるため、急を要する人材確保には活用しやすいのが特徴といえます。

即戦力として採用できる

中途採用は新卒採用と比べて、即戦力としての活躍を期待できるのも利点です。経験者を対象とすれば、簡単な研修のみで現場の業務を担ってもらうことも可能だといえます。

すでに自社で使用されている専門用語やスキルなどを身につけている人材であれば、既存の従業員にそれほど大きな負担をかけず、スムーズに日常業務に合流してもらえるでしょう。また、未経験者を採用する場合であっても、一定の社会人経験があるため、基礎的なビジネススキルやマナーといった基本は身についていると考えられます。

そのため、一から新人研修を行うのと比べれば、大幅に育成コストを抑えられるのが強みです。

他社のノウハウや知見を吸収できる

中途採用された人材の経験や知識を通じて、他社のノウハウ、文化などを吸収できるのも大きなメリットです。中途採用による転職者は、前職での経験やノウハウなどを身につけていると考えられます。

特に競合他社からの入社であれば、自社にそのまま活かせるような情報・スキルを数多く持っていると期待できるでしょう。また、前職での人脈や取引先との関係などを持ち込んでもらえる可能性もあるため、自社のビジネスチャンスを大きく広げる機会にもなり得ます。

多様性のある組織づくりがしやすくなる

中途採用で入社した従業員は、生え抜きの従業員とは異なる価値観を持っているため、組織の活性化につながりやすいのも特徴です。自社にはない考え方や視点を持っている人材が増えれば、既存の方法や慣習にとらわれず、柔軟にイノベーションを生み出す土壌が自然と耕されていきます。

また、採用の枠組みが固定されやすい新卒と比べて、中途採用は国籍や年齢などにとらわれずに多様な人材を採用しやすいのも利点です。

企業ブランディングにつながる

企業が中途採用に力を入れることには、規模や状況によって自社のブランディングにもつながります。転職希望者のなかには、まだ企業で働いているものの、よい条件があれば環境を移してみたいと考える潜在層も一定数います。

中途採用を精力的に行う企業は、こうした潜在層の人材を積極的に雇用している会社として前向きな印象を与えられるのです。自社の採用活動を戦略的に発信し、幅広く認知してもらうことができれば、より優秀な人材を獲得できるチャンスが広がります。

ブランディングについて、さらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

(参考:『採用ブランディングとは?目的や方法、メリット、進める際のポイントなどを紹介』

中途採用のデメリット


中途採用を行う際には、注意しておきたいデメリットも理解しておく必要があります。ここでは3つの注意点についてご紹介します。

<中途採用のデメリット>
・価値観のミスマッチが起こりやすい
・多数の人材採用には向かない
・若手の成長を阻害する可能性がある

価値観のミスマッチが起こりやすい

中途採用した従業員は、新卒者と比べて前職での働き方や価値観になじんでいる場合が多いです。そのため、柔軟に自社の風土を吸収してもらいやすい新卒者とは違い、ミスマッチを起こしてしまう可能性が高い面もあります。

特に同業種からの採用である場合、業務のやり方に相違があれば、周囲から期待される度合いに対して思ったような活躍ができないというジレンマも生じてしまうでしょう。その結果、せっかく採用できても、最悪の場合は離職につながってしまう可能性もあります。

また、転職を経験して自社に来ていることから、中途採用された人材は転職そのものへの心理的なハードルは高くない傾向にあると考えられます。その結果、ミスマッチが離職につながるリスクが高くなるのです。

多数の人材採用には向かない

対象者やシステムが明確されている新卒採用に比べて、中途採用は経験やスキルを踏まえてピンポイントで行われるのが一般的です。そのため、当然ながら大量一括採用には適していません。

また、人材紹介サービスなどを利用する場合は、1人あたりの採用コストがかかってしまうのも難点です。こうした理由から、中途採用では新卒と比べて、少数精鋭への絞り込みがとても重要となります。

若手の成長を阻害する可能性がある

中途採用を増やしすぎると、自社の若手を登用する機会が減り、成長や昇進を遅らせてしまう面もある点にも注意が必要です。自社に若い従業員が多く在籍している場合、少し上位の役職で中途採用を行うと、新たに入ってきた人材によって若手の昇進の機会が損なわれてしまうケースもあります。

そうなれば、社内の人材が育たないだけでなく、組織内での不要な摩擦が生じてしまう可能性もあるでしょう。中途採用を行う場合は、既存の人員の年齢構成やキャリアプランなども踏まえて、慎重に判断することが大切です。

中途採用を成功させるためのポイント


中途採用にはさまざまなメリットがある一方で、新卒採用にはない難しさもあります。中途採用を成功させるためにおさえておきたい3つのポイントを確認しましょう。

採用基準を明確にする

中途採用では、人材とのミスマッチを避けるためにも、採用基準や条件を明確に設定することが大切です。必要な人材像を明確化し、採用基準にブレがないように準備することで、選考をスムーズかつ的確に行えるようになります。

そのためには、自社が中途採用を行う目的を改めて見直し、関係者全員に浸透させる必要があります。たとえば、新規プロジェクトの立ち上げに向けて実施するのであれば、それに適したスキルや経験を洗い出し、言語化したうえで共有しておきましょう。

採用条件が明確になっていれば、応募者側でも企業と自身の特性がマッチしているかを判断しやすくなるため、採用活動全体の効率が向上します。採用基準について、さらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてみてください。

(参考:『採用基準の決め方|役割や作成手順をテンプレートと例で解説』

スピーディな対応を意識する

転職活動中の人材は、一時的に無収入になってしまうとともに、自身の将来への不安も感じやすいものです。複数の企業の選考を受けている場合は、早く採用を決めてくれたところに入社を決めるのも自然な考えといえるでしょう。

そのため、選考段階においてはできるだけスピーディな対応を心がけ、人材採用の機会を逃さないようにすることが大切です。

応募者に十分な情報発信を行う

中途採用を成功させるためには、潜在層も含めて十分な母集団を形成できるかどうかが一つのポイントとなります。多くの人材に関心を持ってもらうことは、企業が質の高い採用活動を行うための土台となるのです。

転職者の多くは、さまざまな企業の情報をインターネットなどで詳しく調べ、そのうえで応募するかどうかを決断します。このとき、自社の情報が十分に開示されていなければ、充実した情報発信が行えている他社と比べて著しく不利になってしまうでしょう。

特に人材獲得競争が激しい業界であれば、必要に応じて自社の採用サイトをそろえるなどして、応募者に十分な情報発信を行える環境を整えることが重要です。また、選考段階においても、質問があればしっかりと自社の実情を伝える必要があります。

ポジティブな面だけをアピールするのではなく、ネガティブな面も誠実に伝えることが、採用後のミスマッチを未然に防ぐ手段となるのです。

企業の中途採用への取り組み事例


自社に合った形で中途採用の取り組みを行っていくには、すでに実績をあげている企業の事例を参考にすることも大切です。中途採用の取り組みで成功を収めた4社の事例を紹介します。

株式会社村田製作所

電子部品メーカーである株式会社村田製作所では、2000年代まではほぼ新卒採用の従業員で組織が構成されていましたが、2009年頃から中途採用の数を増やしました。中途入社の従業員が保有するスキルや経験が加わることで、スマートフォン分野の拡大や自動車の電装化などにうまく対応し、事業領域の拡大へとつなげています。

従業員の構成が変わることで、コミュニケーションのあり方やチームビルディングへの投資を行うようになりました。また、「貢献コース制度及び専門系管理職制度」を採用しており、優れた管理職の任用につなげています。

(参考:『中途採用者数が10年で20倍。多様化が進んだ村田製作所、変革の原点となった「2000年代の危機感」』

株式会社OS.UNITED

採用コンサルティング事業を手がける株式会社OS.UNITEDは、採用活動において自社が抱える課題を応募者に対して提示する取り組みを行っています。自社の透明度を高めるために、SNSを積極的に活用しており、「攻め」の情報発信に力を入れています。

求人票やHPだけでは伝わらない部分を、採用担当者自らがSNSや動画で発信することにより、応募者へ具体的なイメージを持ってもらうようにしているのが特徴です。

(参考:『中途採用でのSNS・動画活用。今、求職者の心をつかむ「透明度の高い」採用』

株式会社ニイミ(麺屋しずる)

麺屋しずるを展開する株式会社ニイミでは、飲食業界や販売サービス業以外の経験をしている「異業界・異業種の人材」に対して、積極的なアプローチを行っています。また、転職希望者に直接アプローチができるスカウトメールやダイレクト・ソーシングサービスも求人広告とあわせて活用しています。

長く安定して働きたいという人材や専門性を持った異業界出身者の採用につながっており、事業を拡大していく原動力につながっているといえるでしょう。

(参考:『働き方改革は中途採用の応募者増に効果あり!困難を極めた店長候補4名の採用に成功するまで』

株式会社ボーダレス・ジャパン

社会起業家集団である株式会社ボーダレス・ジャパンの中途採用施策は、「募集要項をなくす」という画期的なものであるのが特徴です。自社の募集要項に沿って応募してもらうのではなく、応募者のやりたいことや価値観に合わせて、スキルや経験に関係なく仕事を提案していく姿勢をとっています。

「募集要項をなくす」という中途採用ページをリリースしてから、わずか11日で100件の登録があり、面談希望は20件という成果を得ました。SNSで拡散される動きも自然と広がり、リファラル採用にもよい影響を与えているといえます。

(参考:『「募集要項はありません」。中途採用の常識を覆したボーダレス・ジャパンの狙いとは?』

まとめ

企業にとって、中途採用は急を要する人員の確保や即戦力の補充を行える有効な手段となります。新卒者と比べて一定の経験を積んだ人材を獲得できるため、育成コストが抑えられるとともに、組織内に新たなノウハウや知識をもたらす可能性もあります。

一方で、価値観のミスマッチが起こりやすい点や、既存の従業員の成長を妨げてしまう恐れがある点など、いくつかの注意点があるのも確かです。

中途採用のメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、自社の採用戦略にどのように活かしていけるのかをじっくりと検討してみましょう。

(制作協力/株式会社アクロスソリューションズ、編集/d’s JOURNAL編集部)

1冊でわかる!中途採用面接ガイド

資料をダウンロード