【フォーマット付】従業員代表の役割は?選出方法は主に2つ!例を挙げてかんたん解説

社会保険労務士法人クラシコ

代表 柴垣 和也(しばがき かずや)【監修】

昭和59年大阪生まれ。人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。

従業員代表とは【従業員の過半数を代表する者】
従業員代表の権限:労働組合との違い
従業員代表の主な役割:36協定、就業規則の届け出に関する意見書など
従業員代表の選出方法は主に2つ
従業員代表を選出した後は全体に案内する:従業員代表選任届フォーマットをDL
従業員代表の任期は1年が多い
従業員代表に関するよくある疑問
従業員代表のメリット・デメリット

「従業員の過半数を代表する者」を意味する「従業員代表」。従業員の団体意思を取りまとめて、企業側に提言する役割を担います。労務管理を遂行する上で重要な役割を果たす従業員代表は、どのように選出すればよいのでしょうか。今回の記事では、従業員代表の定義や役割、選出方法などについて解説します。代表者の選出時に役立つ「従業員代表選出内規」と「従業員代表選任届」のフォーマットもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

従業員代表とは【従業員の過半数を代表する者】

従業員代表とは、「従業員の過半数を代表する者」を意味します。従業員の団体意思を取りまとめ、企業側に提言することが、主な役割です。英語では「Employee representative」または「Employee representation」と表記します。

労働基準法により、従業員の過半数で組織する労働組合がない事業所では、従業員代表による労使協定の締結が義務付けられています。大企業では、労働組合が組織されていることが多いため、労使協定を締結する際は経営者と労働組合が行いますが、日本企業の9割以上を占める中小企業では労働組合がないことから、従業員代表の選出が必要です。

従業員代表の選出は労働基準法に定められている

従業員代表の選出方法については、労働基準法施行規則第6条の2第1項2号において「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者」であることと定められています。従業員代表の選出要件は、以下の2つです。

①管理監督者でないこと
②使用者の意向に基づき選出された者でないこと

罰則はある?

従業員代表の選出手続きにおける違反に対して、罰則規定はありません。しかし、選出手続きに違反して選出された従業員代表が締結した労使協定は、無効とされます。また、使用者は従業員代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行できるよう、配慮が必要です。

原則事業所ごとに1名選ばれる

労使協定は事業所ごとに締結されるものです。そのため、原則として事業所ごとに従業員代表を1名選出する必要があります。

従業員代表に選ばれる従業員の範囲:アルバイト、管理職などはなれる?

従業員代表に選ばれる従業員の範囲は、労働基準法上の管理職を含む「労働者全員」です。従業員代表の2つの選出要件を満たしていれば、正規労働者だけでなく、パートタイマーやアルバイトなどの非正規労働者や出向者も対象となります。

ここで言う「管理監督者」とは、労働時間の決定やその他の労務管理について、経営者と一体的な立場にある従業員のこと。管理監督者かどうかは、役職の名前ではなく「職務内容」や「責任と権限」などによって判断されます。管理監督者を従業員代表に選出することはできませんので、注意しましょう。
(参考:『【社労士監修・2020最新版】管理監督者について企業が注意すべき9つの決まり』)

従業員代表の権限:労働組合との違い

従業員代表と労働組合との権限の違いを、下の表にまとめました。

従業員代表 労働組合
明確な法的地位 認められていない 認められている
適用範囲 非組合員・管理職も含めた全ての従業員 組合員のみ

従業員代表には、労働組合のような明確な法的地位が認められていません。企業と従業員代表、労働組合が結んだ協約・協定の適用範囲も異なります。企業と労働組合で締結した労働協約は、組合員のみに適用されます。一方、企業と従業員代表との間で締結された労使協定は、一部を除き、組合・非組合員の区別に関係なく適用されます。

従業員代表の主な役割:36協定、就業規則の届け出に関する意見書など

労務協定として代表的な「36協定」や、就業規則の届け出などに関する従業員代表の主な役割について解説します。

①就業規則に関する意見書の作成

就業規則とは、企業と従業員との約束事を明文化した、職場におけるルールブックです。常時10名以上の従業員を雇用する企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届け出が義務付けられています。就業規則の届け出には、添付資料として従業員代表による意見書が必要です。従業員代表は、企業側から求められる就業規則に関する意見を書面に書き、署名・押印して提出します。特に意見がない場合でも、「特に意見はありません」などと記入します。

(参考:『【社労士監修・サンプル付】就業規則の変更&新規制定時、押さえておきたい基礎知識』)
(参考:東京労働局 労働基準法関係 様式集

変形労働時間制・賃金・懲戒・不利益変更に関わる就業規則変更なども含まれる

従業員代表の役割には、変形労働時間制に関する企業との労使協定の締結や、就業規則に定められた賃金や懲戒などの規程の制定・改定時に行う意見陳述なども含まれます。不利益変更に当たらないか従業員代表として意見を求められた際には、「ほかの従業員からの意見聴取」や「資料作成」などを行うこともあるでしょう。
(参考:『【弁護士監修】不利益変更を実施する場合の対応方法とこんな時どうする?16の事例』『【社労士監修・サンプル付】就業規則の変更&新規制定時、押さえておきたい基礎知識』『【社労士監修・テンプレート付】賃金規程の書き方・変更方法と注意すべきポイント』『【弁護士監修】懲戒処分とは?種類と基準―どんなときに、どんな処分をすればいいのか―』)

②36協定(時間外労働・休日労働に関する協定書)の締結

36協定とは、労働者に法定時間を超えて働いてもらう場合や休日出勤をお願いする場合に必要な協定のこと。従業員代表には、36協定に記載された内容について会社と協議し、必要があれば内容の変更を求め、最終的に署名・押印するか否かを決定する権限があります。36協定の内容を変更する際も、従業員代表は同様の役割を担います。
(参考:『【弁護士監修】36協定は違反すると罰則も。時間外労働の上限や特別条項を正しく理解』)

2021年4月1日から押印廃止。引き続き電子申請が可能に

テレワークの普及や業務効率化の推進のため、厚生労働省は、2021年4月1日から残業時間に関する労使間の36協定など約40の企業の労働関係書類について、押印・署名を廃止。36協定の適正な締結に向けて、従業員代表に関するチェックボックスが新設されました。電子申請による届け出は、継続して行われています。なお、施行日の前であっても、公布日(2020年12月22日)以降は、新様式(押印欄のない様式)による届け出をすることも認められます。
(参考:厚生労働省『36協定届が新しくなります』)

③派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定の締結

派遣労働者の同一労働同一賃金の労使協定の締結においても、従業員代表は派遣元事業主と労使協議を行い、労務協定の事項を定める必要があります。派遣労働者の従業員の意思を反映するために協定の内容を確認したり、必要に応じて意見交換をしたり、双方の合意に向けた活動を行います。
(参考:厚生労働省『派遣労働者の同一労働同一賃金 過半数代表者に選ばれた皆さまへ』)

④安全衛生委員会のメンバー推薦

安全衛生委員会とは、安全に関する事項を協議する「安全委員会」と、衛生に関する事項を協議する「衛生委員会」の両方の役割を兼ねた組織です。従業員代表は、労働安全衛生法に基づき、安全衛生委員会の統括管理者以外の委員を推薦する役割などを担います。
(参考:厚生労働省『安全衛生委員会を設置しましょう』)
(参考:『【よくわかる】労働安全衛生法とは?違反しないために企業は何をするべき?重要点を解説』)

従業員代表の選出方法は主に2つ

従業員代表は、候補者の信任を問い、過半数の信任を得ることにより、選出されます。従業員代表を選出する流れに沿って、候補者の募り方や2つの主な選出方法について見ていきましょう。

立候補者の募り方

まずは、立候補者を募ります。従業員代表の選出にあたり、「労使協定の締結などを行うための代表を選出すること」を明確にした上で、期日を指定して立候補者を募りましょう。

他者からの推薦も可能

立候補者がいない場合には、他者からの推薦を受け付けます。立候補者を募る際と同様、期日を指定し、適任者と思う人を推薦してもらいましょう。

候補者を集めることが難しい場合

候補者を集めることが難しい場合、まずは「従業員代表にふさわしいと思われる従業員」または「適任者を推薦してくれそうな従業員」を探し、打診しましょう。企業が従業員側に「立候補してもらえないか」「代表者として適任な人物を推薦してくれないか」と打診したとしても、その先に「民主的な手続き」で代表者を選出したのであれば、結果的に有効な労働者代表の選出がなされたと認められます。

選出方法

主な選出方法は、「メール」「選挙による投票」の2つです。選出手続きとして、労働者の過半数が候補者の選任を支持していることが明確になる「民主的な手続き」を踏む必要があります。

1:メール

「従業員代表を選出する目的」や「立候補者名」を明らかにした上で、信任か不信任かの旨を返信するように記載したメールを、投票権を有する従業員に送付します。また、メールの代わりに、同様の内容を社内ネットワークに掲示することも可能です。

(記載例)

【従業員代表の選出についてのお知らせ】

◯◯年◯月◯日付で通知した当社5事業所の従業員代表立候補者の募集に対し、下記の方が立候補されていますのでご通知いたします。

立候補者:本社   ◯◯◯◯
◯◯支店 ◯◯◯◯
◯◯支店 ◯◯◯◯

つきましては、上記の候補者について信任投票を実施します。◯◯年◯月◯日から◯月◯日◯時までの間に、会社へ登録しているメールアドレスよりメール本文へ氏名、スタッフNO.を記載の上、「信任」とする方は「信任」と明記、「不信任」とする方は「不信任」と明記して送信願います。送信された回答より「信任」が従業員総数の過半数以上の場合、従業員代表として信任されたことになります。

●信任投票の送付先
(メールアドレス)

2:選挙による投票

複数の立候補者がいる場合には、その場での多数決や投票などによって代表者を決定します。法律では、どのような手続きを行ったのかについての記録を残す義務までは求められていません。しかし、労務トラブルを防止するためにも、同意書やメールなどで記録を残し、保管しておくとよいでしょう。

選出したら、同意書を回覧しよう

選出された代表者について、過半数の従業員が同意していることを記録として残しておくために、同意書を回覧し、従業員に署名・押印を求めます。同意書には、「私は、◯◯年◯月◯日から1年間において、以下の労使協定の締結等を行う従業員の代表として、◯◯◯◯(代表者の氏名)を選出することに同意します」といった一文とともに、「時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)」「賃金の控除に関する労使協定」などの労使協定の内容を記載します。最後に、同意の意思を表す「自筆の氏名と押印欄」を設けましょう。

(記載例)

◯◯◯◯年◯◯月日
株式会社◯◯◯◯

従業員代表選出の同意書

私は、◯◯◯◯年◯◯月◯◯日から1年間において、以下の労使協定の締結等を行う従業員の代表として、◯◯◯◯を選出することに同意します。

(1)時間外労働、休日労働に関する労使協定(36協定)
(2)賃金の控除に関する労使協定
(3)賃金の口座振込に関する労使協定
(4)年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定
(5)育児休業、介護休業等の適用除外に関する労使協定
(6)1年単位の変形労働時間制に関する労使協定
(7)一斉休憩の適用除外に関する労使協定
(8)フレックスタイム制に関する労使協定
(9)就業規則の作成及び変更に際しての意見聴取

氏名(自筆) ㊞      氏名(自筆) ㊞
1             11
2             12
3             13
4             14
5             15
6             16
7             17
8             18
9             19
10             20

選任方法などはあらかじめ規程で定めておく:フォーマットをDL

従業員代表を選出する際に、勤続年数の長いベテラン従業員をとりあえず従業員代表にしてしまうというケースがあります。しかし、この方法では「従業員代表が従業員の過半数によって選ばれたかどうか」が明確ではありません。労働基準監督署の査察が入った際、「従業員代表の選出方法に問題あり」と判断されてしまう可能性があります。選出方法に問題だと見なされないよう、選任方法などはあらかじめ規程で定めておきましょう。

従業員代表を選出した後は全体に案内する:従業員代表選任届フォーマットをDL

従業員代表を選出した後は、社内に周知することが大切です。掲示方法として「従業員代表選任届」を作成し、適宜提出しましょう。従業員代表選任届には、「労務協定の内容」「選任年月日」「従業員代表の氏名」などを記載します。従業員代表選任届のフォーマットもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

従業員代表の任期は1年が多い

従業員代表の任期は、法律上では特に定められていません。実際には、「36協定の有効期間は1年間」「事業所における人事異動や退職、入社などは1年度をサイクルとしてなされることが多い」ことなどを考慮して、任期は1年程度と設定している企業が多いようです。

従業員代表に関するよくある疑問

従業員代表に関して、よくある疑問をまとめました。

Q.「過半数労働組合がない場合、過半数を代表する者との間で締結する」にある「過半数」の定義は?

「過半数労働組合」および「過半数を代表する者」の「過半数」とは、管理職やパートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、出向社員などを含めた「当該事業所の在籍者の過半数」のことです。

Q.従業員代表に指名された従業員は拒否できる?

従業員代表に指名されたとしても、本人の意思により拒否できます。従業員代表者になることを拒否された場合には、代わりに別の人を選出しましょう。

Q.従業員代表の給与はどうなる?手当はつく?

従業員代表の業務は労働契約上の業務には該当しないことから、給与(賃金)も発生しないと考えられます。手当については、従業員代表が会社の提案を無批判に承諾することを避けるため、支給は望ましくないでしょう。

Q.従業員代表として行った業務は労働時間扱いになる?

従業員代表としての活動は、使用者の指揮命令下で行われることではないため、労働時間とは言い難いでしょう。従業員代表はさまざまな役割を担っていますが、それらは労働契約上の契約行為として使用者から指示されたものではありません。基本的には労働時間扱いにはなりませんが、協定締結などを円滑に行うために必要な活動について、賃金の控除なく所定労働時間内に行わせることは実務上有効だとの考えもあるようです。

Q.従業員代表が途中で退職や休職をして不在になった場合はどうなる?

従業員代表が退職しても、協定の効力そのものがなくなるわけではありません。たとえば、36協定は通常1年に1回届け出を行うため、次回は新しい従業員代表を選出して届け出をするとよいと考えられます。従業員代表が不在になった場合は、再度候補者を募り、適切な手続きを踏んだ上で、後任者を選出しましょう。

従業員代表のメリット・デメリット

従業員代表を選出するメリットとして、従業員代表を選ぶ過程を通じて「従業員に企業経営への参加意識を持ってもらえる」ことが挙げられます。加えて、「労使間の紛争やトラブルを適切に解決する」「従業員間はもとより労使間の風通しをよくし、トラブルを未然に防止する」といった効果も期待できるでしょう。そのためにも、みんな信頼されている従業員を代表に選出することが重要です。

従業員代表のデメリットを感じるのは、主に選ばれた従業員側です。従業員代表に選出されることで、負担や責任を重く感じてしまう人もいるでしょう。企業側には従業員代表が感じるデメリットを受け入れ、「従業員代表に対する不利益な取り扱いの禁止」を徹底するなど、誠意ある対応が求められます。

まとめ

従業員代表には、従業員の団体意思を取りまとめて、企業側に提言する役割があります。36協定をはじめとした労務協定を適切に締結するために、従業員代表の選出は不可欠です。「労使協定の締結などを行うための代表を選出すること」を明確にした上で、「メール」や「選挙による投票」など民主的な方法で選出することが求められます。今回の記事を参考に、従業員代表を適切に選出しましょう。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/社会保険労務士法人クラシコ、編集/d’s JOURNAL編集部)