離職の原因は何が多い?直近の離職データと対策方法を解説

離職の原因は何が多い?直近の離職データと対策方法を解説

d’s JOURNAL編集部

離職に至る原因は従業員によって異なりますが、統計的な観点では、ある程度共通している部分があるとわかります。そのデータを基に自社の状況を分析すれば、自社のどこに問題があるのか、またどのような対策を講じれば良いのかを把握できるでしょう。

そこで本記事では、厚生労働省のデータを参考に、従業員が離職する8つの主な原因を解説します。記事後半では離職防止のための具体的な対策も紹介しているので、併せてご覧ください。

離職の主な原因一覧

まずは、従業員が離職してしまう主な原因を、厚生労働省の公開しているデータを参考にし、実際の現場で語られる理由や関連項目を加え、本記事独自に整理をした上で解説します。

【離職の主な原因一覧】
●労働条件への不満がある
●給与への不満がある
●人間関係のストレスがある
●お手本になる上司や先輩がいない
●キャリア形成が見込めない
●やりたいことと実際の業務のギャップがある
●過剰なプレッシャーを感じている
●社風になじめない

(参照:厚生労働省『令和6年雇用動向調査結果の概況』)

労働条件への不満がある

ワーク・ライフ・バランスが重視される昨今では、労働条件への不満から離職を決める人も多く存在します。長時間労働が多い、また休日出勤が避けられないなどの状況が続くと、たとえ給与が高かったとしても、不満を感じて離職してしまう可能性があるのです。

このほかにも「有給休暇制度はあるけれど、休暇を取りづらい雰囲気が社内にあり機能していない」といった問題が、離職の原因となり得ます。また、出産や育児、介護などで活用できる福利厚生がない場合にも、より制度の充実したほかの企業に従業員が転職してしまうと考えられます。

給与への不満がある

「給与や賞与が少ない」という不満は、離職につながる代表的な原因の一つです。これは単に給与が低いというだけではなく「業務内容や業界水準に見合わない」「労働条件とのバランスが取れていない」など、任されている業務とのバランスが問題となる場合もあります。

また、給与や賞与の査定基準が不透明であることも、給与に関する不満の一つとして考えられます。特に「ほかの従業員は評価されているのに、自分の給与は上がっていない」といった不公平な状況になってしまうと、従業員のモチベーションは大きく下がってしまうでしょう。

人間関係のストレスがある

社内の人間関係に関するストレスも、主要な離職理由の一つとして挙げられます。上司や同僚との関係が良好ではない、また職場全体の雰囲気が悪いなどの状況では、給与や待遇に問題がなくとも従業員は離職してしまうでしょう。

また「同僚とうまく意思の疎通が図れない」など、日常的なコミュニケーションでのちょっとした問題も、積み重なることで離職の原因となる場合があります。そういった些細(ささい)なトラブルから解消していくためにも、従業員同士が気軽に交流できる職場環境を、企業側が率先してつくり上げていくことが大切です。

お手本になる上司や先輩がいない

スキル面や行動面で模範となるような上司、あるいは先輩従業員がいるかどうかは、若手従業員に自社で長くはたらいてもらう上で重要なポイントとなります。裏を返せば、そういった従業員がいないということが、若手従業員の離職を招く要因となり得るわけです。

お手本となる従業員がいないと、若手従業員が自身のキャリアや企業の将来性に不安を感じて、自社を見限ってしまうかもしれません。また、何かトラブルに直面しても頼れる相手がいないので、若手従業員が問題を一人で抱え込んでそのまま離職してしまう、ということも起こり得ます。

キャリア形成が見込めない

教育制度や評価体制が不十分であるなどの問題があると「ここではキャリアを積めない」と従業員が感じて、離職してしまう可能性があります。

また、先述した「お手本になる上司や先輩がいない」の問題も、従業員のキャリア形成に大きな影響を与えます。ロールモデルが存在しない企業では、従業員がどのように業務に励めば良いのかがわからなくなり、結果として自社を離れていってしまうのです。

この問題を放置すると、特に成長志向の強い従業員が制度の充実した他社へ次々と流れていき、自社の発展に大きな影響を与えることになるでしょう。

やりたいことと実際の業務のギャップがある

従業員のやりたいことと実際の業務にギャップが生じると、やりがいや面白みを感じられず、離職に至ってしまう場合があります。

新卒者の場合は、業務に対する具体的なイメージを持てていないために、事前に説明を聞いても業務の実情を理解できない、ということが少なくありません。一方で中途採用では、求人に掲載されていた情報や入社前に聞かされていた業務内容との乖離(かいり)、つまり採用時点のミスマッチが原因となるケースが多いと考えられます。

認識を擦り合わせられないまま選考が進んだ場合、入社後に「自分のスキルや経験が活かせない」という事態に気付き、人材が早期離職を考えてしまうのです。

過剰なプレッシャーを感じている

厳しいノルマが課せられている、また重大な責任を伴うプロジェクトを任されているなどで過剰なプレッシャーがかかり、それが原因で離職してしまう人もいるでしょう。特に責任感の強い従業員ほど、多少無理をしてでも業務を遂行しようとして、心身ともに疲弊が重なり突然辞めてしまう、ということが起こり得ます。

上司や先輩従業員が適切にフォローできれば上記のような事態も防げますが、職場全体で業務量が多い企業ではそれも難しいかもしれません。そのためこの問題を解決するには、従業員一人ひとりへのフォローを手厚くするだけではなく、全社的に業務内容を見直すなどの抜本的な対応が必要となる場合もあります。

社風になじめない

会社の方向性や経営陣の考えに納得できないことも、離職の原因となり得ます。特に、組織体制の変革などで経営層の入れ替わりが起こったときには、従来との価値観の違いに戸惑い、ベテランの従業員であっても会社を離れてしまうかもしれません。

また、社内の雰囲気になじめなかったり、周囲の従業員とのスタンスが合わなかったりして、離職を考えてしまうケースもあるでしょう。ほかにも、社内の細かなルールや業務の進め方、プライベートとの切り替えに関する考え方などでの相違が、離職のきっかけとなり得ます。

若年労働者の離職原因ランキングTOP3

前段では年代共通の離職原因を整理しましたが、ここからは若年層(15~34歳)に特有の傾向を、厚生労働省の調査結果(令和5年)を基にTOP3を紹介します。

卒業後初めて勤務した会社をやめた主な理由別在学していない若年労働者割合

(引用:厚生労働省『令和5年若年者雇用実態調査の概況』)

【若年労働者の離職原因ランキングTOP3(複数回答3つまで)】
1.労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった:28.5%
2.人間関係が良くなかった:26.4%
3.賃金の条件が良くなかった:21.8%

離職原因として最も多かったものは「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」です。ワーク・ライフ・バランスを重視する人が多い今日では、自分に合ったはたらき方が実現できない企業は好まれない傾向にあることがうかがい知れます。

「人間関係が良くなかった」が次点にあることも、この点に少なからず関係しているでしょう。ストレスが少なく心穏やかにはたらける職場のほうが、プライベートを充実させるという点でも優先度が高いものと考えられます。

一方で、賃金水準に関する理由で離職を検討した人も数多く存在します。採用の売り手市場が続く昨今では、同じ業務内容で給与や賞与が高い職場を求めて、上昇志向の強い人材はそうした企業へと流れてしまうのです。

若年正社員の離職原因ランキングTOP3

前述の若年労働者から対象を正社員に絞ったデータに基づくと、離職原因のTOP3は以下のようになりました。

転職しようと思う理由別若年正社員割合

(引用:厚生労働省『令和5年若年者雇用実態調査の概況』)

【若年正社員の離職原因ランキングTOP3(複数回答3つまで)】
1.賃金条件の良い会社に代わりたい:59.9%
2.労働時間・休日・休暇の条件が良い会社に代わりたい:50.0%
3.仕事が自分に合った会社に代わりたい:41.9%

賃金に関する原因が1位となっており、正社員の場合は待遇の良い職場ではたらきたいという想いがより強いとわかります。一方で、労働条件を理由に離職を検討している人も賃金に関する原因と変わらず多く存在しています。

このことから、「賃金」と「労働条件」は、雇用形態にかかわらず気にする人が多い傾向があるとわかるでしょう。

先ほどのランキングと異なる点としては「仕事が自分に合った会社に代わりたい」という原因が3位にある点が挙げられます。責任の重い仕事を任されることが多い正社員では「自身に合った仕事がしたい」あるいは「この仕事はやりたくない」という想いが、より強く現れるのだと考えられます。

勤続年数別の離職原因

勤続年数によっても主な離職原因は変わってきます。厚生労働省の同資料を参考に、勤続年数ごとの代表的な離職原因とその割合を以下に整理しました。

【勤続年数別の代表的な離職原因とそれぞれの割合(複数回答3つまで)】
※割合の高い3項目を抜粋

勤続年数 賃金の条件が良くなかった 労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった 人間関係が良くなかった
3カ月未満 22.4% 40.8% 52.3%
3カ月~6カ月未満 11.1% 32.5% 40.1%
6カ月~1年未満 15.2% 32.4% 37.4%
1~2年未満 22.3% 29.1% 25.1%
2~3年未満 30.0% 30.3% 23.1%

この表からわかるとおり、勤続1年未満では、人間関係を理由に離職を決めた人の割合が多い傾向にあります。入社直後で新しい人間関係になじめない状況が続き、そこで生じるストレスから離職してしまうことが多いのでしょう。

一方で、勤続年数が1~2年未満では、賃金の条件が良くなかったことを理由に離職する人の割合が多くなります。人間関係には一定慣れ始めたものの、それ故に今度は賃金に対する不満が出始めた、という変化が生じてこのような結果をもたらすのかもしれません。

続く2~3年未満では、「賃金の条件が良くなかった」と「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」の割合がほとんど同じ数値となっています。入社2年目を迎えたタイミングで、将来のキャリアについて本格的に考え始める人は少なくありません。

結果として「今の会社で十分な給与を得られるのだろうか?」という不安が大きくなり、より待遇の良い企業を探し始めるのだと推察されます。

(参照:厚生労働省『令和5年若年者雇用実態調査の概況』)

離職率に関する最新データ

自社の離職率をできる限り下げるためには、世間一般の動向も確認しておく必要があります。そこで本項では、厚生労働省が公開している「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」を基に、新規学卒就職者の離職状況について解説します。

【令和4年3月卒業者の離職率に関する最新データ】
●新卒者の3年以内離職率
●業界別の3年以内離職率
●企業規模別の3年以内離職率

(参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)』)

新卒者の3年以内離職率

厚生労働省の同資料「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」の2025年10月時点のデータでは、令和4年(2022年)3月卒業の就職者の離職率は、高校卒業で37.9%、大学卒業で33.8%と示されています。この資料内の「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を見るとわかるとおり、この数値は例年通りの割合で大きな変動はありません。「新卒者の約3割が3年で離職する」という傾向が、現在も一定程度確かであるといえます。

自社の離職率が他社と比べて高いか・低いかを判断する際は、この割合を基準に考えることをお勧めします。新卒者の4割以上が3年以内に離職している場合には、平均よりも離職率が高いといえるので、速やかに対策を講じる必要があるでしょう。

(参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)別紙2』)

業界別の3年以内離職率

厚生労働省の同資料「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)別紙2」によると、業界によって3年以内の離職率には明確な差があることがわかります。離職率が高い業界・低い業界を振り分けた結果を以下にまとめました。

【離職率が高い業界・低い業界】

分類 業界 高校新卒者の離職率 大学新卒者の離職率
離職率が高い業界 宿泊業・飲食サービス業 64.7% 55.4%
生活関連サービス業・娯楽業 61.5% 54.7%
教育・学習支援業 53.6% 44.2%
医療・福祉 49.2% 40.8%
小売業 48.3% 40.4%
離職率が低い業界 電気・ガス・熱供給・水道業 14.7% 12.4%
鉱業・採石業・砂利採取業 22.9% 19.1%
製造業 28.6% 21.2%
金融業・保険業 29.7% 25.0%
複合サービス事業(郵便局や協同組合など) 27.3% 28.8%

(参照:厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)別紙2』)

離職率が最も高い業界は宿泊業・飲食サービス業で、高校新卒者で64.7%、大学新卒者で55.4%と、非常に高い数値となっています。ほか4業界の離職率も高く、その中では一番低い小売業でも高校新卒者で48.3%、大学新卒者で40.4%と、厳しい状況であることがうかがい知れます。これらのような対面でのサービス提供が必要な業界は、ほかの業界よりも手厚い対策を実施する必要があるといえるでしょう。

一方で、インフラ業や鉱業、製造業などは離職率が20%前後にとどまっており、上記の業界と比べるとその差が明白です。金融業・保険業や複合サービス事業なども離職率は3割を超えておらず、前項で示した水準よりも低いことがわかります。

企業規模別の3年以内離職率

同資料内(新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)別紙2)のデータによると、一般的には「会社の規模が小さくなるほど離職率が高くなる」という傾向があるとわかります。これも例年通りの結果であり、今後も一つの基準として有用に活用できるといって差し支えないでしょう。

具体的には、従業員数1,000人以上の企業での3年以内離職率は高校新卒者で26.3%、大学新卒者で27.0%と「新卒者の3年以内離職率」で示した水準を下回っています。対して、従業員数30人未満の企業では、高校新卒者・大学新卒者ともに離職率が5割を超える結果となっています。

離職率を下げる取り組みを行う際は、こうした規模による違い、そして前述した業界ごとの違いを踏まえた上で、効果の見込める施策を検討することを徹底しましょう。

世代間ギャップと離職の関係性

新卒者や若手のメンバーの離職が目立つ場合、企業の社風や既存の従業員との間で世代間ギャップが生じている可能性が高いと感じられます。その理由となる世代ごとの労働環境の主な変化を紹介します。

【世代間ギャップと離職の関係性】
●デジタルネイティブ世代における人間関係の変化
●キャリアに対する価値観の変化
●転職関連サービスの充実

デジタルネイティブ世代における人間関係の変化

現代の若手とされる年代は、生まれたときからインターネットが身近な環境にある「デジタルネイティブ」世代です。インターネットやSNSを通じた情報交換が手軽に行えるため、情報収集の効率は上の世代よりもはるかに高いといえるでしょう。

仕事についても、Webサイトや口コミなどから会社の評判や労働環境を簡単にリサーチでき、他社と労働環境を比較することも容易です。また、SNSを使えば直接的なつながりのないユーザー同士でも情報交換ができるため、あまり公にされていないような事実にアクセスできる場合もあります。

このように、さまざまなツールを用いて幅広く情報を集められるため、自社の評価についても、上の世代以上に客観的な視点を持っているという場合が少なくありません。業界水準と比べて待遇面などが劣っている会社は、若手から見れば評価が大きく下がってしまうでしょう。

キャリアに対する価値観の変化

社会情勢の移ろいにともない、労働に対する価値観も大幅に変化しました。特に、従来は当たり前とされてきた終身雇用や年功序列に対する考え方が、若手の世代にはほとんど通用しなくなっているといっても過言ではありません。

1つの企業に貢献し続けていても、安定した将来が約束されているという時代ではないため、若手のなかには初めから転職を前提にし、「自分のキャリアを自分でつくっていきたい」と考える人も多い傾向にあります。そのため、終身雇用を前提とした育成方針を取っている企業では、若手の価値観とぶつかり合ってしまうというケースも少なくありません。

また、共働き世帯が一般的になったことで、ワーク・ライフ・バランスに対する考え方も変化しています。残業や休日出勤をして企業に思い切り貢献するよりも、仕事とプライベートのバランスを保つことに重きを置く傾向が強くなっているのです。

そのため、ワーク・ライフ・バランスの要請に応えられない企業では、若手の人材を流出させてしまうリスクが高くなります。

転職関連サービスの充実

若手を中心としたキャリアに対する考え方の変化には、転職サービスの発展も大きく関係しています。転職サイトや人材紹介サービスが充実するようになり、スマートフォン1台で手軽に転職活動が行えるため、従来と比較してキャリアチェンジがしやすくなっているのです。

また、前述のように情報収集の効率も上がっているため、あまりなじみのない業界でのはたらき方も簡単に知れるようになっています。その結果、転職の選択肢がより現実的になっているといえるでしょう。

近年は、転職によって前向きなキャリアを形成していくケースも珍しくなく、転職に対する抵抗感はほとんどなくなっているといえます。

企業ができる離職防止の10の対策

ここからは、離職防止のために企業が実施できる10の対策を解説します。

【企業ができる離職防止の10の対策】
1.労働環境の見直し
2.福利厚生の充実
3.社内コミュニケーションの活性化
4.評価制度の見直し
5.定期的な面談の実施
6.メンター制度の導入
7.キャリア支援の充実
8.ハラスメント防止の徹底
9.上司へのマネジメント研修の実施
10.採用時のミスマッチの防止

1.労働環境の見直し

労働条件が離職の主な原因であるならば、ノー残業デーやリモートワーク、フレックスタイム制など、ワーク・ライフ・バランスを充実させられる制度を導入しましょう。それと並行して、人員体制と業務量の見直しも適宜行い、チーム内・社内で円滑に業務を回せるような体制を構築できるとより効果的です。これにより従業員一人ひとりにかかる業務負担を減らせれば、有給休暇制度を利用するハードルも下がり、従業員がさらにはたらきやすくなります。

また、こうした取り組みを行う前には、まず社内アンケートなどを通じて労働条件に対する従業員の満足度を把握する必要があります。その上で、従業員が不満に感じている部分を洗い出し改善していけば、労働条件が理由の離職は防止できるでしょう。

なお、労働環境を改善するためのアイデアは以下の記事でも紹介しているので、ぜひこちらもご覧ください。

(参考:『働き方改革の専門家が提言。採用・定着に悩む中小企業こそ労働環境改善で企業成長へ』、『長時間労働の目安は月平均80時間超の時間外労働。すぐ導入できる対策アイデア9選』)

2.福利厚生の充実

労働環境の改善を図るとともに、福利厚生の内容も充実させていきたいところです。住宅手当や家賃補助といった手当や、予防接種費用の補助などの健康・医療面でのサポートを充実させれば、従業員も自社で長くはたらき続けてくれるようになるでしょう。
福利厚生の内容としては、このほかにも以下のようなものが挙げられます。

【福利厚生の一例】
●出産祝い金制度
●育児・介護相談窓口
●カフェテリアプラン
●社員専用の食堂
●資格取得の費用補助・報奨金制度
●外部研修やセミナー参加費の補助制度

ただし、手当たり次第に複数の制度を実現したとしても、従業員にとって魅力があるものでなければ利用してもらえない可能性があります。従業員のライフステージや価値観を考慮した上で、真に求められている福利厚生を提供することが、離職率を下げるためのポイントです。

「福利厚生の選択肢や事例についてもっと知りたい」とお考えの方には、以下の記事をお勧めします。

(参考:『【3分で読める】福利厚生を選ぶならコレ!種類や導入方法など知っておきたい基本事項』、『福利厚生は従業員定着につながるのか?20代・30代が本当に求める制度を調査』)

3.社内コミュニケーションの活性化

社内コミュニケーションを活性化し従業員同士の関係が良好になれば、人間関係のトラブルによる離職を防げる可能性があります。具体的な取り組み例としては以下が挙げられます。

【社内コミュニケーションを活性化させる施策の一例】
●チームビルディング研修の実施
●社内部活の設立
●社内懇親会やランチ会の実施
●リモート飲み会などオンラインイベントの実施
●地域ボランティア活動への参加
●サンクスカードの実施

こうした取り組みを通じて、従業員が普段関わらないような相手ともコミュニケーションを取れるようにすることが、良好な人間関係を構築する上では欠かせません。部門や立場、役職にとらわれない交流が広まれば、ちょっとした悩みを相談できる相手も増えて、従業員がストレスを抱えて辞めてしまうという事態を防げるでしょう。

4.評価制度の見直し

評価制度の見直しを行い、従業員に適切な評価を下せるようにすることも、人材の流出を防ぐ上で有効な施策です。

従業員を適切に評価するための評価手法としては、以下の3つが挙げられます。

【適切な評価を行うための手法】

評価手法 概要
目標管理(MBO)

従業員一人ひとりに目標を設定してもらい、その達成度合いを評価する
コンピテンシー評価 社内ですでに成果を出している従業員の特性(コンピテンシー)を軸として評価基準を作成し、それを利用して評価を行う
360度評価 1人の従業員に対して複数人の評価者が就き、多面的な評価を行う

上記を用いた上で、設定した評価の基準や推奨される取り組みなどを、従業員に対して明示することも大切です。評価基準の透明性を高めて公平性を保つことによって、従業員に評価内容を納得してもらえる可能性が上がります。

なお、各評価手法については以下の記事にも詳細な説明がございます。新たに評価手法として取り入れるのであれば、こちらも併せてご覧ください。

(参考:『MBO(目標管理)とは?メリットや導入手順をシートを交えて解説』、『コンピテンシー評価とは?項目例と評価シートの書き方やメリット・デメリットを解説』、『360度評価とは?テンプレートで使える評価項目と設問例、例文を紹介』)

5.定期的な面談の実施

1on1などの面談で、部下の職場に対する不満、あるいは将来に対する展望などをその上司にしっかりとヒアリングしてもらうことも重要です。ヒアリングした内容を基に、部署を異動させたりチーム構成を変えたりすれば、部下が離職する可能性を減らせます。
また、部下の想いを聞いてもらうだけではなく、自社に在籍することで得られるメリットや実現できるキャリアなどを上司からも伝えてもらえるとなお理想的です。

ただし、成果の見込める面談を行うには、まず上司・部下間で本音を言い合える信頼関係が構築されていなくてはなりません。そのためにも「相手の気持ちを考えて傾聴の姿勢を持つ」という意識を管理職層に持ってもらい、メンバーが安心して発言できる環境を整備する必要があります。

(参考:『1on1ミーティングとは|目的や得られる効果と導入・実施方法を解説』)

6.メンター制度の導入

面談制度の整備と併せて行いたい取り組みが、メンター制度の導入です。

メンター制度とは、後輩従業員に先輩従業員(メンター)が就き、定期的に面談を行って不安や悩みをヒアリングする制度です。不安や悩みを気軽に相談できる環境を整備して、新人が不安感や問題を一人で抱え込まないようにすることを目的としています。入社したばかりの人材が早期離職してしまうケースが多いのであれば、メンター制度が最適な解決策となり得るでしょう。

なおメンターには、直属の上司や同じ部署の先輩ではなく、直接の関係はない部署の従業員を選ぶことが一般的です。業務上での関わりがないからこそ気兼ねなく相談できる上に、部署間のコミュニケーションも促進され組織の活性化もかないます。

(参考:『メンター制度とは?導入する目的やメリット・デメリットと流れを解説』)

7.キャリア支援の充実

若手のメンバーや活躍している人材の離職を防ぐためには、自社のキャリア支援制度を充実させることも大切です。従業員が必要なスキルと知識を学べるように研修制度の見直しを行い、組織として十分な時間と機会を用意する必要があります。

研修には自社の役員や上司が講師を務める「社内研修」と、外部の専門家に依頼する「社外研修」の2つがあります。前者はじっくりと企業理念や独自の技術を伝えられることがメリットであり、後者は専門的な知見や新しいスキルを身に付けられる点が特徴です。

それぞれの違いを踏まえながら、質の高い研修システムを構築していきましょう。また、自社ではたらきながら前向きなキャリア形成への道筋を描いてもらうために、キャリアアップ研修を実施したり、キャリア面談制度を整備したりすることも効果的です。

8.ハラスメント防止の徹底

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあるような職場では、従業員の離職を防止することは困難でしょう。従業員が安心してはたらける環境を整備するためにも、以下の施策を実施して、社内でのハラスメント防止を徹底しなくてはなりません。

【ハラスメント防止のための施策】
●「ハラスメントとは何か?」を具体的に周知する研修の実施
●ハラスメントに関する悩みやトラブルの相談窓口の設置
●社内でハラスメントが発生していないか調査するアンケートの実施

パワーハラスメントやセクシャルハラスメントへの対策は、法令でも義務化されているほど重要な取り組みです。ないがしろにすると行政機関から指導が行われる可能性がある上に、社会的な信頼が失墜する恐れもあるので、全社的な取り組みを徹底してください。

社内でのハラスメント対策をより効果的に行いたいのであれば、以下の記事も併せてご覧ください。ハラスメントとなり得る対応の具体例や、関連法案の詳細な説明などを記載しております。

(参考:『【弁護士監修】自分の“普通”は誰かの“不適切”?ハラスメント一覧とマネジメント層の心得』、『労働施策総合推進法の改正でパワハラ防止が義務化に。企業が取るべき4つの対応』)

9.上司へのマネジメント研修の実施

ここまでに紹介した施策を効果的に実施し、従業員が安心してはたらける環境を作るには、まずその上司が十分なマネジメントスキルを備えていなくてはなりません。従って、各従業員の上司に対するマネジメント研修を行うことも、非常に重要な取り組みとなります。

離職を防ぐ上で特に重要となる点が、モチベーションマネジメントやキャリアマネジメントです。部下の仕事に対するやる気を引き出しつつ、将来的なキャリアに対する具体的な道筋を示せば、人材の流出を効果的に防止できるでしょう。

「自分としては取り組んでいるつもりだった」と考えている上司でも、実際には取り組みが不十分だった、というケースは少なくありません。そのため、第三者がしっかりとレクチャーする必要があるのです。

人材を育成する際に必要となるマネジメントスキルについては、以下の記事でも詳細に解説しております。マネジメントが失敗する事例も紹介しているので、参考とすればマネジメント研修でレクチャーが必要な内容を洗い出せます。

(参考:『人材育成におけるマネジメントとは?上司に必要なスキルや育成のポイントを解説』、『「こんなマネジメントは失敗する」。反面教師に学ぶ、次世代マネジメント術4選』)

10.採用時のミスマッチの防止

離職率の低下を目指す上では、採用段階で自社と人材のミスマッチを防ぐことも大切な取り組みとなります。採用段階でミスマッチがある状態では、これまでに紹介した取り組みを入社後に実施しても、十分な成果は見込めないでしょう。

採用のミスマッチを防ぐには、まず自社の実情を人材に知ってもらう必要があります。企業理念や自社の風土といった情報のほか、現場での実際のはたらき方などを、可能な限り詳細に伝えることが大切です。またその際は、入社後にギャップが生じてしまわないように、自社のネガティブな情報も伝えましょう。
自社について包み隠さず伝えるという誠実な対応を心がけることが、採用のミスマッチ防止、さらには企業イメージの向上につながります。

採用のミスマッチを防止するにあたっては、以下の記事の内容も参考となるので、ぜひ併せてご覧ください。

(参考:『採用ミスマッチとは?原因と入社前後の具体的な対策方法を解説』、『「面接では良さそうに思えたのに…」採用ミスマッチを招く“3つの罠”と見極め術』)

離職により発生するリスク

「従業員が離職する」という事態を放置すると、以下に挙げるリスクが発生し、企業運営に大きな影響を与える可能性があります。それぞれの詳細は以下のとおりです。

【離職により発生するリスク】
●経験のある人材が流出する
●在籍している従業員の負担が増える
●企業イメージが低下する可能性がある

経験のある人材が流出する

自社に存在する課題を放置していれば、経験豊富で成果も出している従業員もそのうちに離れていってしまうでしょう。そうなれば、業務の生産性低下、さらには事業活動の停滞や成長の鈍化といった事態を招きかねません。加えて、転職先が競合他社だった場合には、市場での競争力にも大きな影響が出ると考えられます。

また、その従業員の後任を配置するにあたっては、新しく人材を教育し直さなくてはなりません。教育が完了するまでは業務が滞る上に、教育に要する追加の費用や工数が、ほかの従業員ないしは企業全体に大きな負担をかけてしまう可能性もあります。

在籍している従業員の負担が増える

離職した従業員が担当していた業務は、必然的に残ったほかの従業員がカバーしなくてはならず、1人当たりの業務量は増えます。その結果、生産性やサービスの質が低下する恐れがあり、さらには負担が増えることに不満を感じた従業員が離職してしまうかもしれません。こうした離職の連鎖を防ぐためにも、離職者が出た際には残された従業員へのフォローを早めに行うことを徹底しましょう。

企業イメージが低下する可能性がある

離職率が高い企業に対して、世間は良いイメージを抱きません。この状態が長く続くと、人材からの応募が減少するだけではなく、選考に通過した人材が入社前に辞退するケースも増えてしまいます。

また場合によっては、取引先からの信頼も失われてしまい、事業の継続に大きな打撃を与えてしまう可能性もあります。このような事態を回避するためにも、自社の離職率が高まっている場合には、早急の対応が必要となるのです。

まとめ

新卒者の3年以内離職率は、毎年おおむね3割程度とされているものの、実際には企業の規模や業種によって大きな違いがあります。企業の取り組み次第で、離職率には違いが生まれるため、まずは離職原因になり得る項目を把握しておくことが大切です。

離職の主な原因には労働条件や人間関係に対する不満、キャリア形成に関するものなど、さまざまなものがあります。制度を整えることで問題が解消される可能性もあるため、自社に合った無理のない取り組みを検討すると良いでしょう。

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

若手社員受け入れ時に知っておくべき!若手の早期離職防止策

資料をダウンロード