中途採用の“都市伝説”18選――その常識、まだ信じますか?

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  • 本記事には、人事・採用担当者の間で長年語り継がれてきた“都市伝説”が多数登場する。中には、現在も真実として信じられているものも含まれる
  • 転職回数、知名度、即戦力、人間関係。採用の現場で当たり前とされてきた考え方の中には、データや実態とズレ始めているものも存在する
  • 都市伝説だからおそろしいわけではない。本当に怖いのは、「昔は正しかった常識」を今も疑わずに信じ続けることだ

会社の命運を左右しかねない人材採用の現場では、ときに奇妙なうわさが語り継がれる。いわく「転職回数が多い人はすぐ辞める」「大手企業出身者は優秀」「部下から相談がないうちは退職の心配はない」……。

それらは長い年月をかけ、常識として受け継がれてきた。しかし、その常識は本当に正しいのだろうか。もしかするとそれは、いつの間にか事実として扱われるようになった“都市伝説”なのかもしれない。

今回は、中途採用の現場で今なお語られる18の都市伝説を紹介する。あなたの会社にも、すでに取りついてしまっている思い込みが――。

「面接」にまつわる都市伝説

まずは面接にまつわる都市伝説から紹介しよう。履歴書の数行から人物像を見抜き、1時間ほどの対話で将来の活躍を予測する。そんな面接の世界には、昔から数多くの“定説”が存在してきた。だが、その中には今なお真実として語られながらも、実態は不可解なものが紛れ込んでいるかもしれない。

1.「転職回数が多い人はすぐ辞める」

――とよく聞くが、短期離職が多い人ほど“自分に合う会社では長くはたらく”という見方もある。

転職回数が多い転職希望者には、どうしても定着への不安を抱きがちだ。しかし、その人は単に合わない環境から早く撤退しているだけの可能性もある。裏を返せば、自分に合った環境を見つけた際には長くはたらく可能性もあるのだ。定着率を左右するのは転職回数そのものではなく、会社との相性なのかもしれない。

2.「転職希望者が本当に聞きたいことは“逆質問”で聞いてくる」

――とよく聞くが、実は本当に聞きたいことほど、転職希望者は口にしづらいものだ。

給与、人間関係、社風、上司との相性。転職後の満足度を左右する重要なテーマほど、「聞いたら印象が悪くなるのでは」と考える人は少なくない。その結果、本当に知りたいことを聞けないまま選考が進むこともある。質問が少ないから興味がないとは限らない。むしろ沈黙の裏側にこそ、不安や疑問が隠れている場合があるのだ。

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3.「経験豊富なベテラン面接官の評価は信頼できる」

――とよく聞くが、たとえベテランであっても、評価基準が属人化していれば、評価がブレてしまう可能性がある。

経験豊富な面接官には独自の判断基準が蓄積されている。それ自体は悪いことではない。しかし基準が属人化すると、同じ転職希望者でも面接官によって評価が変わるという現象が起こりやすくなる。採用の質を安定させるのは、優秀な面接官個人ではなく、評価基準や面接設計にあるのかもしれない。

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「母集団形成」にまつわる都市伝説

採用活動というと、主な手法として転職サイトや人材紹介サービス、スカウトサービスなどを思い浮かべる人が多いだろう。だが、それらの向こう側には、まだ転職を決意していない膨大な人々が存在している。そして企業は時として、その存在を見落としてしまう。ここからは母集団形成にまつわる都市伝説を見ていこう。

4.「転職活動に本気じゃない人にアプローチするのは効率的でない」

――とよく聞くが、転職に向けてまだ本気で動き出していない、いわゆる“ゆる転職層”ほど慎重に会社を選んでいるという説もある。

彼らは今すぐ転職したいわけではない。だからこそ、企業選びに失敗したくないという意識が強い。一見すると温度感が低く見えるかもしれないが、それは本気度が低いからではなく、判断を急いでいないだけとも考えられる。動きがゆっくりだからといって、採用対象から外してしまうのは早計かもしれない。

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5.「採用コンテンツは、自社の魅力を発信し続けることが大切」

――とよく聞くが、自社の話ばかりでは、そもそも興味がない人には届かない。

企業が伝えたいことと、転職希望者が知りたいことは必ずしも一致しない。どれほど魅力的な制度や福利厚生があったとしても、転職希望者に伝わらなければ存在しないのと同じだ。採用広報で重要なのは「何を伝えるか」だけではない。まずは「知ってもらえるか」。相手にとって有益な情報を発信した結果として自社への興味が生まれる。そんな遠回りに見えるやり方が、実は最短ルートなのかもしれない。

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6.「採用手法を増やせば、多くの転職希望者に出会える」

――とよく聞くが、見ている層が同じなら出会う人も同じだ。

掲載する求人媒体を増やし、取引するエージェントを拡大し、スカウトサービスを追加する。それだけで母集団が広がるとは限らない。なぜなら、どの手法も同じ転職顕在層を対象としている場合があるからだ。その結果、転職希望者との出会いが増えるどころか、競合企業との奪い合いが激しくなることもある。本当に見直すべきなのは採用手法の数ではなく、「誰に届けるか」なのかもしれない。

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「採用戦略」にまつわる都市伝説

採用がうまくいかないとき、人は理由を探したくなる。予算が足りないのかもしれない。自社の知名度が低いせいかもしれない。若手の価値観が変わったからかもしれない。しかし、その原因だと思っているものこそが都市伝説だったとしたら?

7.「採用予算を増やせば、良い人材に出会いやすくなる」

――とよく聞くが、うまくいっている企業ほど、予算より先に“設計”を見直しているという説もある。

採用要件は明確か。経営層と現場の認識は一致しているか。面接基準は統一されているか。こうした土台があいまいなまま予算だけを増やしても、採用活動は空回りしやすい。実際には、体制整備や現場連携の見直しによって成果を改善している企業も少なくない。予算不足だと思っていた問題が、実は設計不足だったというケースもあるのだ。

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8.「認知度が低い会社は、まず知名度を上げるべき」

――とよく聞くが、重要なのは“知名度”より“想起度”という説もある。

転職市場では、有名企業ほど有利に見える。しかし実際には、転職を考えた瞬間に候補として思い出してもらえるかどうかが重要になる。転職顕在層には大量のスカウトや求人情報が届く一方で、ゆる転職層との接点はまだまだ限られている。知名度が高くなくても、「そういえばあの会社があった」と思い出してもらえる企業は強いのだ。

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9.「新社会人は、しばらく会社に落ち着き、貢献してくれる」

――とよく言われているが、その前提はすでに揺らぎ始めている。

2025年4月に転職サイトへ登録した新社会人は、2011年比で30倍超になると推計されている。たしかに、かつては「入社したらまず3年は頑張る」が常識だった。しかし現在は、入社直後から情報収集を始めること自体が珍しくない。今どきの若手の多くにとって、最初に入社した会社はキャリア形成のスタート地点にすぎないのだ。企業側だけが昔の常識を信じていると、気づかないうちに世代間の認識ギャップが広がってしまうかもしれない。

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10.「有名な大手企業出身者は優秀」

――とよく聞くが、優秀なのは本人ではなく“環境”だった可能性もある。

たしかに大手企業には優秀な人材が集まっているだろう。しかし、その人自身がどのような役割を担い、どのような成果を出してきたのかは別問題だ。分業体制の中で限られた領域しか担当していなかった人もいれば、豊富なリソースに支えられて成果を出していた人もいる。逆に、小規模な組織で幅広い業務を担ってきた人のほうが、変化の激しい環境で力を発揮するケースもある。

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「オンボーディング」にまつわる都市伝説

入社が決まればひと安心。そう考えている人事・採用担当者は少なくない。しかし、採用活動の怪異は入社後にも続いている。むしろ、本当に怖い話はここから始まるのかもしれない。

11.「入社後のオンボーディングで定着率は上がる」

――とよく聞くが、オンボーディングは入社前から始まっているという説もある。

ある調査では、入社承諾者が入社までに最も求めている情報は「入社までのタスク共有・段取り説明」で26.7%だった。企業側は入社後の研修やフォローに目を向けがちだが、転職希望者は入社前から不安を抱えているのだ。入社承諾後に連絡が少なくなり、放置されたように感じた結果、辞退につながるケースもある。オンボーディングのスタート地点は「初出社の日ではない」のかもしれない。

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12.「入社後の最大の不安は、仕事についていけるかどうか」

――とよく聞くが、入社1カ月以内の不安で最も多かったのは「職場の人間関係になじめるか」で56.5%だったという調査結果もある。

新しい環境に飛び込む人は、仕事内容以上に人間関係を気にしている。誰に相談すればいいのか。職場になじめるのか。孤立しないだろうか。新入社員が最初に向き合う不安は、業務マニュアルではなく、人間関係なのかもしれない。

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13.「上司と部下の関係は、時間をかければ自然と良くなる」

――とよく聞くが、“待てば改善する”は幻想かもしれない。

上司に失望してから転職を決意するまでの期間は「1~3カ月未満」が最多で、約8割が1年未満に転職を決意しているという調査結果もある。 企業が「そのうち関係性は良くなるだろう」と考えている間にも、部下の心は離れていく。気づいたときには、すでに手遅れになっているケースも少なくない。

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14.「部下から相談がなければ問題がない証拠」

――とよく聞くが、その沈黙は危険信号かもしれない。

上司への失望理由として、「相談しても真剣に聞いてもらえなかった」が32.4%で2位に入ったという調査結果もある。相談がないのは信頼されているからではない。「どうせ言っても無駄だ」と諦められている可能性もある。一見すると波風の立っていない静かな職場ほど、見えない問題が進行していることもあるのだ。

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15.「若手育成はOJTをしっかりやることが重要」

――とよく聞くが、OJTに頼りすぎると、若手の早期離職リスクを高めるという説もある。

十分な前提知識や学習機会がないまま現場に投入されれば、成功体験より失敗体験が先に積み上がりやすい。本人は成長している実感を得られず、自信も失いやすくなる。OJTを重視することと、OJTに依存することは別問題なのだろう。

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16.「即戦力は教育コストがかからない」

――とよく聞くが、即戦力にも想定以上の再適応コストがかかるという説もある。

経験者はたしかに何かしらのスキルを持っている。しかし同時に、前職で成功したやり方も引きずっている。その成功体験が強いほど、新しい組織への適応に時間がかかることもある。若手人材よりも経験豊富な即戦力となる人材のほうが、立ち上がりが遅れる。そんな逆転現象が起きることもある。

「転職希望者の“心理”」にまつわる都市伝説

転職活動は、合理的な意思決定の連続に見える。だが実際には、転職希望者の感情の揺れや家族の事情など、さまざまな要因が意思決定に大きく影響している。数字だけでは見えない心理の世界にも都市伝説が存在するのだ。

17.「入社は本人が納得していれば問題ない」

――とよく聞くが、本人以外の意思決定者が存在する場合もある。

転職希望者本人は入社を決意していても、パートナーや家族が反対し、最終的に辞退になるケースは少なくない。勤務地、年収、はたらき方。転職は本人だけの問題ではなく、家族全体の生活にも影響するのだから当然かもしれない。転職希望者を口説くことに成功しても、その先に別の意思決定者がいる可能性があることを忘れてはならないのだ。

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18.「若手には丁寧にたくさんの情報を伝えるべき」

――とよく聞くが、情報量の多さが価値になるとは限らない。

タイパ(タイムパフォーマンス)を重視する若手世代にとって、採用サイトや動画を見れば確認できる内容を、説明会などの場で長時間説明されても魅力には映りにくい。むしろ求められているのは、「この場でしか聞けない話」だ。社員の本音、リアルな仕事の話、組織の空気感。そうした情報に触れられる体験価値がなければ、説明会そのものが選ばれなくなる可能性もある。

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<編集後記>

おわかりいただけただろうか。中途採用の世界には、長い年月をかけて語り継がれてきた数多くの都市伝説が存在する。もちろん、そのすべてが間違いというわけではない。かつては正しかったものもあるだろう。実際に経験則として機能していた考え方もあるはずだ。

しかし、採用市場は変わり続けている。はたらく人の価値観や転職活動のあり方も変わった。その変化の中で、いつの間にか古い常識だけが取り残されてしまうことがある。本当に怖いのは都市伝説そのものではない。それを疑うことなく信じ続けてしまうことだ。あなたの会社でまことしやかに語られている中途採用の常識は、今でも本当に正しいのだろうか。

企画・編集/海野奈央(doda人事ジャーナル編集部)、岩田悠里(プレスラボ)、文/多田慎介

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